TEXT BY 伊藤秀隆(監督/プロデュース/脚本)

 ハリウッドを観光しよう! その1

 ハリウッドに観光で来て、「おーここはハリウッドだ!」と思う瞬間はいつですか? というアンケートがアメリカのあるTV番組で行われた。その結果、「ハリウッドサイン」を見たとき、と答えた人が一番多かった。

 僕らも丘に掲げられた”HOLLYWOOD”というサインはTVや雑誌などで繰り返し見ている。僕もLAに留学した当初、初めてこのサインを見たときは「おお、ついにハリウッドに来たんだ!」と感慨にふけったものである。
 横450フィート(135メートル)、縦45フィート(13.5メートル)の巨大サイン。もともとは、1923年ビーチウッドキャニオンにて不動産屋の広告として建造された。そのときのサインは「HOLLYWOOD LAND」であった。その後、ハリウッドは映画産業の街として有名になっていき、1945年に“LAND”の4文字が取り外された。

 ハリウッド映画産業の象徴とも言える“HOLLYWOOD”サインだが、実際、光と闇のエンタテインメント業界を象徴する事件もこの場所で起きている。
サイン:これぞ、ハリウッドのシンボル。それだけに、このサインにまつわる事件も多いのだ。
 1932年のことである。ある若い女優がここで自殺騒ぎを起こした。彼女の名はPeg Entwistle。サインの「H」の上に登り、そこから飛び降り自殺を図ったのだ。きらびやかなハリウッドの輝きは、時として人々を狂わせる。ハリウッドの丘に輝きつづけるサインの裏には、こうした暗い部分も隠されているのだ。ちなみに、このサインに使われている何千もの電球の管理は“L”の裏にある小屋に住む管理人が毎日行っている。

 1998年にディズニーによってリメイクされた"Mighty Joe Young"(『マイティ・ジョー』)では、巨大な猿が“O”の字に登って、世界中にこのサインの存在をアピールしていた。しかし現在では残念なことに、サインの近くに一般の人々が近づくことはできない。

 まず、サインがある場所へは通常の道路では行けない。何とか辿りついたとしても、フェンスで覆われたサインの周りは最新のセキュリティシステムでガードされており、無理にフェンスを越えようものなら辺り一帯にアラームが鳴り響いてしまう。ここは一つ、離れたところから眺めるのがよさそうだ。
 続いてご紹介するのは「シュラインホール」。ここはグラミー賞(音楽)、エミー賞(TV)、アメリカンミュージック賞、MTVアワード、そしてアカデミー賞(映画)というアメリカのエンタテインメントにおける重要なセレモニーが行われる場所である。アカデミー賞はミュージックセンターにあるドロシーチャンドラホールで行われていたが、シート数が3197席しかないため、1997年に座席数6500席を誇るシュラインホールに移動した(なぜか、1999年にミュージックセンターに戻ったが……)。数年前までは世界最大の室内ホールであり、現在もアメリカでは最大のホールであることから、SF&アニメフェスティバルなど様々な催し物が行われている。
シュライン:2001年のアカデミー賞のときのシュラインホール。このとき、僕はUSCの近くに住んでいたので、アカデミー賞のため多くの道路が封鎖されて大変でした。
 ちなみに、一般にはあまり知られていないが、地下室はシュラインホールのすぐ隣にあるUSC(南カリフォルニア大学)映画学部と演劇学部の倉庫として使われており、学生が製作した大道具やセットなどがおかれている。USCとシュラインは色々な意味で密接に関係しており、USC映画学部の卒業式はシュラインで行われ、ジョージ・ルーカス監督を始めとする映画業界の重鎮が多数招かれ盛大に行われる。

 ハリウッドの観光名所は、現在進行形で増殖している。毎年いくつかの名所がそのリストに加えられていくのだ。ガイドブックには載っていない裏ハリウッド観光案内、これからも紹介していく予定です。
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