TEXT BY 尾崎佳加

 スターよ、永遠に安らかに… ハリウッド墓石めぐり

8月も終わり、暦は暑さだけを残して秋に変わろうとしています。お盆休みに羽を伸ばした方も多いと思いますが、お墓参りは行かれましたか? ハリウッドにはお盆の週間はありませんが、日本の行事にあやかって往年のスターの霊を癒しに行ってきました。

サイレント時代からハリウッドの歴史を築き上げた往年のスターたち。夢にまでみたハリウッドでの成功を掴んだ彼らの多くは、栄光を掴んだこの地に骨を埋めたいと思うのだろうか。ハリウッドの周辺には多くのスターが眠る墓地が点在している。


■ハリウッド・フォーエバー・セメタリー(旧名:ハリウッド・メモリアル・パーク)
6000 Santa Monica Blvd. Hollywood, CA.
 フォーエバー・セメタリーがあるのはハリウッドの中心よりやや南のエリア。この辺りはラテン系アメリカ人居住区として知られるあまり治安の良くない場所なのだが、このセメタリーに一歩足を踏み入れて驚くなかれ。天国と見まごうような安らかなエデンが広がっているのだ。この平安な墓地に眠っているのは「銀幕の恋人」と親しまれたルドルフ・バレンチノ(連載197)チャーリー・チャップリンの息子で俳優のチャーリー・チャップリン・ジュニア、映画史上初のプレミア試写作品『ロビンフッド』('22)のスター、ダグラス・フェアバンクス(連載212)たち。広い庭園でお目当てのスターがどこにいるか迷ったら、案内所やガイドにたずねよう。彼らはどこにどのスターが眠っているか地図を見なくても覚えている。

美しい庭園かと思うようなハリウッド・フォーエバー墓地。
ダグラス・フェアバンクスを始め、多くのスターが眠る。


■ピアス・ブラザーズ・ウエストウッド・メモリアル・パーク
1218 Glendon Ave. Westwood, CA.
 ここは高層マンションが立ち並ぶウエストウッドの一角にひっそりとたたずむ小さな墓地。住宅さながらに墓地にもセレブやVIPご用達があり、ここはビバリーヒルズの墓地バージョンみたいなもの。(噂によるとここのお墓は約250万円で買えるらしい。)メモリアルパーク内でも、立地条件や大スターの集まる場所だとそれ相当の値段になるらしく、マリリン・モンローのとなりに墓石を購入した、プレイボーイの創刊者ヒュー・へフナーは約900万円も費やしたそう。

 死してなお人気の高い女優、ナタリー・ウッドの墓石には最も多くの追悼者が訪れるという。『理由なき反抗』('55)でジェームス・ディーンと共演し、『ウエストサイド物語』('61)で一躍スターになったナタリー。その後も『草原の輝き』('61)、『マンハッタン物語』('63)で2度のオスカー最優秀女優賞にノミネートされるが、彼女が金のオスカー像をその手に抱くことは一度もなかった。まっしぐらにスターダムに進んでいたかのようにみえた彼女だったが、81年、夫の所有していたボートで事故に見舞われ返らぬ人となる。一転して不運な人生を辿った彼女の死を悼み、ナタリーの墓石にはいつもたくさんの花が供えられている。


■フォレスト・ローン・グレンデール
1712 S. Glendale Avenue, Glendale, CA. / (323) 254-3131
 300エーカー以上もある広大な敷地には、それこそ有名人のお墓がひしめきあっている。チャイニーズシアター創設者のシド・グルーマンを始め、名優クラーク・ゲーブル、ハンフリー・ボガート、スペンサー・トレーシー、それに映画界のみならず音楽界からサミー・デービス・ジュニア、ナット・キング・コール、果てはウォルト・ディズニーなど、挙げればキリがない。とてもじゃないけど一日では廻りきれないだろう。だが、この墓地を訪れる人々の数は年間100万人以上だという。この墓地がこれほどの人々に足を運ばせるもう一つの理由は、手入れの行き届いた美しいガーデン。観光気分で墓地を訪れるなんて、日本じゃ考えられないことだ。日本の霊園がネガティブなイメージが強いのと比べ、こちらの墓地は空間づくりを重視し、楽園と呼ぶのがぴったりな平和なになっている。なんと、ここでは結婚式もとり行われてしまうのだ。先日亡くなったばかりのレーガン元大統領もここグレンデールで挙式を挙げたうちの一人だという。結婚は人生の墓場、というから、これもある意味正しい選択かも!?

 余談だが、レーガン元大統領はハリウッドを北西に上ったシミバレーというエリアにあるレーガン・プレジデンシャル・ライブラリーに眠っている。

 ハリウッド観光の際には、華やかなスターの豪邸めぐりだけでなく、かつての大スターの眠る静かな庭園も是非尋ねて欲しい。
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