TEXT BY はせがわいずみ(FEATURE PRESS)


会場となった全米監督組合ビル

 今年も、全米監督組合ビルを主会場に、<ロサンゼルス(インディペンデント)映画祭>が開催された。毎年“インディペンデント”という文字を掲げて開催されていたが、今年からは<ロサンゼルス映画祭>とのみ表記されている。しかし、主催者やラインナップを見るとやはり“インディペンデント”だ。今年の開催期間は4月20日(金)から28日(土)、短編、長編、招待作合わせて約100本が上映された。


 日本映画からは、北野武監督の新作『Brother』(01)と大友克洋監督の『AKIRA』('88)が招待作品として、主会場から歩いて3分の劇場サンセット5で上映された。ちなみに同劇場は、アート系や独立系映画を上映する映画館。同じ敷地内にバージン・メガストアやセレブ御用達シェフの店ウルフガング・パックのピザレストランがあったりしているので、ここでのセレブ目撃情報は多い。

 『Brother』の上映終了後、観客に感想を聞くと「日本のマフィア(やくざ)のやり方も、わかりやすく描かれていて混乱はしなかった。バイオレンス・シーンが多かったが、銃を使って物事を処理すると、後で自分にしっぺ返しが来るという、バイオレンスに対する戒め的映画でとてもよかった。銃を自慢するような若者やギャングにぜひ観てほしいね」という答えだった。映画の中のバイオレンス・シーンが犯罪を助長しているとして、そうしたバイオレンス映画に厳しいアメリカで、同作品がどれだけ受け入れられるかは分からないが、だからこそアメリカで必要とされる映画なのかもしれない。


1階のロビーには、今年は、上映作品の写真付きリストの垂れ幕が飾られていた

 また、今年のラインナップの目玉は、『グリーン・ディスティニー』(00)の監督アン・リーが紹介した「同作品を作るに当たって、影響を受けた映画」のうち3本(プラス短編1本の合計4本)が上映されたことだ。その3本とは、『侠女 第二部:最後の法力』('71/台湾/米公開タイトル『A Touch of Zen』)、『the Sword』('80/香港/日本未公開)、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ外伝 アイアンモンキー』('93/香港/米公開タイトル『iron monkey』)で、それぞれ、女剣士の話、剣の達人が持つ秘剣の話、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』シリーズでおなじみ黄飛鴻(ウォン・フェイフォン)の少年時代の話だ。竹林のシーンや、女剣士と若者のほのかな恋、ワイヤー・アクションばりばりのカンフー・シーンなど、まさに種明かし的ラインナップだった。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ外伝 アイアンモンキー』を観た白人の親子は、「『グリーン・ディスティニー』よりもテンポのいいアクションで気に入った。シリーズがあるの? ぜひ観なきゃ」という父親に対し、「ぼくはどっちも好きだね。とにかく中国の映画にはびっくりさせられるよ。ジャッキー・チェンの映画とかも楽しみだね」と息子はコメントした。


映画祭の公式ブック
(C)ifp/west, los angeles film festival

 今年の受賞者・作品は、批評家賞が『Kaaterskill Falls』(全編、役者の即興セリフで進行する先の読めない映画)、そして『Kissing Jessica Stein』(NYに住む2人の独身女性の数奇な偶然を描いたコメディ・ドラマ)が審査員特別賞と観客賞を同時受賞した。今後、作品・制作者とも、大手映画会社での活躍が期待される。<ロサンゼルス映画祭>は、インディペンデント映画制作者を応援する非営利団体「インディペンデント・フューチャー・プロジェクト」の西部事務局が主催している。1980年に創立された同団体は、ロスの他に、ニューヨークの映画祭、そして、独立系・無名映画制作者を応援する各プログラムを実施している。誰もがすぐに大手映画会社で映画を作れるわけではない。同団体のこうした地道な活動により、才能ある人々が世に出ていき、その結果、映画大国アメリカの地位をキープするのに大きく貢献しているワケである。



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