TEXT BY 伊藤秀隆(監督/プロデュース/脚本)

 第75回アカデミー賞 直前リポート!

 いよいよ3月23日、ハリウッドにあるコダックシアターで第75回アカデミー賞が行われる。今年は、アニメ部門に日本から長編、短編2つの作品がノミネートされた。長編はご存知『Spirited Away』こと『千と千尋の神隠し』。短編は『MT.HEAD』、邦題『頭山』という日本風のしっとりとした画風の作品である。最近、あまり明るい話題のない日本社会に活気を取り戻すためにも両作品共に受賞してほしい。

 しかし、アカデミー賞というのはある種選挙みたいなもので単に質が良ければ受賞できるものでもない。その作品を配給する会社がどれだけ5,816人のアカデミー会員にアピールすることができるかというのも重要なポイントなのだ。自社が配給した作品に投票してもらうために豪華なパーティーを催したり、サンプルのDVDを会員の自宅に配布したりと様々な手を尽くす。だから、今回のようにディズニーから『リロ&スティッチ』と『千と千尋の神隠し』と言うように2作品がノミネートされている場合、予算の関係上どうしてもどちらかに偏って力を入れることになる。そして、今回ディズニーが押しているのはどうやら自社制作作品である『リロ&スティッチ』のようなのだ。
 ただし、『千と千尋の神隠し』は全米の批評家の9割以上が支持している。あのレオナルド・ディカプリオも熱烈なファンだそうでスピルバーグ監督に観るように勧めたという話もある。そんなわけで、いくらディズニーがプロモーションに力を入れてないからと言って受賞の可能性がない訳ではないのだ。「政治」が勝つか?「質」が勝つか?実に興味のあるところだ。

 さて、ここで読者の皆さんにご紹介しておきたいのがYahooが設置した今年のアカデミー賞のサイト(http://movies.yahoo.com/oscars/)である。ここには、今回ノミネートされた作品の一覧表や現在のスター達の心境(受賞できるかどうか?当日は何を着ていくか?誰と行くか?などなど…)、そしてゲームが置いてある。このゲームがけっこう面白く、映画知識クイズやスターの神経衰弱など英語が少々苦手でも結構楽しめる。是非トライしてみてほしい。

 ちなみに、僕の今年の予想を公開します。
 ・作品賞:シカゴ 監督賞:マーティン・スコセッシ(『ギャング・オブ・ニューヨーク』)
 ・主演男優賞:エイドリアン・ブロディー(『戦場のピアニスト』)
 ・主演女優賞:二コール・キッドマン(『めぐりあう時間たち』)
 ・助演男優賞:エド・ハリス(『めぐりあう時間たち』)
 ・助演女優賞:キャサリン・ゼタ=ジョーンズ(『シカゴ』)
 ・長編アニメーション:『千と千尋の神隠し』
 作品としては、オリジナルのミュージカルを超えたと言われる『シカゴ』の出来は大したもの。ただ、演技となると今までのアカデミー賞の性格からして地味ながらも、静かな感動を呼び起こす『めぐりあう時間たち』に軍配があがるのではないかと思う。ただ、編集や音楽など他の部門を総ナメするのはやはり『シカゴ』になるのではないだろうか?

 最後に、今年も音楽賞に巨匠ジョン・ウイリアムズがなんと21回目のノミネートを果たした。ちなみに受賞は『E.T.』と『シンドラーのリスト』で2回受賞している。ただ、今回は『めぐりあう時間たち』のフィリップ・グラスが受賞するような気がする…。
ジョン・ウイリアムス:この方が『続 激突! カージャック』以来全てのスピルバーグ映画音楽を担当するジョン・ウイリアムズ氏だ。なぜか、キャンパスに来ていた…
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