TEXT BY 尾崎佳加

 「Live8」で白熱する、アフリカ救済運動の新スローガン
7月2日、東京を皮切りに世界で同時開催された「Live 8(ライブ 8)」。G8の集う主要国首脳会議に合わせ、ロンドン、フィラデルフィア、パリ、ローマ、トロント、ヨハネスブルグ、ベルリンの9都市がアフリカ貧困撲滅コンサートの会場となった。「We are not looking for charity, we are looking for justice. (求めているのはチャリティーじゃない。正義なんだ)」―U2ボノの呼びかけに会場が沸き、歓声で応える。ある者は携帯電話を取り出し、電波を通じてその場にいない友人にもこの呼びかけを広める。
「Live 8」は、ハリウッドの大型液晶モニターで中継された。映像を見て盛り上がる人々。
「Fromハリウッド」ではこれまでも何度かセレブリティーの慈善活動を採り上げてきたが、「Live 8」のあおりでアフリカの深刻な貧困問題を重視する業界人はますます目立ち始めた。ユアン・マクレガーはUNICEFがG8サミットにあわせて開催する若年層のフォーラム「The C8 Children's Forum」の開幕に立会い、子どもたちの意見こそ尊重しなければならないと訴えた。ブラッド・ピットはテレビ番組のインタビューで貧困国への支援拡大を訴え、12万人以上の署名を集めた。
「Live 8」が掲げるスローガンは、貧困国が背負っている借金を帳消しにすること、支援の増加、そして公正な通商ルールを制定することの3つ。今までの支援金を募るだけの救済運動とはまったく異なる、具体的な支援なのだ。このモットーには1985年、同じくアフリカ救済目的で開催されたコンサート「ライブ・エイド」での失敗を踏まえてのものだ。失敗といっても、ライブ・エイドは1億ドルの支援金を収益し、大盛況を極めたという点では成功だったのだが、あれから20年経った今でもアフリカは依然深刻な貧困に喘いでいる。恵みや慈善行為だけでは改善されない、国の財政機能を向上させることが重要なのだ。
「ライブ・エイド」にも参加し、「Live 8」でも中心的主導者として活動したU2のボノは「メイク・ポバティー・ヒストリー」や他の貧困撲滅運動でも広くこのスローガンを提示している。自ら立ち上げたアパレルブランド「Edun(エデン/エダン)」では発展途上国で繊維を生産、現地の人々を雇用するなど、彼らが自らを救済する画期的な新ビジネス形態を構築した。貧困国が真に必要とするのは援助ではなく公平な待遇なのだ。
2005年、「Live 8」を経てチャリティーの概念は今後大きく変化していくだろう。慈善運動を否定するわけではないが、救済を求める側の真の要求を理解しないまま活動しているチャリティー団体は、残念ながら少なくない。我々ができることは非常にシンプルなこと、彼らの声を聞くことだ。
「Live 8」は6日、G8サミット開催地スコットランドの中心都市エディンバラで幕を閉じた。
●アフリカ貧困撲滅関連サイト
・Make Poverty History(イギリスhttp://www.makepovertyhistory.org/
・One(アメリカ)http://www.one.org/
・ほっとけない 世界のまずしさ(日本)http://www.hottokenai.jp/
・DATA(イギリス)http://www.data.org/
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