TEXT BY 堂本かおる(フリーライター)

 テレビ&ラジオ博物館

 映画と共にアメリカの3大エンターテインメントを成しているのがテレビとラジオ。実は映画よりもダイレクトにアメリカ社会を反映しているのがテレビ番組だ。その創生期から現在に至るまでの番組を網羅しているテレビ&ラジオ博物館をリポート!
 日本では今年2月1日でテレビ放映50周年を迎えたが、欧米のテレビの歴史は日本よりも早くから始まっていた。現在のテレビの原型となった電化式テレビジョンが開発されたのが1927年。翌28年にはニューヨークで初のニュース番組が放映されたが、これはテスト放送に留まっていた。35年に世界で初めての一般放送を開始したのはドイツ。翌年のベルリン・オリンピック放映は、テレビ創生期のもっとも重要な“番組”として記憶されている。

 しかし、アメリカのテレビ番組は他のどの国のものよりもエンターテインメント性が求められ、なおかつ世相を写し出す鑑にもなっている。そんなアメリカのテレビ番組およびラジオ番組の歴史を集約しているのが、52丁目と5番街の角近くにある白亜の瀟洒なビル、テレビ&ラジオ博物館だ。地階から5階まで、こじんまりとした各フロアには小さなシアターや、過去の番組のリサーチができるコンピュータ室などがあり、展示物をただ眺めるだけではなく“使える博物館”の感が強い。
テレビ&ラジオ博物館
隣は有名な高級レストラン21Club
 この博物館のいちばんの自慢は、46台ものマックを据えたリサーチ・ライブラリー。ここで過去の膨大な数のテレビ番組、ラジオ番組を検索し、モニターがズラリと並ぶ視聴室やラジオ専門のリスニング・ルームで選んだ番組を視聴。番組次第でノスタルジックな1940年代、ベトナム戦争&ヒッピー・ムーブメントの1960年代、物質主義の1980年代など、アメリカが通過してきたそれぞれの“時代”を知ることができる。
 館内には90席と200席のシアターがあり、ここでは常に過去の貴重なテレビ番組のスクリーニングが行われている。今なら、かつて日本でもトリスのCMに出演していた国民的エンターテイナー、サミー・デイビス Jr.のテレビ出演シーンを編集した90分の作品。若かりし頃のエリザベス・テイラーや、コミカルに歌って踊るジュディ・ガーランドも登場する。

 また毎年2月は「黒人史月間」であることから、スパイク・リー監督が黒人急進派団体ブラックパンサー党のリーダーの半生を描いたテレビ映画『ヒューイ・P・ニュートン物語』(01)も上映中。
いつも過去のテレビ番組が流されている
 他には、この美術館がオフィス街にあることから企画されたランチライムの上映会もある。毎週水曜日の昼12時45分から25分間のショート・フィルムを上映。パンフレットに付いているクーポン券を持って近くのカフェでランチを食べれば、クッキーがもらえるというかわいいオマケ付きだ。
 各階の廊下には小さな展示スペースがある。5階には、モービル石油がスポンサーだったミステリー・ドラマ・シリーズ“モービル・マスターピース・シアター”のポスターが貼ってあり、壁に埋め込まれた12個のテレビ・モニターではその番組が流されている。1階のロビーでは、D.G.A.(Director Guild of America)によって選ばれた監督の代表作のスティール写真を展示中。アンドリュー・L・ストーン監督『最後の航海』('60)、ジェリー・ロンドン監督『将軍』('80)、ジョン・ハーツフェルド監督『ドン・キング』('90)など、いずれもひとくせある作品が並んでいる。1階にはミュージアム・ストアもあり、古いTVガイドや、テレビ&ラジオ関連のノベルティ・グッズを眺めるのも楽しい。

 このテレビ&ラジオ博物館は、たった10ドルの入場料でアメリカの過去75年間を振り返ることが出来る貴重なスポット。まる一日を過ごしても飽きないこと間違いなし。
現在スクリーニング中の番組プログラム
The Museum of Television & Radio
25 W. 52nd St. (bet. 5th & 6th Aves)
Tel: (212) 621-6800
■テレビ&ラジオ博物館オフィシャル・サイト> http://www.mtr.org/


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