TEXT BY ミドリ・モール(弁護士・ライター)

 ピーターパンは誰のもの?(1)

 永遠の少年ピーターパン。おとぎの国ネバーランドに住むピーターパンが裁判に巻き込まれている。ピーターパンの著作権がアメリカで消滅していることを確定させるための訴訟だ。
 ピーターパンを巡って訴訟を提起しているのは、カナダ人作家のエミリー・ソマさん。訴えられているのは、ロンドンにあるグレート・オーマンド・ストリート・ホスピタルという病院。アメリカでのピーターパンの著作権が、すでに消滅していることを確定させるための訴訟だ。

 ピーターパンの訴訟といっても、ディズニーのアニメとは無関係。ここで争われているのは、その元になっているオリジナル作品だ。ピーターパンはいまから100年近く前にジェームス・バリーというスコットランド人によって生み出されたという。バリーさんがピーターパンの生みの親であり、著作権をもっていた。
 訴訟の舞台となっているのは、サンフランシスコにある連邦地方裁判所。原告となるソマさんを代理するのは、スタンフォード大学ロースクールで教鞭をとる教授と強力な弁護士団。9月号のeigafan.comでもご紹介した、インターネットと著作権を専門とするローレンス・レシッグ氏らがプロボノ(無料)で原告を代理している。レシッグ氏とは、著作権の保護期間が20年延長されたことに異議を申し立て、現在最高裁判所で争っているツワモノだ。

 ことのおこりは、ソマさんがピーターパンを題材に本を出版してことにある。「After the Rain」というタイトルでカナダで出版された。カナダでは、ピーターパンのオリジナルに関する著作権は消滅している(訴状から)。したがって、ソマさんは誰からも許諾を得る必要はないと考えた。ソマさん自身、ピーターパンのオリジナルに触発されてこの本を書いたので、登場人物の設定はオリジナルと似ているのは自然の流れ。
 そのお話とは、クリスタル・マクファーランドという女の子が、21世紀を舞台にして、ネバーランドに住むピーターパンを救出するというお話だ。主人公はソマさんが作り上げた架空の女の子であり、助っ人としてバディーとかショーンとかが登場する。新しい悪役キャラも登場するそうだ。おなじみのピーターパン、ティンカーベルといったキャラクターとネバーランド以外は、ソマさんのオリジナルで、いままでの子供相手であったストーリーよりは、もっと高い年齢層を対象にした本だそうだ。

カナダでは、2002年8月に出版された。出版社はディジー・ブックス。初版で1,000部売れた。出版社は1万部の増刷を計画しているそうだ。ソマさんは、イギリスでも出版しようと考えて、出版社をあたったところ、イギリスの出版社から、ピーターパンのオリジナルには著作権があって、グレート・オーマンド・ストリート・ホスピタルという病院が権利をもっていると知らされた。
 ソマさんは早速権利者だという病院にコンタクトをとったところ、どうやらイギリスでは、この病院がピーターパンの生みの親であるバリーさんから1929年に権利を譲り受けたらしい。イギリスでは、この病院がピーターパンの権利を利用して、永遠にロイヤルティ(使用料)を稼ぐことができるということだ。ソマさんの本は、ピーターパンの二次的著作物を作成する場合に当たるので、イギリスで出版するためには、病院からの許諾が必要だ。病院側は、ソマさんへの出版許諾を断った。そしてこの訴訟は始まった。
■訴訟に関する詳細はこちら> http://cyberlaw.stanford.edu/archives/2002-12.shtml
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