ドイツ・マネーがハリウッド映画の資金源として利用されるようになったのは1990年代になってから。戦後急成長し、経済復興を果たしたドイツ。勤勉で貯蓄好きなドイツ人たちが、好景気とタックス・シェルター(優遇税制措置)を追い風に、ハリウッド映画に投資し始めた。タックス・シェルターのあるドイツでは、映画に投資した額を全額経費として収入から控除することができ、節税になる。映画がヒットすれば良い投資にもなる。1997年の税法改正で、映画以外の産業への投資に対するタックス・シェルターが撤廃されたおかげで、裕福なドイツ人たちの映画投資熱が加速化していった。もともとは自国の映画産業を活性化するために考案されたタックス・シェルター。皮肉なことに、ドイツ・マネーはそのままアメリカに流れ、ハリウッド映画がこの恩恵を蒙るのだった。

 好況なドイツでは、ハリウッド映画は節税対策であると同時に、投資物件でもある。ベルテルスマン、コンスタンチン、ヘルコン、キノウエルト、キルヒ、インターテインメントといった大手メディア企業は、株式公開で潤沢な資金を手にし、ハリウッド映画への投資は過熱化する一方だった。投資の仕方は、映画の買い付けから、共同製作、映画製作会社への直接投資までさまざま。1999年にドイツからハリウッドへ流れた金は映画の買い付けだけで13億ドルといわれる。ドイツの配給権の値段は、映画製作予算の20%から25%といわれ、日本の配給会社が負担する12%と比べてもかなりバブリーな価格設定になっている。ドイツの配給会社が北米を除いた全世界の配給権を買う場合の値段は、なんと製作予算の75%にまで高騰している。

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