TEXT BY 堂本かおる(フリーライター)

 トニー賞ノミネート

 優れたブロードウェイ作品に贈られるトニー賞のノミネートが今年も発表された。いずれも魅力的なミュージカル/演劇作品の中から、映画を原作にした作品、映画俳優が出演する作品を中心にご紹介!
5月12日、ブロードウェイ・ファンにはお馴染みの人気レストラン、”サーディズ”にてノミネート作品が発表された。プレゼンターは、7月よりミュージカル『シカゴ』でロキシー役を務めるメラニー・グリフィスと、昨年『成功の甘き香り』でトニー賞ミュージカル最優秀主演男優賞を獲得したジョン・リスゴー。

 最優秀ミュージカル賞を含む13部門の最多ノミネートとなったのは『ヘアスプレー』。これはカルト・ムービー・ファンにはお馴染みのジョン・ウォーターズ監督が1988年に製作した同名映画の舞台化。1962年のボルティモアを舞台に、太った女子高生がテレビのダンス番組で人気者となる物語。いかにも60年代風のヘアスタイルとサイケなドレス、歌と笑いが満喫できる楽しい作品だ。
とにかくカラフル! 13部門ノミネート『ヘアスプレー』
 ニューヨークの一流コレオグラファー、トワイラ・サープがビリー・ジョエルの曲だけを使って創り上げ、最優秀ミュージカル賞を含む10部門にノミネートされたのが『ムービン・アウト』。誰もが知るビリー・ジョエルの人気ナンバー24曲に載せて、親友6人の波瀾万丈の人生をダンスと歌で描いた作品。セリフは一切ない。

 フェデリコ・フェリーニ監督の半自伝とも言える傑作映画『8 1/2』('63)を舞台化し、最優秀リバイバル・ミュージカル賞を含む8部門にノミネーされたのが『ナイン』。スクリーンでは名優マルチェロ・マストロヤンニが演じた映画監督グゥイド役をアントニオ・バンデラスが演じて好評を得、主演男優賞に、メアリー・スチュアート・マスターソンを含む3人が助演女優賞にノミネートされている。
ダンス&シング! 10部門ノミネート『ムービン・アウト』
 ユージン・オニールの小説を原作とした『夜への長い旅路』も、最優秀リバイバル演劇賞を含む7部門にノミネート。主役の夫婦を演じるブライアン・デネヒーとヴァネッサ・レッドグレーヴが主演男優賞と主演女優賞に、その息子を演じたフィリップ・シーモア・ホフマンとロバート・ショーン・レナードが共に助演男優賞にノミネートという快挙だ。この作品は1962年にシドニー・ルメット監督、キャサリン・ヘプバーン、ラルフ・リチャードソン主演によって映画化されている。
最優秀演劇賞にノミネートされた『魅せられて四月』も、マイク・ニューウェル監督、ミランダ・リチャードソン主演の同名映画('92)を原作にしている。イタリアの美しい別荘で休暇を過ごす4人のイギリス貴婦人を描いたコメディだ。
深みのある本格的演劇 7部門ノミネート『夜への長い旅路』
 娘をなんとかスターにしようと躍起になるステージ・ママと、やがて“ジプシー・ローズ・リー”として有名になる娘の物語『ジプシー』は最優秀リバイバル演劇賞にノミネート。母親役のバーナデット・ピータースも主演女優賞にノミネートされた。この作品は1962年にロザリンド・ラッセル、1992年にベット・ミドラー主演で映画化されている。
ドン・キホーテの物語『ラ・マンチャの男』も、アーサー・ヒラー監督、ピーター・オトゥール、ソフィア・ローレン主演で1972年に映画となっている。今回は最優秀リバイバル・ミュージカル賞にノミネート。
舞台、映画、テレビで活躍し、アメリカでは大スターのバーナデッド・ピーターズが主演女優賞ノミネートの『ジプシー』
 他には『私たちの街』のポール・ニューマン、『フランキー&ジョニー』のスタンリー・トゥッチが主演男優賞にノミネートされている。

 さて、トニー賞の本番は6月8日にラジオシティ・ミュージックホールで開催される。今年、ブロードウェイ最高の栄誉を掴むのはどの作品だろう。

 
●最優秀演劇作品賞
 魅せられて四月
 テイク・ミー・アウト
 グレイシアにおやすみを
 ブリクストンのヴィンセント

●最優秀ミュージカル作品賞
 アモール
 ア・イヤー・ウィズ・フロッグ&トード(子ども向け作品)
 ヘアスプレー
 ムービン・アウト

●最優秀リバイバル・ミュージカル作品賞
 ジョー・エッグの死の一日
 8時にディナーを
 フランキー&ジョニー
 夜への長い旅路 

●最優秀リバイバル演劇作品賞
 ジプシー
 ラ・ボエーム
 ラ・マンチャの男
 ナイン


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