TEXT BY ミドリ・モール(弁護士・ライター)

 揺れるディズニー帝国 2


 20年近く長期政権を死守してきたマイケル・アイズナーの退陣問題で揺れるディズニー。今回はもう一つのディズニーの頭痛の種である前社長のマイケル・オービッツ問題について迫る。
 14ヶ月という短い在籍で、何らの貢献もせず、1億4,000万ドル相当の退職金をゲットしたマイケル・オービッツに納得いかない株主たちは、オービッツ、アイズナーそして取締役会幹部らを相手に株主代表訴訟の真っ只中にある(詳しくは第77、78回参照)。現在、デラウエア州の裁判所で審理中だ(事件番号15452)。

 業界誌であるバラエティによると、裁判所はアイズナーがオービッツの経営手腕に疑いをもち、ディズニーを辞めるよう懸命に薦めた手紙を公開した。アイズナーにとってはかなり不利な成り行きになってきた。それもそのはず。アイズナーは裁判所に保存されているその手紙を3月3日の株主総会が無事終了するまで封印するよう求めていたという。裁判所はその要求を却下した。したがって、誰でもその裁判書類を閲覧することができる。
 バラエティ誌が公開したアイズナーからオービッツに宛てた1996年11月付けの手紙では、起業家で自分勝手に自社経営してきたオービッツには、ディズニーのような上場大企業を経営していく手腕がないことに気づき、社長職を辞任するよう必死に説得しているようすが窺える。経営能力だけでなく、ディズニーの幹部たちとも衝突しており、目立ちがり屋オービッツの一人立ち振る舞いに困惑するアイズナーが読み取れる。

 オービッツ宛の手紙には、明白に「オービッツはナンバー2では満足がいかない。上場企業をディズニー流に経営していく気もなく、その能力があるとは思えない」と。更に、「オービッツ就任当初からお互いに意見の相違があった。(アイズナーは)オービッツに対して勘違いの過大な期待をかけていた」ことを認めている。「オービッツは、すべての会社の会議に遅刻してきた。そして人々に対して癇癪ばかり起こしている」など、ディズニーの幹部たちとの折り合いも悪かったそうだ。
 アイズナーは、オービッツに対してディズニーのコア・ビジネスを任せていたが、インターアクティブ・メディアのビジネスでは1億ドルの損失を出した上、出版、コンスーマープロダクト、ESPN、ラジオそしてテーマパークのビジネスにはやる気なし……。また、アイズナーはこうも書いている。「オービッツのやる気なしに完璧にあきれている。オービッツがやったことについては、その判断を疑う」。原文では、“I was totally frustrated with your lack of attention to this business. And when you did something, I really questioned your judgment.”とまで書いている。25年来の旧友といえども、会社経営責任能力なし、やる気なし、となるとフォローしようがないといったところか。
 裁判所が公開した書類によると、オービッツはディズニー在職中しっかり経費だけは使っている。その内訳は、100万ドル分相当を食費、プレゼント、旅行に使い、自分のオフィスのリニューアルに400万ドル使っているそうだ。10万ドルかけてパーティを開き、その他こまごまディナー、プレゼントなどの費用をディズニーからゲットしている。不思議な点は、ディズニーではどの部署のだれが、オービッツの経費請求を承認したのか確認できないそうだ。上場企業なのにかなりずさんな経理管理のよう。オービッツは高額な退職金を手にディズニーを去ったが、後には株主たちによる代表訴訟が残された。7年前の出来事。裁判は続く。

 会社の内紛、営業利益の悪化、株価の下落などゴタゴタが目につくディズニー帝国。とりあえず退陣を免れたアイズナー。買収をかけようと狙っているコムキャスト。揺れるディズニー帝国どうなるの?
マイケル・アイズナーからマイケル・オービッツへの手紙の原文を読みたい方は、こちらまで>> MahlEsq@aol.com
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