TEXT BY 堂本かおる(フリーライター)

 第3回ラティーノ・フィルム・フェスティバル
 ニューヨークでは最多数派のマイノリティとなったラティーノ。彼らがそのアイデンティティを投影したユニークな作品を公開する第3回ラティーノ・フィルム・フェスティバルが開催された。その模様をお伝えしよう!

 今年で第3回目となるラティーノ・フィルム・フェスティバルが7月30日から8月4日にかけて、いずれもマンハッタン59丁目のイーストサイドにあるクリアビュー・シネマとライトハウス・インターナショナルの2ヶ所で開催された。今回はプレミア4本、アメリカ国内作品6本、外国作品6本、ドキュメンタリー10本、ショート・フィルム26本の充実したラインナップとなった。

 ラティーノとは、プエルトリコ、ドミニカ共和国、メキシコなどカリブ海/中南米のスペイン語圏出身者のこと。ニューヨークにも移民として大量に移住しているが、経済的、社会的にはまだまだ苦しい立場にある。そんな中、映画を通して自分たちの存在とカルチャーを表現しようとする若いラティーノ・アーティストたちの意欲ある作品を一挙に公開するのが、このラティーノ・フィルム・フェスティバルだ。
上映開始を待つ観客の列。
その多くはラティーノ
 プレミア上映されたのは、ロバート・ロドリゲス監督の『スパイ・キッズ2 失われた夢の島』(02)で、これは昨年大ヒットした子供向けアドベンチャーの続編。他のプレミア作品は、ジョン・レグイザモがニューヨークのサウス・ブロンクス(プエルトリコ系が多く住む地区)のギャングを演じる『Empire』、ラティーノ・ラッパーとして初のプラチナ・アルバムを獲得しながら、体重過多により一昨年に亡くなったビッグ・パンの伝記映画『Still Not A Player』、ニューヨークのワシントン・ハイツ(ドミニカ共和国からの移民が住むエリア)に暮らす兄弟を描いた『Manito』の3本。

『Manito』は、今年のサンダンス・フィルム・フェスティバル、トライベッカ・フィルム・フェスティバルで既に高い評価を得ており、今回もソールドアウトとなった。一般国内作品も、『Washington Heights』、『All Night Bodega』など、ニューヨークのラティーノ・コミュニティで生まれ育った若者たちの葛藤を描いた作品が好評を得た。
スパニッシュ・ハーレムの少女を主人公にした作品のフライヤー。
Bodegaとは食料品店のこと
 ところでハリウッド映画では、ラティーノ俳優はいまだに良い役を得ることが難しい。キャスティング側にラティーノに対するステレオタイプ化されたイメージがあるためだ。今回のフェスティバルでは、それに抵抗するメッセージが、各作品の上映前にスクリーンに流された。一見、本物の映画のエンドロールに見えるように作られている。“強盗”“売春婦”“殺人者”“十代の妊婦”といった役名が並び、それらを演じる俳優の名前がすべてラティーノ。最後に、こんな役はもうごめんだ、といった趣旨のメッセージが表れると、観客席から大きな拍手が起こった。
フェスティバルの主旨を熱心に語ってくれたスタッフ。3人ともプエルトリコ系
 実は今回のフェスティバルでも、ラティーノ・ギャングが登場したり、貧困や暴力から逃れられない若者を描いた作品も多かった。しかし、それらは自身もラティーノである監督によってリアルに描写されており、こういった作品群は、1990年代前半の一連のブラックムービーを思い起こさせた。黒人監督たちもまた、その初期には自分たちのコミュニティを赤裸々に描くことで、ブラックムービー・シーンの基礎を固めたのだ。

その一方で、今回のラインナップには、ヒップホップ世代のデジタル・アニメ作品、ゲイをテーマにしたもの、ニューヨークのビレッジを舞台にした恋愛ものなど、さまざまな作品が揃い、ラティーノ・ムービーも通り一遍ではないことを示した。今回のフェスティバルは、今後のニューヨーク・ラティーノ・ムービー・シーンのさらなる盛り上がりを予感させて終了した。
フェステバルのロゴ


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