TEXT BY フィーチャープレス 岩下慶一

 ゲームの祭典E3。ゲームと映画の不思議な関係とは?
ジャガランダの花が咲き乱れ、5月というのにすっかり夏の気候となったロサンゼルス。今年も恒例となった世界最大のゲーム見本市、E3「Electronic Entertainment Expo 2005」が行われた。おなじみのソニープレイステーションからニンテンドーの次世代モデル、そしてマイクロソフトの最新モデル、Xbox360が発表され、例年にない盛り上がり。3日間の開催期間中、会場は世界中から集まったゲーム関係者やマスコミで賑わい…。え? 映画情報なのにどうしてゲームの話なのかって? 実は、ハリウッドムービーとゲームは、今やとても深い関係にあるのだ。
会場となったLAコンベンションセンター
映画とゲーム、と聞いてまず思い浮かぶのは、アンジェリーナ・ジョリー主演で話題になった『トゥームレイダー』。米国で大ヒットしたシューティングゲーム「トゥームレイダー」の人気が非常に高いので、こいつを元に映画を作ってみたらこれがまた大当たり。続編『トゥームレイダー2』まで作られる程の人気を呼んだ。映画の内容は、個人的には??だったけれど、何はともあれゲームの映画化、という新しい分野が登場した。もう一つ、ゲーム会社のスクエアが作った『ファイナルファンタジー』というのもあった。こちらはコンピュータアニメだったけれど。
ゲームがヒット→映画という流れのうまみは、ゲームファンをそのまま映画館に引っ張れることだ。『トゥームレイダー』の場合、最初は熱狂的なゲームフリークたちに支持され、更に映画自体の出来も良かったから、一般客もひきつけてアンジェリーナ・ジョリーの代表作になってしまった。
これとは逆に最近多いのは、大ヒット映画をゲームタイトルにする動き。大手ゲームメーカーのエレクトリックアーツは、今回のE3でハリウッド映画のゲーム版タイトルをいくつか出展した。まず、『007ロシアより愛をこめて』。ショーン・コネリーの007がロールプレイングゲームで楽しめる。007ファンならちょっとやってみたくなるゲームだ。そしておなじみ『ハリーポッター』。映画でおなじみのキャラクターが次々登場し、話が進んでいくシューティングゲームだ。
『007ロシアより愛をこめて』のゲーム
この2作品はもともとアクションも満載の映画なのでゲーム化されるのも頷けるが、更にマニアックなのは『ゴッドファーザー・パート1』のゲーム化だ。映画の歴史に残るシリアスドラマを一体どういう風にゲーム化したのか詳細は不明だが、『ゴッドファーザー』のストーリーがそのままロールプレイングになった作品らしい。プレイヤーはその場その場で的確な判断を下しながら敵を倒し、組織を拡大していく。登場するキャラも、マーロン・ブランドの大ボスをはじめ、おなじみの人々ばかり。『ゴッドファーザー』の大ファンの筆者としては、ちょっと複雑な思いもあるが、確かに興味をそそられる。
映画とゲームのリンクがこれほど盛んになってきたのは、ひとえに最近のゲームマシンの進歩のおかげ。これから発売されるプレイステーション3、Xbox360等の性能の進化はすさまじく、限りなく実写に近い映像まで再生が可能になった。少し前の「いかにもアニメ」という映像しか知らなかった筆者は、あまりのリアルさにぶっ飛んでしまった。これだけの映像処理は、今までのゲーム製作会社だけでは不足で、ハリウッドの映画製作のノウハウを借りることになったのも自然のなりゆきだろう。逆に、映画会社の方もこれだけオイシイ市場をほうっておくわけもなく、ウォルトディズニーや、『スターウォーズエピソード3』で全米の話題を総ざらいのルーカスフィルムも競ってタイトルを出品している。「まるで映画の品評会のようだ」とコメントした新聞記者も。
ルーカスアーツの参考出品
さて、こうなってくると、将来的には映画とゲームが完全にリンクした「インタラクティブ映画」の未来が見えてくる。視聴者参加型で、結末も複数存在するというロールプレイング映画だ。実際、テレビドラマでは視聴者のアンケートを反映したストーリー展開をする作品も登場している。映画とゲームの垣根はどんどん小さくなり、まったく新しいエンタテインメントが登場するのもそう遠い日ではないかも知れない。観る映画から参加する映画へ。ハリウッドはますます進化し続ける
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