TEXT BY ミドリ・モール(弁護士・ライター)

 『スパイダーマン』訴訟(後編)

 先頃公開されたと同時に、記録を塗り替える大ヒットとなった『スパイダーマン』。大人気コミックを映画化するにあたり発生した権利を巡る訴訟とは?前回に引き続き『スパイダーマン』訴訟についてです。
 人気タイトルの映画化を画策する製作会社は他にもあった。21世紀フィルムやカロルコの他にも「スパイダーマン」に関する権利を買ったという人が出てきた。

 21世紀フィルムは、カロルコに実写化権を売る一年前、「スパイダーマン」のビデオ化権をRCA/コロンビア(のちにソニー・ピクチャーズに吸収される)、テレビ化権をバイアコムにも売っていた。
 もっと複雑なことに、カロルコ、21世紀フィルムそしてマーベルはそれぞれ1995年に破産を申請した。破産すると会社の財産は破産裁判所の管理下に置かれ、処分されることになる。破産裁判所は、21世紀フィルムの財産をMGMの子会社に売ってしまった。そのなかには「スパイダーマン」の実写化権が含まれていた、というのがMGMの主張だった。

 二重譲渡と破産が事態をさらに悪化させ、泥沼状態となった。困ったことに、ここで登場する会社は揃って「スパイダーマン」の権利を主張し、何らかの契約書をもっているのだが、どの契約書も不完全で不備なものだったと言われる。
 結局、「スパイダーマン」の実写化をめぐって、21世紀フィルム、カロルコ、マーベルそして、ソニー・ピクチャーズ、MGM、バイアコムというメジャー・スタジオが裁判で争うことになった。

 1999年2月、ロサンゼルス上級裁判所は8年にわたって争われた権利問題に決着をつけた。事実審が始まる前に、ソニー・ピクチャーズはマーベルと和解し、ソニー・ピクチャーズがマーベルに1,000万ドルから1,500万ドルといわれる契約金を支払い、共同で「スパイダーマン」を映画化することになった。
 負けが明らかになったMGMはすぐにソニー・ピクチャーズと和解し、キャメロンが書いたあらすじをソニー・ピクチャーズに引き渡すことになった。最後まで和解に応じなかったバイアコムは、判決で敗訴した。これで、コミック「スパイダーマン」の映画化をめぐる訴訟は一件落着をみたにもかかわらず、キャメロンは製作に興味を失ってしまったのか、ソニー・ピクチャーズが製作する映画『スパイダーマン』には参加していない。

 映画化権を取得したソニー・ピクチャーズは、傘下のコロンビア・ピクチャーズ製作の『サイダー・ハウス・ルール』('99)で一躍有名になったトビー・マグワイアを主演に起用し、『スパイダーマン』を製作した。最先端テクノロジーを駆使し、製作費1億3,900万ドル(166億円)といわれる超大作『スパイダーマン』は、2002年5月に日米同時公開、過去の動員記録を塗り変えている。
 『スパイダーマン』を皮切りに、アメリカのコミック・ヒーローの映画化が今後たくさん増えそうだ。今年から来年にかけて、『メン・イン・ブラック2』 『X-メン2』 『超人ハルク』などのコミック・ヒーローものが実写映画化され、劇場公開される予定だ。
<<戻る


東宝東和株式会社