TEXT BY 尾崎佳加

 【トレンドハリウッド】 モデルの時代は終り? ファッション界のセレブブーム

空前のセレブブームを迎えているといわれる現在のファッション界。プライベートでもパーティーでも注目を浴びる旬のセレブたちだが、その着こなしのほぼ全てが次シーズンのトレンドになってしまうというから業界への貢献度はただごとではない。
「セレブも着用!」この一文句があれば、そのブランドには問い合わせが殺到する。いわば彼女たちは歩く広告塔のような存在だ。セレブを起用した広告展開は強力な販売促進効果があり、各ブランドはモデルの代わりにハリウッドスターたちを広告に登場させるようになる。例えば、サラ・ジェシカ・パーカーをキャラクターに起用した「Gap(ギャップ)」。大ヒットドラマ『セックス・アンド・ザ・シティー』で視聴者が親近感を覚える等身大の女性を演じたパーカーのイメージをそのまま生かした販売戦略で目覚しい成功を見せたブランドの1つである。
こうして起こったセレブブームだが、考えてみると流行るのも当然のような気がする。というのも、誌面やステージ上でしか素顔を垣間見ることのできないモデルよりも、テレビや映画で様々な表情を見せるスターたちの方がよほど親近感がわくからだ。プロダクト・プレースメント的効果とまではいかないが、視聴者がイメージを抱きやすいキャラクターが着用することで、そのファッションがもっと身近に感じられるのだ。
セレブもお買い物に訪れるロデオドライブ
これにはイタリアのメゾンやフランスのハイブランドも敏感に反応を示している。「Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)」は数年前よりジェニファー・ロペス、ユマ・サーマンと旬のセレブを起用したキャンペーンを開始。「Chanel(シャネル)」はニコール・キッドマンを、宝飾老舗「Damiani(ダミアーニ)」もグイネス・パルトローをニューフェイスに迎え、洗練された女性という印象の女優でエレガントなブランドイメージの展開を図る。モデルたちがファッションの手本だったのは過去の話になりつつあるのだ。
ところで、気になるのはセレブたちの契約料。映画1本で十数億ドル稼ぐ彼女たちだから、当然各ブランドとの契約料もモデルに比べてケタが違うのではないだろうか。調べたところ、「Dior(ディオール)」の香水のイメージキャラクターとしてサインを交わしたシャーリーズ・セロンのギャラは3年間で約5億円。「Chanel」がキッドマンと交わした契約が約10億円と言われているのに比べるとわりと小額。コスメティック大手「L’Oreal(ロレアル)」は先日エヴァ・ロンゴリア(人気テレビシリーズ『デスパレート ハウスワイブス』の女優)を約2億円で迎えたことで話題になったが、同社とビヨンセが結んだ額(5年間で約5億円)には及ばず、セレブとしての格差を見せつけられる結果となった。ちなみにこの契約年数は、ブランドイメージを損なわないようヘアスタイルなどを変える度にブランドの許可を得る必要がある期間のこと。撮影やキャンペーン活動などに及ぶ実働日数はこの間、わずか数日だという。
余談だが、ハリウッドのスターはめったにテレビのコマーシャルに出演しない。映画よりも契約金が少ない仕事をすることが「落ち目」の俳優というイメージにつながるからだそうだ。だがこの広告出演のネガティブなイメージを一層するようなバブリーなセレブブームに押され、今後彼らが活躍の幅を広げてくれることに期待したい。
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