TEXT BY 伊藤秀隆(監督/プロデュース/脚本)

 徹底討論! 日本映画をどうやってハリウッドで売るの?

 さー、いきなり「朝まで生テレビ!」みたいなタイトルで始まったeigafanだが、今回はLAのど真ん中に聳え立つ超高層ビルの中で行われたJETRO(日本貿易振興機構)での討論会についてレポートしよう。まずJETROとは何か?知らない人の為に解説しよう。これは簡単に言うと日本のお役所である。経済産業庁の外郭団体で、日本の文化や物資を世界に広めていくために様々なことをするところだ。なんかいつものeigafanに似合わず堅いなーなんて思われるかも知れない。実際、参加者も殆どは僕の両親よりも年齢が上の方々で、銀行、日系企業の経営者、貿易関係と様々。では、なんでそんな堅い討論会のレポートをここでするのか?と言ったら、なんと僕がゲストスピーカーとして呼ばれて、Power Point(※)なんぞを使って大先輩方を前に色々話す羽目になったからなのだ。で、その討論会のタイトルは・・?
 第2回 JETROコンテンツ輸出戦略討論会 「ビジネスとしてのインディペンデント映画製作の実際」。いやー、なんか偉そうなタイトル。もう、僕などはタイトル負けして、引き受けた2週間前から緊張しっぱなし。そして、会場に行ってみると、第1回目の討論会の倍である40人以上の参加者ではないか・・。端から自己紹介をしていく。いやはや、どこそこの社長さんとか、お偉い方々が揃っていらっしゃる。この方々を前に、「ゲリラ撮影当たり前」みたいな映画製作をしてきた僕に何が言えるのだろう?そして、ついに自分の番がきた。高鳴る鼓動を抑えながら、簡単な自己紹介を行う。そして、準備してきた(と言っても、緊張して前の晩に30分くらい書いただけ・・)Power Pointをスクリーンに投影する。で、今思い出そうとしても殆ど思い出せないような、まさに文字通り夢中で「ハリウッドにおける日本映画のトレンド」「現在の日本におけるインディーズ映画の現状」などをご紹介させて頂いた。
見て!この高層ビル。JETROは49階にあるのだが、その夜景たるや感動ものだ。
 「ハリウッドにおける・・」については、以前にeigafanでも書かせて頂いているが、ハリウッドでは昨今様々な形で日本映画に興味を持っている。そこで、来年公開が予定されている『AKIRA』の実写化や『鬼武者』の映画化が発表されているように「アニメ&ゲームの実写化」、来年1月から撮影の始まるハリウッド版『呪怨』や『修羅雪姫』など「アクションやホラーなどジャンル映画のリメイク」、『キル・ビル』や『ロスト・イン・トランスレーション』と言った「日本の文化を監督の個性に合わせて取り入れたもの」という3つのパターンに分け其々、作品例を提示しながら説明させてもらった。また「現在の日本におけるインディーズ映画の現状」については、僕の好きな岩井俊二監督や塚本晋也監督などの製作形態や配給方法などを検証した。この中で、参加者の一人である『マリリンに遭いたい』で知られるすずきじゅんいち監督から、「通常、日本では監督やプロデューサーが作品の権利を持てない」「給料しか貰えない」場合が多いというご意見をもらい、討論に火がついた。
 僕自身も、体験談に基づき「例えば監督が、このシーンで血シブキをあげて首を落としたいと思っても、それだと映倫の指定で観客が制限されるから売ろうと思ったら血は程ほどにする。けれど、給料だけなら思いっきりやっちゃうかも?」など、極端な例を出して討論の盛り上がりに少し貢献した。僕の例えはちょっと冗談ぽいとしても、スタッフの一人一人、もしくは少なくとも監督やプロデューサーが自分の表現の方法をどこまで観客と共有する事ができるかというのは商業としての映画製作には重要なことだと思う。監督などは、結局のところアーティストだから自分ならではの映像表現を行いたいと思うのは当然であり、そうすべきである。そして、ギリギリのところでエンターテイメントに昇華できるかどうかが、プロデューサーの腕であり、監督の妥協点である。
LA暮らしが長いので、税金払ったことがない人間がこんなとこでスピーチしていいのだろうか?でも、日本の発展を本当に願ってらっしゃる方々の姿勢に感動!やはり、僕らは日本人だ!
そこに、「もし売れても会社しか利益は貰えないよ」なんてシステムがあるのだとしたら製作者たちが、「じゃあ思い切ってアートしちゃおう」と思うのは当然だろう。

 今週、僕は帰国して現在製作中の作品と次回作の売込みを行うのだが、それを目前にし、あまり元気とは言えない日本の映画産業の問題点を垣間見た気がする。いやー、それにしても今回のレポートは、疲れた。やはり人前で話すのは大変である。





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