TEXT BY 波多野尚志

 ハリウッドを騒がす疑惑の眼差し

以前この連載でも取り上げたABCの人気番組「EXTREME MAKE OVER(過激なお直し、とでも訳しますか)」。素人の男女を登場させ、現代の整形技術や化粧を駆使してまったく別人に作り変えるという、文字通り“EXTREME(過激)”な番組である。日本でも類似の番組があるけれど、その変身ぶりの凄さはみなさんご承知の通り。
今や一般人にまで普及したプラスティックサージャリーだが、美が売り物のハリウッドではどうなのだろうか。普通に考えても利用していないワケがないと思うが、そこはやっぱり世界に夢を振りまくハリウッド。こういう話題はやっぱりタブーなのだ。以前、デミ・ムーアが『チャーリーズ・エンジェル2』に出演したとき、殆ど頭から足まで4800万円(!)で全身整形をやってのけたという話があったけれど、そこまでは別として、まあ大なり小なり皆さんお世話になっているらしい。
最近創刊されたゴシップ雑誌「IN TOUCH」は、競争の激しいエンタメ雑誌業界で生き残るには少々過激に行こうという理由から、かなりおおっぴらなハリウッドの整形疑惑特集を行った。まず槍玉にあがったのが、今アメリカでもっともホットな女性のジェシカ・シンプソン。ビキニ姿の刺激的なそのプロモビデオが話題になっているのだが、同誌では、「なんでジェシカのバストサイズは変わり続けるのか」というタイトルで、2003年と2004年の彼女の胸元の写真を並べて疑惑を追及している。これに対して「あれはプッシュアップブラを使っているだけ」というジェシカを擁護する医者の証言まで飛び出して、ホンモノニセモノ論争は更なる泥沼に。もちろん彼女自身は「私の胸は正真正銘のホンモノ」と言い切っている。ジム通いで徹底的にシェイプアップした結果だそうで、根も葉もない事を言われるのは心外、と怒りのコメント。
ジェシカに対する疑惑特集は更に続き、鼻の形が違う、唇が厚くなった、あごも昔に比べて形が違うなどなど、今と昔の写真を並べてしつこく追求されている。しかし、どれもこれも言われてみればそんな気も…というレベルの話ばかりで、こういうことでいちいち騒ぎ立てられるセレブも楽じゃない。
この他にも偽バストの疑惑特集に取り上げられてしまったセレブは、ドリュー・バリモア、カーメン・エレクトラ、パメラ・アンダーソンなど。とくにパメラの場合は今さら言わなくても誰もが知ってる偽バストの元祖。今やハリウッドはホンモノニセモノが入り乱れ、何がなんだか訳がわからない状態だ。
こういう中で、プラスティックサージャリーを肯定するセレブも多い。『ロスト・イン・トランスレーション』でビル・マーレイと競演したスカーレット・ヨハンソンは、「年を取って無様になるより皺とりする方がいいわ」と開き直っているし、ジェニファー・アニストンも「全然悪くないと思うわ。やり過ぎは嫌だけどね」と積極的なコメント。熟年の女優は殆どが皺伸ばしの手術を受けているという証言もあり、最近ではまったくお世話になっていないセレブの方が珍しいという声も。
ハリウッドスター御用達(?)の病院、ビバリーヒルズのシーダーズ・サイナイホスピタル
かつては選びぬかれた美男美女の世界だったハリウッド。最近では、ルックスは生まれ持ったもの、という考え方から、あくまで素材として作り変えていくもの、という方向に変わってきているのは確かなようだ。
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