TEXT BY 尾崎佳加

 見るだけはもう物足りない? 「アラモ」のリアル・リアリティーショー

アメリカのテレビ枠のほとんどを占める視聴者参加型番組。あらゆるテーマに挑戦する市民の姿を見ていると、参加意欲を掻き立てられる人も多いのだろうか。ちまたでは今、リアル・リアリティーショーが流行りの兆しを見せている。
旅する巨大移動シアターで話題になった「ALAMO DRAFTHOUSE(アラモ・ドラフトハウス)」(連載272)がまた新しい遊びを見つけたようだ。彼らが今夢中になっているのはカラオケならぬ『VIDEOKE(ビデオケ)』なるもの。映画のワンシーンを見ながらアフレコに挑戦する観客参加型の映画鑑賞会である。
挑戦者はステージでお気に入りの映画シーンをリクエストし、スクリーンに映し出されたシーンの字幕を俳優になりきって読み上げる。挑戦できる映画クリップはオフィシャルサイトで公開されているので、参加者は家でゆっくり練習することができる。ステージに立った彼らの中には俳優志望なのか役になりきって叫ぶ人や、一人二役でセリフを担当して大忙しな人もいてかなり笑える。優秀なパフォーマーにはプライズが与えられるので、挑戦者はますます芸に磨きがかかるのだ。
ロッキーホラーピクチャーショーの一場面。
映画に併せてライブの演技が行われる
単なる地元のカラオケ大会と言われればそれまでだが、ビデオケは週末ごとに開催される立派なコンテスト。公開審査で観客の前で挑戦者を批評する点はアメリカン・アイドルさながらだ。テレビのリアリティーショーとは規模が違うかもしれないが、こちらはやらせナシまったナシのリアルなバラエティーショー。これをリアル・リアリティーショーと呼ばずになんと呼ぼう。
リアル・リアリティーショーの元祖といえば、やっぱり『ROCKY HORROR PICTURE SHOW(ロッキー・ホラー・ショー)』だろうか。30年前、ロンドンで生まれた奇怪なこのミュージカルは、支離滅裂なストーリーに魅せられたファンの間で今も熱烈な支持を得ている。スーザン・サランドンが出演する映画版も、コアなリピーターたちに支えられて定期的に上映されているが、客席で大人しく鑑賞するなんてことは、まず許されない。観客は登場人物と同じコスチュームにメイクアップでやって来る。空で言えるほどに覚えたセリフを合唱し、お決まりのシーンでヤジを飛ばす。乱痴気騒ぎの場面では登場人物と一緒になって叫び、あたかも映画の中のパーティーに参加しているかのようにはしゃぐのだ。ロサンゼルス、シカゴ、ニューヨークその他、全米の各地で今も毎週行われている。(詳しくは www.rockyhorror.com参照)
アラモはこんな映画の世界の飛び込むようなリアル・リアリティーショーが得意分野らしい。ハロウィンに一番の盛り上がりを見せる『ロッキー~』の上映はもちろんのこと、今月はプロム(卒業ダンスパーティー)がテーマの映画『THE WORLDS BEST PROM(ザ・ワールド・ベスト・プロム)』の鑑賞会を開き、青春時代のトキメキを思い出したいという社会人向けに大プロムパーティーを開催する予定。また、コメディアングループを招いた「THE SINUS SHOW(ザ・サイナス・ショー)」では、参加者1人ずつにお気に入りの映画DVDを持参することを義務づけ、その中から選ばれた1本をパロディーにした即興喜劇ライブも開催する。テキサスのユニバーサルスタジオと言っても過言ではない、何かと目の離せないシアターなのである。
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