TEXT BY 堂本かおる(フリーライター)

 映画に登場した場所を訪ねて~Part15 マディソン・スクエア・ガーデン

 アメリカ現地時間の2月23日に、マディソン・スクエア・ガーデンで音楽の祭典、第45回グラミー賞が開催された。今回はこの通称MSGの興味深い歴史と、ここを舞台とした映画をご紹介!
 マディソン・スクエア・ガーデンはマンハッタンの7番街と8番街の間、31丁目から33丁目まで、まるまる2ブロックを占める巨大なスポーツアリーナ。バスケットボールのニューヨーク・ニックスと、アイスホッケーのニューヨーク・レンジャースのホームとして知られており、他にも大物ボクサーのタイトル戦や、プロレスWWFの試合なども行われている。

 その一方で1960年代後半より現在に至るまで、エルビス・プレスリー、ローリング・ストーンズ、マイケル・ジャクソン、ブルース・スプリングスティーンといった大物ミュージシャンのコンサート会場ともなっている。
8番街から眺めるMSG
 なお、昭和40年代に日本で大流行した、“Madison Square Garden”のロゴが入った“マジソン・バッグ”は日本のカバン会社が製造販売したもので、アメリカでは売られていない。
 現在のMSGの建物は、実は“ガーデン4”と呼ばれる四代目。初代MSGは1874年に見せ物興業の専用館として、マディソン・アベニューの26丁目に建てられた。出し物は馬車レース、ワルツを踊る象、火吹き男などだったそうだ。それが1879年にマディソン・スクエア・ガーデンと改名された。もちろん、マディソン・アベニューに建っていたことが命名の理由。

 その後いったん取り壊され、1890年に同じ場所に再建されたMSGは“ガーデン2”と呼ばれた。 ところが保険会社がここに自社ビルを建てる計画を立てたため、このガーデン2も取り壊され、1925年に8番街のトロリー・バス倉庫跡地に三代目が建てられた。マディソン・アベニューを離れたものの、やはりマディソン・スクエア・ガーデンの名称を引き継ぎ、“ガーデン3”と呼ばれた。
MSG構内にあるニックスとレンジャーズの公認ストア
 そして1968年、今度は現在の場所に引越再建され、現在に至るまでマンハッタン内唯一のアリーナとしてニューヨーカーに愛され続けている。ところが、この場所には、かつては旧ペンシルバニア駅(通称ペン・ステーション)が建っていた。建築史上に残るボザール様式の壮麗な外観を持つ同駅をガーデン4のために取り壊したことは、ニューヨーク都市計画上のもっとも大きな過ちとして、現在に至るまで語り継がれている。ペン・ステーションは現在MSGの地下にあるが、MSGと隣接し、旧ペン・ステーションと同様に壮麗で広大な現中央郵便局に移動することが決まっている。
 さて、このMSGだが、マンハッタンのランドマークとして数々のアクション/SF映画に登場する。『スパイダーマン』(02)でのゴブリンとの対決シーンは記憶に新しいし、『ゴジラ』('98)では、ゴジラにタマゴを産み落とされてしまう。さらに、デンゼル・ワシントン、ブル-ス・ウィリスの『マーシャル・ロー』('88) では、テロリストに爆破されている。

 しかし、ウーピー・ゴールドバーグが、ひょんなことからニューヨーク・ニックスのコーチになってしまう『エディー勝利の天使』('96)ではアリーナ内を存分に見ることが出来るし、デニス・ロッドマン、リック・フォックスなどNBAスターもカメオ出演している。
MSG入り口。一昨年より警備も厳しくなっている
 最新作では、現在アメリカで公開中のロマンティック・コメディ『ハウ・トゥ・ルーズ・ア・ガイ 10デイズ』がある。ケイト・ハドソン演じるファッション雑誌の編集者と、マシュー・マコノヒー演じる広告代理店勤務のやり手エージェントが、それぞれ仕事絡みで10日間デートを重ねるというストーリー。揃ってバスケットボール・ファンのふたりはMSGでのニックス戦にエキサイトする。

 これらは全て、現在のガーデン4を舞台としているが、ミロス・フォアマン監督の『ラグライム』('81)は、ガーデン3の設計者がMSG内で殺害された1906年の実話に基づいた作品。

 ミステリアスな殺人劇からマジソン・バッグまで、その背景に意外な歴史を持つMSG。次回スクリーンで見かけた時には、その歴史にちょっと思いを馳せてみては。
2月7日付ボックスオフィス1位登場『ハウ・トゥ・ルーズ・ア・ガイ 10デイズ』


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