TEXT BY 伊藤秀隆(監督/プロデュース/脚本)

 ホラー映画はいつでもOK?

 2月の映画館というのはあまり活気がない。いや、業界ではゴールデン・グローブ賞や色々な地域の批評家賞、協会賞などが発表されたり、スタジオによるオスカー争奪戦のためのパーティーが随所で繰り広げられているのだろうが、普通の映画ファンにはあまり関係のないこと。冬休み中はいつも長蛇の列のできていた映画館も今の時期は、週末でさえそれほどの混雑は見られない。
 確かに、上映作品も、どちらかというと地味なものばかり。どれもオスカーを狙えるような人間ドラマをしっかり描いた秀作、傑作と呼ばれるような作品である。ここは一つ、文学を読むような気持ちでじっくり映画鑑賞をするのもいいのではないか?しかし、ハリウッド映画の興行に大きく影響を与えるアメリカのティーンエイジャーにとって、映画とは常にエキサイトでなければならないらしい。例えデートで映画に行くのだとしてもロマンチックな映画よりクールなホラーがいい!というのがこの世代の意見だ。

 ということで、突然登場していきなり今週の全米第1位を獲得したのがティーン向けのホラー映画『Darkness Falls』。この映画制作費は1100万ドルだそうだが、公開3日間で$1300万ドル稼ぎ出した。まー来週には、1位から落ちると思われるが、とりあえずスタジオとしてはあっという間に制作費を回収できたのだから大喜びである。

 ちなみに、1100万ドルという製作日は平均的なハリウッド映画の制作費から見てもかなりの低予算。無名監督にノースター。おまけに批評家からの平均的評価はD(最高がA)。これでも、公開時期によっては1位を獲ってしまうのは、これがホラー映画だからなのだ
ポスターはまあまあかな。あと、ホラーは予告編が大切ですね
 ホラーやスリラー映画というのは監督の演出力によってその質がかなり違ってくる。初監督作品としてホラー(もしくはスリラー)を選ぶ人は多い。考えてみれば、スピルバーグは『激突!』('72)、『タイタニック』('97)のジェムーズ・キャメロンは『殺人魚フライングキラー』('81)、『スパイダーマン』(02)のサム・ライミは『死霊のはらわた』('83)がデビュー作。どの作品も、かなりの低予算で製作しそれなりの収入を上げ、監督を大きく出世させたのだ。

 ここまでは、低予算ホラー映画の話をしたのだが、結構大作になりそうなホラー映画の製作も発表されている。その映画とはホラーの大御所スティーブン・キング原作『Two Past Midnight: Secret Window, Secret Garden』で、主演はジョニー・デップ。監督は『ジュラシック・パーク』('83)や『スパイダーマン』など数えだしたら切りがないほど多くの大ヒット作の脚本を担当し、監督作品としてはこれが3本目となるデビッド・コープだ。この他にも同じくキングの原作でモーガン・フリーマン主演による『ドリーム・キャッチャー』(03)の製作が発表された。ホラーというジャンルはハリウッドのメジャースタジオにとっては手堅い収入源なのだ。

 映画によって人生感が変わったとか、一生の思い出になったという話もあるが、実際問題としてそんな傑作が何本もあるわけがない、いや、あっても困る。やはり個人的な意見として、ハリウッドには週末に軽い気持ちで刺激を得られるポップコーン・ムービーをどんどん量産していって欲しいと思う。もしかしたら、その中から凄い才能をもった監督は出現するかもしれないし。ちょっと下らなさそうなホラー映画も、そうやって見るとまた新たなる面白さがあるかもしれません。でも、日本だと映画料金がそういう軽い気持ちにしてくれないけれど・・・。困ったもんだ。
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