TEXT BY 尾崎佳加

 新ハリウッドのランドマーク -ザ・スタンダード・ホテル -

 ハリウッドサイン、チャイニーズシアター、ユニバーサルスタジオ……。現在のハリウッドの象徴として親しまれている数々のランドマーク。今回は新しく仲間入りしたピカピカのランドマークにスポットをあててみよう。ハリウッドスターをはじめ、映画関係者がたくさん集まる話題のスポットだ。
 “The Standard Hotel”がLAダウンタウンにオープンしたのは2002年だった。Standard - スタンダードとは、「標準」「基準」といった平均的な意味を持つ言葉。オフィスビル街のど真ん中、超高層ビルに守られるようにこぢんまりと建っている小さなこのホテルだが、エントランス上にちょこんと乗っている看板“The Standard”の向きがなぜか逆さまだ。

 スタンダードがひっくりかえる……。これでは「標準外」、「既定外」など反対の意味になってしまうのでは? そう、実はここ、枠にはまらないことをコンセプトにデザインされた新感覚のブティックホテルなのだ。
1号店のウエストハリウッドのザ・スタンダード。こちらもやはり、看板は逆さまだ
 このホテルの目玉は最上階にあるバー。現代アートを集めた大人の遊び場としてオープン以来人気の衰えを知らず、多くのアーティストやセレブのお気に入りだという。なんでもキャメロン・ディアス、コートニー・ラブ、ウィノナ・ライダーというVIPたちがよく遊びにくる常連客で、すっかりバーのとりこになっているらしい。
 “ルーフトップバー”(The Roof Top Bar at the Standard)と呼ばれるこのバーは、文字通りホテルの屋上にある。最上階でエレベーターの扉が開くと黒いスーツに強モテのお兄さんが出迎えてくれる。もちろん彼らは受付嬢のかわりではなく、21歳以下の客がバーへ立ち入らないようIDをチェックするセキュリティーだ(アメリカでは飲酒は21歳から)。ここでIDを持っていないと不運にもエレベーターに押し戻されるわけだが、年齢を確かめた後は笑顔で案内してくれる。図体の大きな彼らが道をあけてくれた瞬間、誰もが目の前に広がるパノラマビューに賛嘆の声を漏らしてしまうだろう。ザ・スタンダードは12階建ての小さなビル。そして周りにそびえ立つのはこの5,6倍も高さのある巨大なビルディングだ。LAの経済を動かす高層ビル群を360度一望できるのだ。

 ダウンタウンの高層ビルは夜景を美しく保つため、夜間でも照明をつけたままにしている。この粋な計らいを知ってか知らずか、スタンダードには屋根やパラソルといった空の視界を遮るものが一つもない。めったに雨の降らないLAだから実現したオープンバーだ。
右後がライブラリータワー。73階建て、310メートルのLAで最も背の高いビルだ
 スタンダードは普通のホテルにあるバーとしての「スタンダード=標準」をはるかに超えているのだが、店を設計したデザイナー達はさらにもう一工夫付け加えた。例えばこのバーのもう一つの目玉である、プールサイドに並んだウォーターベッドだ。遠くから見ると赤い球根のようなスライムのような、よくわからないんだけど愛らしい形のドームの中に、丸型のウォーターベッドがたぷたぷと揺れている。このドームの中に大の字になって寝転び、闇に浮かぶスカイラインを見ているときの心地よさったらない。混雑時はベッド前に列ができる人気ぶりだ。
真っ赤な球根のようだが、この中にたぷたぷと揺れるウォーターベッドがある
 スタンダードホテルの仕掛けはこれだけではない。なんと、隣りのビルを巨大スクリーン代わりにしてフィルムの上映をしているのだ。白で統一されたこのモダンな隣りのビル、実はLAダウンタウンで最も高級なロフトアパートの一つだったりする。最上階にある専用ジムの中で汗を流す住民たちと、その真上に映し出される淡い映像。なんてバブリーな絵なのだろう。
となりのロフトアパートの壁が巨大スクリーンに
 この他にも、ホテルの隅々に様々な工夫が凝らされているスタンダードホテル。 広さやグレードによって部屋にユニークな名前がつけられているのも面白い。スイートルームを“Huge”、“Gigantic”、“Humongous”(巨大、でっかい、膨大)などと名付けてみたり。中には“Wow!”という名の部屋もあり、なぜかここのバスルームには1メートルほどの巨大な足の彫刻がおいてあったりする。

 確かにワオ!という感じ。この装飾には一体どんな理由があるのか?そんなことを考えているうちに、段々スタンダードホテルの魅力にハマってしまう。こうしてスタンダードはわずか2年でLAシティーサーチや他の地元情報誌に「最もホットなスポット」として頻繁に紹介される、LA&ハリウッドの顔となったのだった。
プールは空に浮かぶオアシスのよう。でも酔っ払って落ちる人がいるかもしれない
 そして、このダウンタウンの「小さな巨人」に先駆け、同じく多くのセレブに愛されてきたザ・スタンダード、ウエストハリウッド店の存在にも少し触れておこう。キャメロン・ディアスにレオナルド・ディカプリオらも出資しているこのザ・スタンダード1号店は、ジョニー・デップやマット・ディロンといった男性スターに人気の様子。同じ現代アート色の強いこちらでも、年月の分だけ落ち着いたシンプルさで、やんちゃな2号店とは一味違う。

 モダンアートの香り溢れる、まったく新しいコンセプトのスタンダードホテル。行ってみて絶対損はない。ダウンタウンの高層ビル群に囲まれた屋上のウォーターベッドに恋人と一緒に寝転んだら、もうムフフ……なのである。
■The Standard> http://www.standardhotel.com
The Standard:Downtown LA
550 S Flower St.
Los Angeles, CA 90071
(213) 892-8080
The Standard:West Hollywood
8300 W Sunset Blvd
West Hollywood, CA 90069
(323) 650-9090
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