TEXT BY ミドリ・モール(弁護士・ライター)

 『キャプテン・アメリカ』の生みの親と著作権問題(1)

 ハリウッドでは、アメコミのスーパーヒーローものが実写映画化されてヒットしている。古くは「バットマン」「スーパーマン」から、最近では「スパイダーマン」「デアデビル」「X-MEN」そして「ハルク」が有名だ。実写化こそされていないが、”キャプテン・アメリカ”もアメコミ出身のスーパーヒーローの一人だ。

 キャプテン・アメリカと呼ばれる男は、第二次世界大戦時、ナチへの怒りに燃えるスティーブ・ロジャース。彼は、虚弱体質のために徴兵検査に合格しなかった。しかし愛国心が非常に強く、何とか母国の役に立ちたいとスーパーソルジャー開発計画の実験に志願。特殊な血清を飲むことで、超人的な体力を持つ男に生まれ変わった。実験は成功し、スーパーソルジャーになったが、直後に研究所が敵に襲われ、血清を開発した博士は殺されてしまう。

 アメリカを象徴するコスチュームとシールドを得て、自由の番人”キャプテン・アメリカ”がここに誕生し、ナチと戦い、アメリカの勝利に大きく貢献したという筋書きだ。日本では超有名人ではないものの、アメリカのアメコミファンには強い支持を受けている。
 「キャプテン・アメリカ」はご存知マーベルに所属するが、生みの親は別にいる。今から60年以上も前、ジョー・サイモン(Joe Simon)というアメリカ人が「キャプテン・アメリカ」を作り出した。1940年に、彼が「キャプテン・アメリカ」というキャラクターとストーリーを作り、当時「タイムリー・コミックス」というアメコミ雑誌に掲載された。「キャプテン・アメリカ」はアメリカで大ヒットとなって注目を集めた。

 アメリカでの著作権の命は長い。20年の期間延長が立法化されてから、95年間保護されることになった。「キャプテン・アメリカ」の著作権は、2035年まで存続することになる。つまり、「キャプテン・アメリカ」が生み出す利益は長い。誰が著作権をもっているのかは重大なことだ。

 なんだ。ジョー・サイモンが作り出したキャラクターとストーリーなのだから、彼が著作権者じゃないの? ここはアメリカ、そんなに簡単ではなかった。彼は、「タイムリー・コミックス」を買収したマーベルとの間で、「キャプテン・アメリカ」の著作権を巡って訴訟の真っ只中にある。
 アメリカでは著作権は、表現が有形的な媒体に固定されたときに発生する。創作行為をした人が創作者であり、通常著作権を持つことになる。しかし例外があって、誰かに雇われて、雇用期間中に創作した場合、創作者でなく雇用者が著作権を持つことになる。「職務著作」と呼ばれている。雇用者がお金を払って、そのリスクで創作活動をさせているのだから、そこから生まれた創作物の権利は雇用者のものとなる、という考え方だ。

 サイモンはフリーランスのアーチストで、誰からも雇われることなく、誰からの注文でもなく「キャプテン・アメリカ」を作り出した。そして、そのストーリーを「タイムリー・コミックス」に掲載し、のちにその著作権を「タイムリー」に売った。したがってサイモンが著作権者のはずだ……。なのに、なぜ著作権を巡って訴訟になったのであろうか。
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