TEXT BY 尾崎佳加

 全米一のコメディアンは誰? 「ラスト・コミック・スタンディング」

今週とうとう開幕を迎えたアテネオリンピック。世界のアスリートたちによる熱い競技にテレビにくぎづけになっている方も多いでしょうが、アメリカのお茶の間では今、こんなコンペティションが盛り上がっています…。
 先週、ロサンゼルスにあるアレックスシアターでNBC局の番組「ラスト・コミック・スタンディング」の最終戦が行われた。明日のバラエティー番組をささえるコメディアンを見つけ出すこのショーで、今年も全米を代表するコメディアンが誕生した。

 日本では2人組の漫才が主流だが、アメリカのお笑いといえば、一人のコメディアンが漫談形式でジョークを飛ばすスタンドアップ・コメディーなるものがふつう。日本のスクリーンでお目にかかるハリウッドのコメディー俳優は、ほとんどといっていいほどスタンドアップの経験者。最近はシリアスな役にも挑戦しているコメディー俳優のロビン・ウィリアムズも、こちらアメリカでは、2時間ぶっとおしのライブでお客を笑わせることのできる超一流コミック(コメディアン)としてあまりにも有名だ。「ラスト・コミック・スタンディング」はそういった全米のスタンドアップ・コメディアンの中から、最も笑わせるNo.1コミックを視聴者が選ぶ番組なのだ。
コメディアンたちの聖地、アレックスシアター
 挑戦者たちがアレックスシアターにのし上がってくるまでの道のりは長かった。3週間にわたり全米8都市でオーディションツアーが開かれ、ニューヨーク、シカゴ、ボストンなどに約1万人のコメディアンたちが押し寄せた。この中からテレビ上でのコンペティション参加権を獲得できるのは、わずか40人。さらなるお笑いの試練を受けるため、ラスベガスへ招かれた彼らは、ステージ上はもちろん、時には移動中のバスの中や街のコインランドリーで急にお題を与えられ、それにちなんだ漫談をこなしてそこに居合わせた人々を笑わせなくてはならない。笑いの少なかったコミックは脱落者となり、静かに画面から消えていくのだ。
 こうしてステージに最後まで残ったコミックは、ジョン・へフロン。幼い頃からコメディアンになりたかっという筋金入りのコミックだ。自分のジョークにウケるクラスメートを見て、お笑いの素晴らしさに早くから気づいていたジョンは、コメディアンのかけこみ寺とされるコメディークラブ(連載218)の門を叩く。早く経験をつみたい一心からの行動だったが、ここでは18歳以下はステージに立つことを許されない。それでもジョンは人の集まる場面でスキルを高めるチャンスを見逃さず、13歳の誕生日パーティーで集まった人々の前で漫談を披露してみせたという。長い年月をかけ、全米一のコミックであることを証明したジョンはNBC局とタレント契約を交わし、局の看板トークショーであるジェイ・レノのレイトショーにゲスト出演が決まっている。
 余談だが、こういったコメディー一つをとっても、アメリカは移民の国なのだと思い知らされることがある。コミックのネタも人種によって変わるのだ。ジョンと最後まで競い、観客の評価も高かったアロンゾ・ボーデンは、ゲトー(スラム街のこと)に生まれたブラックであることをネタにしてジョークを飛ばすNYクイーンズ出身の黒人コミックだった。アロンゾだけでなく、黒人コメディアンはブラックアメリカンであることで経験した苦労話をネタにしてジョークにすることがほとんどだ。例えば、アメリカの高級住宅地の売り文句のひとつにGated Community(門があるので部外者が入れない安全な住宅街)というのがあるのだが、彼らはこれをjail(塀に囲まれた刑務所)と皮肉って言ってみたりする。黒人の感覚からすると、塀に囲まれた場所はみな刑務所、というわけだ。ちなみに前シーズンのベストコミックに選ばれたダット・ファンはベトナム系アメリカ人だったのだが、アジア系移民の訛りを真似てみたり、超B級カンフー映画のシーンで使われるセリフを並べてみたり、彼もやはりアジアンであることをネタにして笑いをとっていた。

 来シーズンの「ラスト・コミック・スタンディング」は早くも今月末にスタート。次なるコミックはどんなネタを披露してくれるだろうか?
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