TEXT BY 伊藤秀隆(監督/プロデュース/脚本)

 AFM 2003 アメリカンフィルムマーケット

 ハリウッドで行われる映画関係の大きなイベントの一つに、アメリカンフィルムマーケットというのがある。今年も2月19日から26日までサンタモニカで開かれ、世界中からたくさんの映画が集まり、各国からのバイヤーもここに集結し、良い映画を見つけようと皆血眼になっている。ミリオンダラーヒットになる作品が眠っているかもしれないからだ。
 AFMのサイト(http://www.afma.com/AFM/home.html)に行くと、AFMでチャンスを掴んだという経歴をもつレニー・ハ-リン監督のインタビュー映像を見ることが出来る。この監督、今でこそ『ダイ・ハード2』('90)『クリフハンガー』('93)『ディープ・ブルー』('99)と数々のアクション大作を手がけるハリウッド屈指のヒットメーカーだが、若い頃は色々苦労したそうだ。『レッド・プリズン<未>(Videoタイトル:死線からの脱出)』('85)という映画を故郷フィンランドで製作するが、途中で資金が途切れ中断。その危機を救ったのがAFMなのだ。レニー・ハーリン監督はその途中までできた作品をもとに資金を集め、なんとか完成に漕ぎ着ける。
ここが会場となるLoews ホテル。サンタモニカビーチのすぐそばにある
しかし、苦労の末に完成させた作品も、フィンランドでは政治的な理由により上映禁止になってしまう。祖国の映画製作の現状に嫌気のさした監督は意を決して渡米、現在の成功を掴む。

 こういうヒットメーカーの若かりし頃のエピソードというのは、僕のように現在映画製作で苦労している人間にとってはとても励みになる。ただし、現在のAFMは参加費用などが高くなっているため昔のハーリン監督のような貧乏監督では参加するのが難しいかも・・・。もう少し若手に門戸を広げて、再びこういう素晴らしいエピソードを生んで欲しいと思う。

 と、まあ個人的な感想を述べているわけだが、実際ハリウッド映画と比べると日本映画というのは予算からみれば超インディペンデント映画で、それこそハーリン監督の第1作目と同じくらいの予算のものも多い。そういった作品も、このAFMで世界の配給会社に対してアピールできるのだから、やはり素晴らしいイベントなのだ。
 ここで今年の日本からのラインナップを見てみると、なんと日本版『リング』('98)が再び来ている。ハリウッド版『リング』(02)が大ヒットしたのでオリジナル版も公開するのだろうか?そして、やはりホラー路線で『呪怨』(02)。この映画ははっきり言って『リング』より格段に怖いので是非世界に紹介して欲しいと思っていたので楽しみだ。その他には『壬生義士伝』(02)『恋に歌えば』(02)『青の炎』(03)などなど・・・。今年も日本映画は頑張って世界進出を狙っているようだ。

 実際、ハリウッドの日本映画へ注目度はかなり高いといえる。中でも日本製ホラーとチャンバラ映画、そして日本アニメはマンネリ化したハリウッドに新しい風を巻き込めそうだ。チャンバラ映画は釈由美子主演の『修羅雪姫』(01)や今年公開の『あずみ』(03)の北村監督の低予算映画『VERSUS ヴァーサス』(00)のリメイク化権がすでに売れているし、日本アニメについては『アキラ』『ルパン三世』の実写映画化が発表され、すでに撮影に入っている。『ドラゴンボール』の製作開始もそう遠いことではないだろう。
サンタモニカの街には現在この旗が到るところに掲げられている。まさに街ぐるみのイベント
 AFMを見ていると日本はもとより、それぞれの国が自国の文化をどうエンターテイメントとして世界に送り出そうとしているかが表れていて面白い。このような場を見ると、ハリウッド映画だけしか見ないのはもったいないなーとつくづく思う。映画ファンの皆さん、たまには他の国の映画も見てくださいね!なんて、ハリウッド情報担当のライターが書くことではないのだが・・・。
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