今、ハリウッドで注目される「体制内インディ」制作会社の一つが、スパイグラス。98年夏、ディズニーのスタジオ内に生まれた。

 その中核は、制作会社モーガンクリークにいたギャリー・バーバーとディズニー系制作会社のキャラバン・ピクチャーズにいたロジャー・バーンバウンの二人。ディズニーのほか、日本を含む海外のパートナー数社が出資している。

 映画の制作費のほとんどは、これら出資会社に、それぞれの地域の配給権を前売り(プリセール)し、その契約を担保に銀行から資金を調達している。スパイグラスの最大のスポンサーは、ディズニー。ディズニーは、スパイグラス制作の映画を、5年間で15本、南北米大陸とその他の英語圏で配給する。


 スパイグラスが資金調達し、映画を制作するので、ディズニーのリスクは自前で制作するよりずっと低い。ヒットすれば、他の出資会社も儲かるという仕組みだ。

 もう一方の雄、ビレッジロードショーは、ワーナーブラザースから50%の出資を受け、ワーナーのスタジオ敷地内にオフィスをもつ。ワーナーとの間にはネガティブ・ピックアップ契約(映画が完成した場合には、配給権を買い上げる契約)があり、この契約を担保に銀行から借入して映画を制作する。こちらの場合は、スパイグラスとは違い、ワーナーが大部分の海外の配給権をもっているので、プリセールはしない。

 98年夏、元ワーナー制作部門社長のブルース・バーマンを迎えてからは、『アナライズ・ミー』('99)『マトリックス』('99)『スリー・キングス』('99)などヒット作を連発。1年間に10億ドル以上の世界興行収入をワーナーにもたらした。

 バーマン氏は言う。「ワーナーとの契約があるおかげで、制作資金調達も困らないし、海外配給権の販売をしなくても良い。今の関係でハッピーだ」。組織としては小さいにもかかわらず、メジャー・スタジオと引けを取らない収益を上げている自信が表情に溢れている。

 映画はあくまで水もの。「体制内インディ」の成功がこのまま続くかどうかは分からない。しかし、メジャー・スタジオは年々、制作リスクは他にまかせ、配給に特化する動きを強めている。そんなトレンドを考えると、「体制内インディ」は、これからもハリウッド映画制作の中核になるのではないだろうか。



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