TEXT BY ミドリ・モール(弁護士・ライター)

 レボルーション・スタジオ

 独立系制作会社レボルーション・スタジオを立ち上げたのは、ジョー・ロス(53才)。浮き沈みの激しいハリウッドで、20世紀フォックスとウォルト・ディズニーのスタジオで、トップ幹部として長期政権を維持してきた。25年にわたる映画歴をもつ。

 ロスは、スタジオの幹部として有名だが、映画監督でもある。プロデューサー業に専念する前は、3本映画を監督した。その後、自動車のディーラーで資産家となったジェームス・ロビンソンとともにモーガン・クリークという独立系制作会社を作り、『ヤングガン』('88)、日本人俳優が出演して話題になった『メジャーリーグ』('89)といった低予算の映画を作り、ヒットさせるのがうまい腕利きプロデューサーであった。ちょうど予算とリスクに敏感になってきた映画スタジオにとって、制作部門をまかせるのに最適な人材であった。
 ロスの才能に目をつけたマードックは、早速ロスを20世紀フォックスに引き抜いた。20世紀フォックスでは、『ダイハード2』('90)、『ホーム・アローン』('90)とその続編『ホーム・アローン2』('92)、ジュリア・ロバーツ主演の『愛がこわれるとき』('92)、『ミセス・ダウト』('93)などのヒット作を生み出した。

 1992年には20世紀フォックスを辞め、キャラバン・ピクチャーズという独立系制作会社を起こすが、2年後には、再びスタジオの幹部になる。今度はディズニーだった。ディズニーでは、アイズナー会長の後継者有力候補と目されていたにも拘わらず、2000年1月にディズニーを退社。と同時に、独立系制作会社レボルーションを設立した。現在社員数25人。元ジュリア・ロバーツのエージェント、ディズニーや20世紀フォックス時代の元同僚たちがレボルーションに加わった。
 レボルーションは、独自に制作資金を調達し、スタジオからのコントロールを受けることなく、映画を企画・制作し、スタジオに供給する。出来上がった映画の権利はレボルーションのものとなる。少数精鋭、迅速な決定、独自の企画という点では、他の“体制内独立系制作会社”と変わらない。
 レボルーションが際立つ点は、優れた資金調達力にある。レボルーションには、投資パートナーが数社あり、すでに30億ドル相当の資金が準備されていると言われる。投資パートナーたちは、レボルーションが制作予定の映画36本を6年間(一年6本の予定)にわたり、それぞれの地域とメディアで配給する。その詳細な内訳は左記のようになる。

 ソニー・ピクチャーズ(ソニー)は、北米と海外(日本とドイツを除く)の劇場とホームビデオの配給権を取得。二〇世紀フォックス(フォックス)は、北米でのテレビ放映権(ペイ・テレビを除く)を取得。スター・アンコールはペイ・テレビの放映権を取得。
パートナーと投資割合
 レボルーションの資金力を支えるのは、ドル箱スターたちとの強い結びつきだ。有名スターが出演すれば映画は売りやすい。アカデミー賞受賞女優のジュリア・ロバーツはレボルーションの制作パートナーのひとり。ハリウッドで最も稼ぐ女優ロバーツは、レボルーションのために5年間に3本の映画に出演し、これを制作する約束をした。彼女は通常のギャラを大幅にカットしたと言われる。それもそのはず。一本の出演料で2,000万ドル請求していたら制作費予算は一人分のギャラでとんでしまうというもの。
 ロスとロバーツの繋がりは、『愛がこわれるとき』以来。その信頼関係は強い。ロバーツは、ロス自らメガホンをとる『アメリカン・スウィートハート』('01)にも出演。「ロスは映画作りを愛する人。彼が作る映画だったら、私はできるだけのことをするわ」と、ロスを応援する。『アメリカン・スウィートハート』はロマンティックなラブ・ストーリー。アメリカでは7月14日に劇場公開され、快調なスタートを切った。日本では来春封切られる。
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