TEXT BY 尾崎佳加

 大ヒットの原石を発掘しろ! 2004年 アメリカン・フィルム・マーケット

 世界3大映画見本市の一つと言われる、アメリカン・フィルム・マーケット。今年は例年より出品作が多く、各国から出品された映画は300本を超えた。今年初めてブースを設けた日本映画は、はたして未来の大ヒット作品となるか?!
 アメリカン・フィルム・マーケット(AFM)はカンヌ映画祭、MIFED(ミラノ国際映画見本市)と並ぶ世界最大の映画市。今年は世界28ヶ国、約300社が自社映画を出品し、買い付けに集まったバイヤーは1,500人を超えた。
 毎年日本で公開される海外映画は約300本以上だが、これらはAFMのような見本市で各配給会社から派遣されたバイヤーが買い付ける。いい映画を発見するのはすべてバイヤーの選球眼にかかっているのだ。見本市でのスクリーニング(試写上映)は、多いときで1日に10本くらい行われる。もちろんそのすべてを見ることは不可能だから、バイヤーたちはシノプシス(映画のあらすじ)にざっと目を通し、これはという映画だけを鑑賞して、買い付ける映画を決める。これは気が遠くなるほど大変な仕事。映画の配給権は何億円もする。これだけのお金を出して、映画がまったく当たらなかったらそれこそ大変なことになる。おのずと慎重にならざるを得ないが、かといってぐずぐず考えていると他社のバイヤーに持っていかれてしまう。自分の直感を信じ、これはと思う作品があったら思い切って買い取る。バイヤーの責任はとてつもなく大きい。「映画をタダで観られて良いですねえ、なんて言われるけど、実は気が狂いそうになるほどのプレッシャーなんですよ」とは、某大手配給会社のベテランバイヤーの言葉。バイヤーは映画界のギャンブラーなのだ。
ウエストハリウッドからサンタモニカにかけて掲げられた、AFMフラッグ
 ところで、最近は低予算のインディペンデント映画を掘り出そうと、サンダンス映画祭に参加するバイヤーが増えているそう。見る人に一生の感動を与える作品となるか、はたまた大コケの駄作となるか…。バイヤーが「これだ!」と思う作品でも、必ず万人に受け入れられるという保証はない。独立系の作品は、制作費が安いだけに売値も安く、当たれば利益が大きい。しかも、たとえこけても被害は少なくて済む。言ってみればベンチャー企業に投資するようなものだが、それが配給会社の間でちょっとしたインディペンデントブームを呼んでいる理由だ。
AFM - 世界性大規模の映画見本市。今年は1500人のバイヤーが集まった
 そんな中で、低予算だがクオリティーの高い日本の映画は海外で中々の人気だ。アメリカでの日本映画ブームは近年ますます盛り上がる一方だ。以前から人気があったアニメやホラー映画だけでなく、『キル・ビル』(03)のようなアクションものや、日本の文化を取り入れたハリウッド映画が数々の映画賞で高く評価されたことはこの連載でも触れてきた。

 そんなわけで今年のAFMは、まだ世界に知られていない映画 - メイド・イン・ジャパンの素晴らしさを見せつける絶好のチャンスだった。我らが日本の出品作は、人気TVアニメの劇場版『新世紀エヴァンゲリオン』('97)、ホラージャンルからは『陰陽師Ⅱ』(03)など数作。過去には東宝など大手配給会社も参加し、金城武主演のSF娯楽大作『Returner リターナー』(02)、『リング』('99)、『呪怨2』(03)などの世界配給が決まっている。今年の作品も未来のハリウッド大作となることも十分期待できる。
 今年AFMに出品された邦画は、いずれも国内で大ヒットした有望株ばかり。全世界を揺るがすブロックバスターとなるかもしれない。香港映画とならんで、ジャパン映画が世界でブランドになる日が早くきてほしいものだ。
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