TEXT BY ミドリ・モール(弁護士・ライター)

 『スター・ウォーズ』とキャラクター・ビジネス(1)

 ジョージ・ルーカス監督最新作『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』の北米での興行収入が2億5千ドルを突破した。5月16日に公開され、初日の興行収入は約3,010万ドルで金曜日を除く平日公開作品としては過去最高だった。99年公開のシリーズ前作を上回る出足となっている。
 映画がヒットすると、そのキャラクターの知名度にあやかる二次マーケットが生まれる。映画の続編がヒットすれば、さらにキャラクターの寿命が伸びるという期待も大きい。その期待通りシリーズ・ヒットを生み出した映画群では『バットマン』、『スター・ウォーズ』、『スター・トレック』、『エイリアン』、『007』、『ジュラシック・パーク』、『メン・イン・ブラック』などがある。日本生まれの『ゴジラ』、『ポケモン』といったキャラクターたちも、アメリカのキャラクター・グッズ・ビジネスの主人公として活躍している。
 ビデオ・ゲームの主人公を実写映画化して、ヒットさせた『モータル・コンバット』('95)のプロデューサー、ローレンス・カザノフによれば、キャラクター・グッズからの収益は、興行収入の3倍以上にものぼるという。キャラクターたちは、ビデオ・ゲーム、コミック雑誌、CD-ROM、アクション人形と、多岐にわたり商品化され、大きな収益源となっていく。

 その反面、キャラクター・ビジネスはへたをすると、在庫と返品の山となりかねない、リスクの高いビジネスであることも忘れてはならない。気まぐれな消費者たちに飽きられたキャラクターたちは、売れ残り倉庫の中で廃棄処分を待つことになる。
 映画のヒットがキャラクター・ビジネスと直結したのは、『スター・ウォーズ』がはじめてと言われる。『スター・ウォーズ』はもちろん、ジョージ・ルーカスが脚本・監督をかねたSF映画で、1977年に初めてアメリカで劇場公開された。SF映画は当たらないという当時のジンクスを破って、アメリカだけで当初、3億2,274万ドルの興行収入を記録する大ヒットとなった。

 続編である『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』('80)、そして完結編である『スター・ウォーズ/ジェダイの復讐』('83)と立て続けに大ヒットとなり、映画会社を驚かせたものだった。この三部作は、97年にデジタル技術を使って再編集され、再び大スクリーンに戻ってきた。アメリカでの再上映の興行収入を合わせると、77年初公開以来、世界中で19億ドルの興行収入をあげるに至った。
 生みの親であるルーカスは、『スター・ウォーズ』シリーズの配給収入から40%の収益配分を得ている。その金額も大したものなのだが、それ以上にルーカスをリッチにしているのは、『スター・ウォーズ』のマーチャンダイジングの権利だ。『スター・ウォーズ』三部作のキャラクター・ビジネスからの収益は、40億ドルと報告されている。
 ルーカスは、北カリフォルニア州サンフランシスコの近郊で生まれ育った。高校在学中から、スピード狂だった彼はプロのレーサーになることを夢見ていたが、交通事故をきっかけにこの夢を断念。その後、映画を作るため南カリフォルニア大学(USC)の映画学科に入学した。『アメリカン・グラフィティ』('73)を制作し、この映画のヒットで一躍有名になったルーカスが、ずっと構想を暖めていたのが、SF映画『スター・ウォーズ』だった。

 その制作予算は1,000万ドルで、1975年当時の制作費としてはかなり高額だった。『アメリカン・グラフィティ』のヒットで気をよくしたユニバーサルでさえ、簡単には首をたてには振らなかった。理由は簡単、「SF映画はヒットしない」と信じられていたからだ。しかし、当時の20世紀フォックスの社長アラン・ラッド・ジュニアはルーカスの才能に惚れ込んでいた。そして、周りを説得してルーカスの『スター・ウォーズ』にゴーサインを出したのだった。(続く)
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