TEXT BY 尾崎佳加

 栄えある受賞? 「サムい」ハリウッドスター&「クサい」セリフ

 “ピープルズチョイス賞”に続き、“ゴールデングローブ賞”のノミネーションが発表されたハリウッド。授賞式シーズンの到来は秒読み段階だが、この時期に賞されるのはなにも優秀作品ばかりではない。こんな不名誉な賞だってちゃんと用意されているのだ。
 11月22日、ハリウッドを辛口の評論でぶった切ることで知られる映画サイト「Film Threat(www.filmthreat.com)」が恒例のランキング“Friged 50(最もサムい50人)”を発表した。ハリウッドの有名人の中から、ちょっと間違った方向で活躍してしまっているスターを選び出そうというこの名誉ある格付け、堂々の一位には『華氏911』(04)のマイケル・ムーア監督が輝いた。

 ブッシュ大統領を痛烈に批判する同作で、今年の記録的ヒットを放った同監督だけに、「サムい」呼ばわりされるなんてまさかの一言。受賞の理由はそのメッセージ性の強さゆえ、監督のエゴが作品を支配していた、ということらしい。主観的なストーリー展開に共感できなかった人々は意外に多く、大統領選が終わった今では「ムーアがあんなのを作るからケリーが負けたんだ」という声までも聞こえる始末。民主党支持者の行き場のない無念感がどっとムーア監督に押し寄せたようで、ちょっと気の毒な気がしないでもない。
 他に目立った受賞者は、ニコール・キッドマン、ハル・ベリーといったオスカー女優たち。かわいいだけで演技はパッとしないアイドル女優たち、という厳しい評価を受けた彼女たちだが、ハルに関しては「オスカー像を返却すべし」とまで言われ、ピーコもびっくりの辛口批評である。
 一方、イギリスでも今月、一般の映画ファン2000人を対象に「映画史上最もクサいセリフ」というユニークなアンケートが行われた。結果はなかなかいい所をついていて、10位内に輝いたクッサいセリフのラインアップはどれもこっ恥ずかしいものばかり。『インデペンデンス・デイ』(’96)から、「今日こそ、我らが独立記念日を祝おうじゃないですか!」(大統領のアツすぎる演説)、『ゴースト』(’90)のワンシーン、デミ・ムーアの「愛してるわ」に対するパトリック・スウェージの「同じく!」という微妙に喜びづらい返事など。
 一般人に恋する大女優を演じるジュリア・ロバーツの『ノッティングヒルの恋人』(’99)のせりふもブリッ子極まりない。「私だってただの女の子だもの。…男の子の前で愛して欲しいってお願いしてるだけの女の子…。」う~ん、これもかなりクサイせりふ。
 そして栄えある一位に選ばれたのは『タイタニック』(‘97)のレオ様のセリフ。タイタニック号が目指す目的地ニューヨークに近づき、新天地で始まる生活に思いを馳せるジャック。ローズの頭上で感極まって思わず叫んだ言葉は「この世界はオレ様のモノ!」。実際、恋人がこんなことを口走ったら「どうどう」となだめたくなるかもしれない。
 称賛ばかりでなく、辛口批判もけして忘れない欧米のエンターテイメント業界。今後もオスカーナイトの“ワースト・ドレッサー賞”や、最駄作に贈られる“ゴールデン・ラズベリー賞”などが発表を控えている。良いも悪いも正直な評価を受けるからこそ、ハリウッドはクオリティーの高さを保っているのかもしれない。これも愛情の裏返しということか。日本の業界もそろそろこういう辛口の賞を始めてみてはいかが?

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