TEXT BY 伊藤秀隆(監督/プロデュース/脚本)

 アメリカンコミックの映画化がまたしても大ヒット!
 ハリウッドに吹き荒れるスタン・リー旋風!

 アメリカンコミックの映画化がまた一つ大成功を収めた。少し前まではアメコミの映画化と言えば"スーパーマン""バットマン"を映画化し大ヒットさせたDC出版が有名だった。しかし、ここに来てもう一つの老舗マーベルコミックスが"X-メン"の実写映画化を機に、連続して映画を大ヒットさせている。
 今回の彼らのヒットはベン・アフレック主演の映画『デアデビル』だ。オープニング3日間出4300万ドル(約51億円)を稼ぎ出し、この時期のハリウッド映画NO.1に踊り出た。2週目に突入してもその勢いは衰えず、この分だと1億ドルの大台にのることはほぼ確実だろう。
 スタジオ側はすでに続編の製作を考えている。さらに、続編だけではなく今回登場したジェニファー・ガーナ-演じるヒロインを主人公にしたスピンオフ企画(もう一つのストーリー)まで準備されているようだ。

 日本ではあまり馴染みのないこの『デアデビル』というコミック、幼き日に事故に合い、視覚を失った少年が大人になって昼は弁護士、夜はデアデビルとして活躍する物語。目が見えなくなった上に、自分が勉強するためにボクシングで稼いでくれた父親が殺されてしまうなど、同じアメコミ映画化で大ヒットした『スパイダーマン』(02)に比べちょっとダークな設定。
『デアデビル』米版ポスター。
 ただ、子供には少し残酷すぎるようなストーリーだからこそスパイダーマンでは物足りなかった大人の観客をも楽しめる内容になっている。

 さて、その『スパイダーマン』だが、続編『アメージング・スパイダーマン(原)』の製作発表が行われた。一時はロバート・デ・ニーロが演じるのでないかという噂された悪役のドクター・オクトパスは、英国のベテラン俳優アルフレッド・モリーナに決定した。監督は前回の引き続きサム・ライミ。公開時季は未定だが2004年のメモリアルデイになるのではないかと言う噂。

 だが、それを待たずともマーベルコミックスの勢いはこの夏もとまらない。まずはブライアン・シンガー監督の『X-メン2』。X-メンのメンバーがさらに増え、ますます個性の強い戦いを見せてくれるらしい。そして、『グリーン・デスティニー』(00)でアクションが撮れることも見せてくれたアン・リー監督の『ハルク』も見逃せない。プレビューを見たが、巨大な戦車を緑の巨人ハルクが振舞わしているシーンなどもあり、迫力満点の作品に仕上がっている。
 さて、今回紹介した作品の作者はなんとすべてスタン・リー氏によるものだ。そのスタン・リーだが先頃、スパイダーマンで得た収益の分配を求めて訴訟を起こした。リーの弁護士がマンハッタン連邦裁判所に提出した書類によると、マーべル社はリー原作のキャラクターが映画、テレビ番組で使用され利益があった場合10パーセントを支払うとする契約を結んだと主張している。

 皆さんご存知のとおりスパイダーマンは昨年、世界中で4億ドルを越える興行収入を記録した。それにも関わらず、リー氏は1銭も得ていないというのだ。確かに、自分が生み出したキャラクターが稼いだ利益を全く得られないというのはあまりにも理不尽だ。マーベル社もスタン・リー氏の作品をこれだけ並べているためさすがに邪険には扱えず、素直に和解に応じたようだ。

 日本が誇る漫画たちもマーベル社の作品のように世界にはばたいて欲しいものだ。ただし契約の時は、気をつけないとその作品がいくらヒットしても日本の作家には1円も入らないなんてことも起こる。まずは、日本が誇る傑作、アキラやドラゴンボールの製作に早いところ着手して欲しいものだ。キャラクターの創造力は日本も負けてはいない。頑張って欲しいものだ。
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