TEXT BY ミドリ・モール(弁護士・ライター)

 株主代表訴訟―AOLタイムワーナーの場合

 株式会社は株主の出資によって成り立っている。会社は株主の利益のために経営されなければならないはずである。ここらへんは日本もアメリカも同じであろう。株主は会社の経営を第三者に委託して、会社の生み出した利益からリターンを得る。そのリターンとは、配当であったり、株価の上昇であったりする。
 もし、会社の経営を委託されている幹部らが、うその営業利益を報告したり、株価を操作したりしていたらどうなるであろう?本当は赤字だらけなのにもかかわらず、まるで会社の経営がうまくいっているような会計をだしていたら、株主はだまされてしまう。内部の情報を得ることができない一般投資家は何を信用してよいのかわからなくなってしまう。

 アメリカではドット・コムのバブルが崩壊してから、そこらじゅうで株主代表訴訟が起こっている。ドット・コムのお得意さんがいなくなったアメリカでは、今度は株主代表訴訟とクラスアクション(集団訴訟)が弁護士らのかっこうのターゲットとなっている。以下は過去10年にわたって提起された連邦証券法詐欺を理由とした訴訟件数だ。ちょうどバブルが消えさった2001年には、488件もの訴訟が起こされている。
アメリカ連邦証券法詐欺を理由として提起されたクラスアクション
Stanford Law School Securities Class Action Clearinghouseから
 メディア業界では、AOLタイムワーナー、ウォルト・ディズニー、そしてユニバーサル・ビベンディの株価暴落が続く。もし、会社の幹部らが、会社の業績が悪いにもかかわらず、その事実をひた隠し、まるで利益があるかのような会計報告していながら、株価が下がる前に、その持ち株を処分していたとしたらどうであろう?会社の内部事情を知らされていない株主にとっては、売るに売れない。これって、フェアでない。会社の幹部だけ株価が下がる前に売り逃げしてしまうなんて許される?蚊帳の外に置かれてしまった一般投資家は株主代表訴訟という手段で、会社と経営者の責任を追及することになるのである。

 AOLタイムワーナーの合併が公式発表されたのは、2000年1月19日。当時はコンテンツという資産をもったタイムワーナーが、新興メディアであるインターネットのプロバイダー大手AOLと融合することにより、シナジーが生まれると喝采されたものであった。当時のAOLタイムワーナーの株価は一株60ドルであった。ちなみに現在の株価は一株13ドルあたりである。たった2年で、株価が60ドルから13ドルへの急落下。なぜか、会社の数人の幹部たちは急落下前に株を処分している。
 ひとつの訴訟を紹介しよう。今年7月19日、ニューヨーク州の南地区の連邦地方裁判所に提起されているこの訴訟では、2000年10月19日から2002年7月17日の間、AOLもしくは合併後のAOLタイムワーナーの株式を購入、もしくは保有していた株主が原告となれる。訴状では、AOLタイムワーナーがオンライン広告からの収入を架空に報告し、虚偽の決算報告を作っていたという疑いがもたれている。会社といっしょにAOLタイムワーナーの有名幹部らががん首揃えて訴えられた。
■こちらで訴状が読める。> http://www.wolfpopper.com/publications/caseUser2.cfm?pubid=685
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