TEXT BY 堂本かおる(フリーライター)

 エスニック・シティNY アフリカンーアメリカン/ハーレム編

 ニューヨークを舞台にしたブラック・ムービーは無数にある。マンハッタンはもちろんのこと、ブルックリンやブロンクスを舞台にしたものもあれば、登場するアクターやキャラクターもアフリカンーアメリカンが圧倒的に多いとはいえ、カリビアンやアフリカンもいる。今回は数ある作品の中から、ニューヨーク・マンハッタンの黒人地区ハーレムを舞台にした映画を紹介しよう。
 現在、ニューヨーク市の全人口800万人に占める黒人の比率は25%。つまり全ニューヨーカーの実に4人に1人が黒人だということ。そのうちの約10万人がマンハッタン北部に位置するハーレムに暮らしている。その昔、ハーレムは農場地帯だったが、1800年代後半に地下鉄が開通すると瞬く間に建築ラッシュが起こり、裕福な白人が暮らし始めた。ところが過剰開発によって後に家賃が暴落。そこへちょうど南部諸州から東海岸への大移動を始めていた黒人たちが流入し、1920年頃には現在のような黒人地区となった。
かつては大いに栄えたルネッサンス・ボールルーム。
現在は閉鎖されている
 ハーレムが黒人街となるやいなや、そこに住む黒人アーティストによる文学、ジャズ、絵画が一大ブームとなり、この時期は“ハーレム・ルネッサンス”と呼ばれることとなった。この時代に大いに名を馳せた実在のジャズ・クラブと、それを取り巻くミュージシャンやギャングを描いた作品がフランシス・コッポラ監督、リチャード・ギア、グレゴリー・ハインズ出演の『コットン・クラブ』('84)だ。人種差別の激しかった当時は、たとえハーレムのクラブであっても黒人はミュージシャンやダンサーとして出演するのみで、観客としては入れなかったという。
 他にこの時期のハーレムを描いた作品には、アンディ・ガルシア、ローレンス・フィッシュバーン出演の『奴らに深き眠りを』('97)、エディ・マーフィが監督と主演を努めた『ハーレム・ナイト』('89)があるが、共にギャングもの。『奴らに深き眠りを』のビル・デューク監督はNY郊外出身のアフリカンーアメリカンで、ハーレムのギャングによほどの愛着があると見え、後には1950年代のハーレムを舞台にしたギャングもの『レイジ・イン・ハーレム』('91)も手掛けている。これらはすべて過去のハーレムをノスタルジックに描いた作品で、実際に作られたのは1980~90年代。
アポロ・シアターで上演中の『ハーレム・ソング』は
かつての華やかなりしハーレムを描いたミュージカル
それ以前の1970年代にはB級黒人アクション映画“ブラックスプロイテーション”のブームが全米で巻き起こっており、『ハーレム街の首領』('73)、『The Guy from Harlem』('77)など、ハーレムを舞台にした作品も作られた。異色作はスパイク・リー監督の作品に多数出演している俳優オシー・デイビスが初監督した『ロールスロイスに銀の銃』('70)、アンソニー・クイン、ヤフェット・コット主演の白人黒人の刑事コンビによる本格犯罪ドラマ『110番街交差点』('72)の2本。いずれも30年近くも昔のハーレムの姿を楽しむことができる。(次回に続く)


■以下はハーレム出身のアクターたち
■ヴィン・レイムス…『ベイビー・ボーイ』(01)『ミッション・インポッシブル』(96)『アウト・オブ・サイト』(98)
■ショーン・コムズ(P・ディディ)…『Made』(01)『チョコレート』(01)
■DMX…『DENGEKI 電撃』(01)『ロミオ・マスト・ダイ』(00)
■シシリー・タイソン…『奴らに深き眠りを』('97)『フライド・グリーン・トマト』('91)『ルーツ』('77)
■ハリー・ベラフォンテ…『カンザス・シティ』('96)『ジャンクション』('95)『カルメン・ジョーンズ』('54)
■サミー・デイビスJr.…『タップ』('89)『キャノンボール』('81)『オーシャンと十一人の仲間』('60)
映画の背景にもよく登場するハーレムの
教会は大小300以上ある


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