TEXT BY 尾崎佳加

 まだまだ続く日本ブーム! この夏公開のメイドインジャパン作品

 寿司レストランや和風の家具屋がLAの街のあちこちに目立つ近頃。アメリカに再び大きなジャパナイゼーション旋風が起こっている。もちろん、これにあわせて日本映画の人気も上昇中。ブロックバスターのような米大手レンタルビデオ店にも邦画がオススメコーナーに並んでいるからすごい。『ラストサムライ』あたりから急速に盛り上がり始めたジャパンブームに乗り遅れるなとばかり、この夏も全米公開を控えた日本の映画が続々登場!
 邦画の中でも特に人気があるのはサムライもの。戦いに生きる男の崇高な精神はどの国でも感動のドラマらしく、今年はじめに公開された『ラストサムライ』でも武士道精神は多くのアメリカ人の胸を熱くした。

 このサムライブームに乗じて来月公開予定なのが『Zatoichi』だ。北野武が刀を抜き、盲目の居合の達人を演じる平成版の『座頭市』。タップダンスの踊りのシーンなど、サムライアクション以外にもみどころ満載のこの映画、エンターテイメント性に富んだ演出がアメリカ人にもウケそう。日本映画が大々的にアメリカで劇場公開されるのは96年の『Shall we ダンス?』以来。『Shall we ダンス?』はハリウッドの大作に混じってボックスオフィスで18位を記録するなど大健闘したが、『Zatoichi』はどうなるだろうか? 今から楽しみだ。
 日本の映画界が得意とするホラー作品もアメリカが歓迎するジャンルの一つ。アメリカンフィルムマーケット(連載199)に出品されたことがきっかけで米国配給が決まった『呪怨』は、7月にオリジナル作品、10月にハリウッド版の公開を果たすという快挙を成し遂げた。製作スタッフは『The Ring』の恐怖の輪を米国に拡大させたドリームチームというからヒットの予感は大だ。ハリウッド版のメガホンをとるのはオリジナル版と同じ、清水崇監督。アメリカ人の手によるものでなく、日本独特の恐怖、日本のホラーの真髄を理解してもらう絶好のチャンスになるだろう。
 さて、先に触れた米国進出日本映画のハシリ、『Shall we ダンス?』だが、これをハリウッドが気合いを入れてリメイクした『Shall We Dance?』が秋に公開される。どの辺に気合いを感じるかというと、まず主演俳優の顔ぶれがスゴイのだ。ジェニファー・ロペス、リチャード・ギア、スーザン・サランドンという豪華この上ないキャストの起用で大ヒットを狙う様子だ。日本人のヘンな律儀さ、不器用さ、シャイさが絡みあって生まれるこのコメディーを、ハリウッドがどう料理するか少し不安に思っていたが、劇場用トレーラー(予告編)をみたところ、原作にあったほのぼのした人間の暖かさは失われていないようなのでひと安心。
ビデオショップの日本ビデオコーナー。オリジナルのZATOUICHIのDVDがおいてある。
 同じく秋に公開予定の作品では、『ダーク・ウォーター』が見逃せない。「貞子」という名前=ホラーというイメージを定着させてしまった大ヒットホラー小説「リング」。この超ヒット作を生み出した鈴木光司の小説「仄暗い水の底から」が、『ダーク・ウォーター』の原作とあれば、期待するなという方が無理な話。ホラーの要素もさることながら、家族愛がからむストーリー性も重視していた原作の細やかさを、ジェニファー・コネリー演ずるハリウッド版がどこまで表現しているかが楽しみだ。

 NYで日本の書籍を英訳して出版している出版社がある。ここの創設者の言葉で印象深かったのが、「日本には素晴らしい物語作品が溢れている」という一言。日本で愛され続ける創造性の高い作品は、世界でも必ず注目される魅力をもっている。邦画ブームがアメリカで衰えを見せないのもこういう理由があるからだろう。

 ボックスオフィスの上位に日本映画が登場することはもはや珍しいことではない。日本映画とハリウッドとの距離は最近ぐっとせばまってきているのだ。
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