TEXT BY ミドリ・モール(弁護士・ライター)

 アメリカン・フィルム・マーケット(AFM)

 AFMとは、アメリカで開催される世界最大のフィルム・マーケット。マーケットとは映画の配給権を売り買いする商談の場だ。世界各国から売り手と買い手が集まる。映画産業の中心地ロサンゼルス、サンタモニカ市で開催される。映画祭と異なり、レッドカーペットはない。セレブが衣装を競う場もない。コンペもない。映画商売に徹する。第25回を迎えるAFMは、11月3日から10日までの間、映画の試写会、映画ビジネスに関するセミナー、制作・配給会社の出品などを中心に行われる。
 アメリカではドットコム・バブルの崩壊、海外市場、特に、長年のお得意様であったアジア市場の弱体化、ホームビデオ市場の飽和状態などで、海外からのAFM参加者が減った時期があった。今年のAFMは世界経済の盛り返しのおかげで、海外からの参加者は70カ国以上に及び、356企業が出品、スポンサーもしくは何らかの形で参加している。
サンタモニカは11月でも日中は夏のお天気。
 参加者数は7,000人を記録し、出品される映画の数は459本だそうだ。海外からの参加者が増えたのは、ブラジル、トルコ、日本そしてインドなどだ。今年のAFMの見所は、インディ系映画を支援するAFIとAFIを公式スポンサーするドイツの車メーカー、アウディとの提携だ。
サンタモニカのローズホテル。
ここで映画の配給権の商談が行われる。
 AFMでは、AFIで選ばれた39作品の試写会を提供している。共同試写される作品の中には、ケン・ローチ監督の「AE Fond Kiss」、ショーン・ペンとスカーレット・ヨハンソン主演の「The Assassination of Richard Nixon」、ケビン・スペイシー主演・監督・制作の「Beyond the Sea」、チャン・イーモウ監督の「Lovers」などがある。

 

ローズホテルのロビー。
AFMに参加する業界人で賑わっている。
 AFM開催中、映画制作に関するセミナーがいくつか提供される。インディ系映画制作者が一番興味をもつのは「資金調達方法」だ。アイデアとパッションはあるが、資金調達はどうしたらよいか? 資金調達の将来についてのセミナーが活況だ。AFMが始まった当初は80年代後半。ちょうどホームビデオの市場が伸びていった頃。インディ系映画制作者たちは、ホームビデオの権利を海外にプリセールして、映画制作資金にあてることができた。制作費を低く押さえ、特定の観客層をターゲットにしたジャンル映画を作ることができる環境があった。
AFMの代表者たちの記者会見。今年記録的な出品、  参加者数、試写会作品数を発表した。

 90年代後半になると、海外のロケ地からの補助金、ドイツのタックスシェルターや英国のリースバックといった税金面での優遇政策を利用した映画制作が中心となった。これからの資金調達はどうなっていくのか?映画は利回りのよい投資や金融商品となりうるか? アメリカでの税制改正と映画産業への投資についてのトピックが興味深い。


将来の資金調達方法について語るパネリスト。
 AFMに作品を出品している日本企業では、東宝、東映、松竹といった老舗は常連組。日本映画の配給権を売るための出品をしている。新たに加わったのは、今年2月からAFMに出品する制作・配給会社を支援する日本貿易振興機構(JETRO)だ。ジャパン・ブースを設け、(1)企業として参加する、(2)作品で参加する、(3)作品のパンフのみを配布する、といった予算と目的にあわせた参加が可能だ。今回11月のAFMには、「アップルシード」で注目されるミコット・エンド・バサラ、イレブン・アーツ、TBS,電通、日活などがジャパン・ブースで出品し、商談を行っている。日本発のコンテンツが海外デビューするためには、著名なマーケットや映画祭での認知と継続的な売り込みの努力が必要だ。マーケット出品の支援団体を利用することもそのひとつであろう。

■AFMのサイトは、http://www.americanfilmmarket.com
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