TEXT BY 堂本かおる(フリーライター)

 シネマなブロードウェイ#2

 春になると、またもや映画スター主演のブロードウェイ作品が増えてくる。今春もミュージカル、演劇、一人語りとさまざまな形態の作品があり、出演するスターもベテランから若手までバラエティに富んでいる。今回はそんなシネマなブロードウェイ作品をご紹介!
 この原稿を書いている3月3日よりブロードウェイのミュージシャン組合がストライキを開始する予定だったが、とりあえず交渉続行との速報が入った。現在は劇場の規模によって雇用するミュージシャンの数が決められており、プロデューサー側は「必要以上のミュージシャンを雇わねばならず、それがコストアップにつながっている」と主張。スト決行となった場合も、ブロードウェイ19作品すべてが録音済みの音楽を使って上演を続けることとなる。
 街頭インタビューでは「ライブ・ミュージックのないブロードウェイなんて」と憤慨する人もいれば、「組合の要求が厳しすぎるからチケットがこんなに高いんだ」という人まで、いろいろ。けれど、とにかくShow must go on !

 現在、演劇ファンからもっとも大きな期待が寄せられているのが、4月26日幕開けの『夜への長い旅路』だ。劇作家ユージーン・オニールによる1956年の作品で、ブロードウェイに登場するのはこれで5回目。今回はブライアン・デネヒー、ヴァネッサ・レッドグレイブ、フィリップ・シーモア・ホフマン、ロバート・ショーン・レナードと、通好みの4人の俳優の揃い踏みとなる。

 この中で特に注目をしたいのがフィリップ・シーモア・ホフマン。 1992年にアル・パチーノ主演の『セント・オブ・ウーマン』で本格的なデビューを果たし、以後『ブギー・ナイツ』('97)などで個性派バイプレイヤーとして評判を高め、昨年、初の主役を務めたインディーズ作品『Love Liza』も好評を得た。
「奇跡の人」ヒラリー・スワンク
 性同一性障害の女性を演じた『ボーイズ・ドント・クライ』('99)でアカデミー主演女優賞を受賞し、最近では『インソムニア』(02)でアラスカの女性刑事を演じたヒラリー・スワンクがブロードウェイに進出。4月8日開幕の『奇跡の人』で、盲目聾唖の少女ヘレン・ケラーの人生を大きく変えた教師アニー・サリバンを演じる。ヘレン・ケラー役は『サウンド・オブ・サイレンス』(01)でマイケル・ダグラスの娘を演じた子役スカイ・マッコール・バーツシアク 。
 3月11日から16週間限定公演となるのが『キャスト・アウェイ』(00)のヘレン・ハント、『オー・ブラザー!』(00)のジョン・タトゥーロという異色コンビによるコメディ『Life(x)3』。

 現在、好評上演中なのが、ウ-ピー・ゴールドバーグが実在のブルース・シンガー、マ・レイニーを演じる『マ・レイニーのブラック・ボトム』。共演は、獄中で演技に目覚め、出獄後は『エイリアン3』('92)などに出演すると共に、監督としても活躍しているチャールズ・S・ダットン。
「マレイニーのブラックボトム」ウーピー・ゴールドバーグ
 昨年8月から続いている『フランキー&ジョニー』は、当初のエディ・ファルコ&スタンリー・トゥッチのコンビから、『ナイト・オン・ザ・プラネット』('91)のプエルトリコ系女優ロージー・ペレスと、30年近いキャリアで『マトリックス』('99)を始め、100本以上のテレビ・映画・舞台をこなしてきた性格俳優ジョー・パントリアーノに変わっている。

 ダスティン・ホフマン主演の名作映画『卒業』('67)の舞台化作品『The Graduate』も、初代のミセス・ロビンソン役はキャスリン・ターナーだったが、現在はTV『ザ・ソプラノズ』のロレイン・ブラッコにバトンタッチ。

 オフ・ブロードウェイの『The Exonerated』は、無実の罪によって死刑判決を受け、後に潔白を証明して命を取り留めた6人の実在の女性の物語を著名人が語るステージ。エイダン・クイン、メアリー・ステインバーゲン、キャスリン・ターナー、ブルック・シールズなど、数多くの俳優が1~2週間のローテーションで出演している。
「フランキー&ジョニー」ロージー・ペレズ&ジョー・パントリアーノ
 ブロードウェイはやはり生オーケストラと共に楽しみたい。今はスト回避を祈るのみ!


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