ハリウッドとは、弁護士、公認会計士、ビジネス・スクール出身のビジネスマンらが損益計算書を分析しながら、どうやって映画で儲けるかを計算する冷厳なビジネスの世界だ。それを示す題材として、スタジオには4つの帳簿があると言われている。株主用、投資家用、税務署用、そして内部用の四つ。なぜ、このように何種類もの帳簿が必要になるのだろうか。あるピュリツァー賞受賞作家がスタジオを訴えた事件で、帳簿のからくりの全貌が明らかになってくる。

 88年、コラムニストであるアート・バックワルドは「自分のアイデアが流用された」として、パラマウントを相手に、契約違反に基づく損害賠償請求の訴訟を起こした。流用されたアイデアに対するロイヤルティ(使用料)を支払え、と言うのだが、こうした裁判は前例のない闘いといえる。なぜかというと、今まで、誰も、スタジオと争ったりはしなかった。大勢の弁護士を社内に抱え、資金豊かな大企業であるスタジオを相手に戦うということは、映業界で生きている人にとっては、死刑宣告に等しい。しかし、ジャーナリズムで生きるバックウッドにとって、映画界は脅威ではなかった。

 ことの発端は、82年。バックワルドと友人のプロデューサーが、コメディ映画用のあらすじを作ったことに始まる。そのあらすじをパラマウントの幹部に提供した。よくある話だ。そのあらすじとは、アフリカのある国の王子が米国の首都ワシントンを訪問中に、自国でクーデターが起こり、戻れなくなってしまう。そうこうしているうちに、好きな女性ができ、その女性を連れて帰国し、王位を取り戻すというロマンチック・コメディだ。

 パラマウントは、ドル箱スターだったエディ・マーフィー主演で映画化を企画。バックワルドらと契約を結んだ。パラマウントがこのストーリーを映画化した場合には、バックワルドらに対して、26万5,000ドルの契約金と「ネット収益」の19%を支払うことを約束した。つまり、パックウッドらにとってはこの「ネット収益」なるものが大きければ大きいほど儲けも大きいといえる。ところが裁判の過程で、これが実は曲者であることが明らかになっていく。

 パラマウントは『King For A Day』というタイトルで脚本まで完成させたが、なぜか途中で断念した。これもよくある話。ハリウッドでは途中で頓挫して、棚上げされた脚本がたくさんある。バックワルドらはパラマウントをあきらめ、次にワーナーブラザースにこのプロジェクトを持ち込んだ。ところが、驚くべきことが起こるのであった。

<<戻る


東宝東和株式会社