TEXT BY 堂本かおる(フリーライター)

 初夏のニューヨーク事情あれこれ

 夏至を迎えてもまだ“寒い”今年のニューヨークだが、とりあえずはサマー・シーズンに向けて盛り上がる努力中。今回は、ちょっぴり湿っぽい初夏のニューヨークの What is going on?(何が進行中?)をリポート!

 「ニューヨークにも梅雨が?」と言われた今年の6月。連日の雨&曇り空でニューヨーカーの顔もついつい曇りがちだが、実はすでに過去の6月の降雨記録を塗り替えてしまったそうだ。21日にはブルックリンのコニーアイランドで毎年恒例のマーメイド・パレードが行われたが、これもやはり雨に見舞われてしまった。
 男性もつけまつげとカツラ、カラフルなウロコのドレスで人魚に扮しての楽しいパレードで、本来なら海辺でさんさんと降り注ぐ初夏の陽ざしを浴びながらのイベントなのだが……。それでも参加者たちは「人魚だから水は平気よ!」と、パレードをエンジョイしていた模様。

 ニューヨーカーの顔を曇らせているのは、実は天候ばかりではない。市の予算がどうにもやりくりがつかず、とうとう消費税がこれまでの8.25%から8.625%に上げられてしまったのだ。加えて、数年前に非課税となった110ドル以下の衣料品と靴にも再び消費税が課されることとなった。ブルームバーグ市長は“タックスフリー・ウィーク”を設けると約束はしてくれたが、ショッピングはやはり、気の向いた時にしたいもの。低気温と税率アップのダブルパンチで、夏物衣料の売れ行きはあまり芳しくないようだ。
今にも降り出しそうな空の下、それでもLサイズ・アイス!
 ところが、こんなご時世でも消費者のサイフを大いに緩めてしまったのが、新刊の書籍2冊。前作から3年振りとなったシリーズ第5作「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団(仮)」は世界中で爆発的に売れているが、ニューヨークではヒラリー・クリントンの回顧録「Living History」も大きな話題となっている。

 前ファースト・レディで、現在はニューヨーク州選出の上院議員。夫のビル・クリントン前大統領共々、ニューヨークでは根強い人気がある。
封切り間近『カリブ海の海賊 Pirates of The Caribbean』の巨大広告。ジョニー・デップ演じる海賊も寒そう?
 この回顧録、ヒラリー上院議員が、前大統領の浮気事件当時の心情を赤裸々に綴っているとあって話題が話題を呼び、ロックフェラーセンターにある書店でのサイン会には徹夜で並ぶ人まで出る始末。なお、あくまで噂だが、前大統領は2006年のニューヨーク市長選に、ヒラリー上院議員は2008年の大統領選に、それぞれ出馬するかも? と言われている。
 さて、雨続きではあっても、タイムズスクエアでは着々と夏の準備が進められている。まずは、サーファー/スノーボーダー/スケートボーダー御用達のアウトフィット・チェーン“クイックシルバー”のオープン。

 昔からニューヨークでは、サーフィン・ファッションのブランドは成功を収めることができなかった。人と建物が極端に密集した街に住むニューヨーカーには、いまひとつしっくり来ないというか、違和感があったのだ。しかし、行き過ぎないデザインのアロハシャツやTシャツ、サングラスやリストウォッチを揃えたクイックシルバーは、ニューヨーカーにもなかなか好評だ。

 マダム・タッソー蝋人形館では、いつもサミュエル・L・ジャクソンの蝋人形が館外に置かれ、観光客は自由に撮影ができた。ところが今月に入ってからサミュエルが隠退(?)し、モーガン・フリーマンとハリソン・フォードが新たにファン・サービスに励んでいる。
ハリソン・フォードの人形、全然似てないです。
 そして20日には小雨模様の中、アリゾナ発祥のアイスクリーム・チェーン“コールド・ストーン・クリーマリー”が堂々オープン。この店の特徴は、好みのフルーツやトッピングをアイスクリームの中に混ぜ込み、特性コーンワッフルに盛ってくれること。初日は全製品無料という大盤振る舞いで、肌寒い天候にも関わらず、店の前に長蛇の列が出来た。

 天気予報によると、6月後半にようやく夏らしい気温になるとのことだが、そうでなければ7月4日の独立記念日に、長袖で名物の花火見物ということになってしまう。ニューヨーカーは、昨年末の厳冬・大雪から始まり、寒い春と初夏を過ごした。せめて夏だけでも満喫させて欲しいものだ。
連日、長蛇の列ができるアイスクリーム・チェーン“ストーン・コールド・クリーマリー”


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