『ファイナルファンタジー』インタビュー <その1>

 日本が生んだ世界的ヒットのゲーム「ファイナルファンタジー」(以下FF)は、すでに10本のシリーズが作られ、それぞれストーリーは異なっても、その独特で壮大な世界観は人々を魅了し続けている。このFFシリーズの生みの親、スクウェアの坂口博信氏が製作・監督を務めたのが、映画『ファイナルファンタジー』だ。
 ハワイのホノルルに設立されたスクウェアのスタジオで作られた同映画は、日本とハリウッドの共同作業制作だった。『ファイナルファンタジー』の映画作りについて、スタッフやキャストにインタビューしたので今号から3回にわたってご紹介しよう。第1回目は、監督の坂口博信氏だ。映画のテーマなどについて聞いた。

Q1:ゲームと映画の違いは?
坂口監督(以下S):ゲームはストーリーの流れをゆっくりにして、インタラクティブの溝を作っていくけど、映画はプレイヤーとの交信はないから、ストーリーをどんどん進めなければならない。大きな違いは、こうしたストーリーの流れの速さにあると思ったね。

Q2:スーパーリアルなCGにする必要があったのはなぜ?

S:挑戦だね。今まで誰もチャレンジしようとしなかったから。ホノルルのスタジオはFFの映画のために作ったのではなく、映画やゲームのCGを作るという目的のもと設立した。コンピューターでスーパーリアルなアニメショーンができるスタジオがあるというのを示したかった。
写真右から、共同監督の榊原幹典氏、キャストのドナルド・サザーランド、
坂口監督(ロサンゼルスで行われたプレミアにて)
Q3:映画はゲームと同じテーマということですが、そのテーマとは何?
S:まず、FFの世界観は母を事故で亡くした時にいろいろ考えたことがヒントになっている。母の死はとてもショックだったけど、それを科学的に考えることで立ち直れた。命がエネルギーだとしたら、姿はなくなっても熱や光や運動エネルギーに変化してその人は存在し続けるという考え方がぼくを救ってくれたんだ。

 生きているものは何かのエネルギーになれるという考えがFFのテーマの一つなんだけど、特にこの映画では、前述のような考えを表面に押し出した。そして、この映画が、同じように大切な人を亡くして苦しんでいる人の助けになればと思って作った。実はこの映画の原点は娯楽映画ではないんだよ。
Q4:日本式のアテレコではなく、先に声優の声を録音したそうですね。

S:声を担当した俳優の顔の表情をアニメーション作りに活かしたかったから、絵よりも先に録音を始めた。レコーディングスタジオにカメラを設置して撮ったものを参考にアニメーターがキャラクターを描いていったけど、中には絵ができてから再び録音しに来てもらった俳優もいたね。

Q5:主人公アキ・ロスの人種は? 彼女の顔は誰がベースですか?

S:アキは4分の1日本人。これは、ホノルルのスタジオの人種構成を反映させてもいるんだ。顔は、かつてぼくの彼女だった女性たちの顔が参考資料かな(笑)。

昔の彼女の集大成? 主人公アキ
(でも、ワタシ的には生ブリジット・フォンダに似ていると思ったケド…)

*来週はプロデューサーの会田純氏、アニメーション監督のアンディ・ジョーンズ氏のインタビュー。さ来週は、ミン・ナ、ペリー・ギルピン、ドナルド・サザーランドの出演者3人とアニメーターのロイ・佐藤氏をご紹介します。お楽しみに!


文&写真:シネマ・ナビゲーターはせがわいずみ(フィーチャープレス)
Text & Photo by Cinema Navigator Izumi Hasegawa


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