TEXT BY 尾崎佳加

 あなたの夢、叶えましょう ドリカム型リアリティーショー

華やかなスター発掘系の番組では、いつも輝かしい才能を目にするばかりではない。
「香港のリッキー・マーティン」との異名をもつウィリアム・ハン。『アメリカン・アイドル』の地区予選で「シィバ~ン!シィバ~ン!」とノリノリに歌い上げた彼のパフォーマンスは、歌唱力はさておきその強烈な個性で全米を席巻し、才能とは必ずしも「上手い」だけではないと証明した。そして、彼が開いた扉にドリーマーたちは光を見出し、一縷の望みを抱いてスターダムを目指し始めた。
VH1の『But Can They Sing?(バット・キャン・ゼイ・シング)』は、第2のウィリアム・ハンを発掘するために企画された番組。『But Can They Sing?』は、オンチも愛嬌とばかりに全国のどこか「ズレた」挑戦者がユニークなパフォーマンスを競う異色のリアリティーショーだ。
自信をみなぎらせて舞台を駆け巡る彼らが発するオーラは、スーパースターのそれである。少なくともミュートで画面を見ている限りは。音をはずしても視線に情熱を宿したまま観客を見つめ、テンポがずれても変則リズムかと思わせるほどの歌い上げが観客のリズム感を狂わせる。審査員の口から「最低のパフォーマンスだ!」などという発言が飛び出しても、会場は暖かい声援と笑いに満ちている。こんなに大らかで夢のあるショーがかつてあっただろうか。
もう一つ、夢のある番組といえばNBCの『Three Wishes(スリー・ウィッシュ)』を忘れてはいけない。この番組は、エピソードごとに3人の視聴者を募集し、それぞれの願いを叶えようというドリカム型リアリティーショー。番組に寄せられる願いは様々で、チアリーダーを目指す娘の特集番組をつくってあげて!という母の微笑ましい依頼もあれば、6000冊のコレクションをもつ読書家の少女の、図書館を建てて街のみんなで本をシェアしたいという大掛かりな夢もある。
ある学校のコーラス部の生徒は、彼らを指導する音楽教師のことで番組に応募した。彼らが愛するその音楽教師は一年前、突然7割の聴力を失った。以来、音声送信機などを通じて授業をすすめてきたが、教師はもちろん、生徒にとってもコミュニケーションは困難で忍耐のいるものだった。生徒たちの願いは、彼女が職を失うことのないように、なるべく昔に近い環境で音楽を教えることができる環境を作ってもらう事だった。 番組は彼女たちの想いに応えるべく、総力を挙げる。教師の家に、電話やインターホンが鳴ると点灯するライトを設置し、音楽室をつくる。送信機よりも高度な会話のできる最新補聴器をプレゼントし、大手携帯電話会社スプリントも直接会話のできる特殊な携帯電話を提供した。番組と応募者と視聴者がまさに一体となり、生徒たちの願いを叶えたのだ。
リアリティーショーは、テレビと視聴者の距離を着実に縮めた。テレビはかつてのような「選ばれた者」だけが出演する媒体ではなくなりつつある。ショーの内容が身近であるほど視聴者の関心は大きいのだ。
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