日本語吹替版

 基本的に、映画はオリジナルの俳優・女優の声を楽しむ為に字幕で観るというのが大前提だと思っています。しかし、中には字幕を読むのが面倒で嫌いだとか、字幕に集中してしまうと映画に集中できない等々の理由で、字幕が付くことを嫌がる方たちがいるのも事実です。特に子供たちを主要観客とする映画ならば尚更、字幕だと映画を楽しんでもらえません。そんな時に制作されるのが“日本語吹替版”です。

 この“日本語吹替版”は、ビデオ発売時には未公開作品などの場合を除き大抵の作品で現在制作されております(ただ、小さなビデオ店などは子供向け作品を除いては字幕版しか仕入れないところも多いので、実際には目にしない機会も多いかもしれませんが…)。
 また1枚に複数の音声などのデータが収録できる特性をもつ“DVD”では当然オリジナル音声以外に日本語吹替音声も併せて収録されることがほとんどです。このDVDの普及とともに、尚のこと日本語吹替の需要が高まってきています。最近では劇場公開作品でも、作品によっては日本語の吹替版が制作されるようになってきてもいるのです。

 これらの“日本語吹替版”は、1作品あたり大体20名前後の声優さん達によって収録されます。声優さんには非常に知名度のある方から、まだ駆け出しの新人の方までランク付けされているので、それらの方をうまくキャスティングしてオリジナルのイメージを崩さないように(これが一番難しい!)制作していきます。

 ですので、当然無名の役者が多いような映画の場合には、声優さんも同様に新人の方を多くしたり、また有名スターが多いような映画の場合には、声優さんもトップクラスの方が多くするなどのキャスティングが主になされます(要は制作予算との兼ね合いで、トップクラスの声優さんを多数起用すればギャランティだけでかなりのウエイトを占めてしまいますので…)。

 また有名スターの吹替に関しては、多くの場合イメージが固定されている等々の理由から同じ声優さんが行なう場合も多く、その方の持ち役的な場合もあるようです(例えばブラッド・ピットの声だと山寺宏一さんが多いですね)。
 時には話題作りの為に“芸能人”を起用することもあります。最近で話題になったものだと『シュレック』(01)のオリジナルの日本語吹替版、エディー・マーフィをダウンタウンの浜田さん、キャメロン・ディアスを藤原紀香さん、マイク・マイヤーズを山寺宏一さんで制作しました。かなり話題になったので、ご存知の方も多いのではないでしょうか?

 吹替の収録(通称アフレコ)は、スタジオに大体丸1日こもって行なわれます。画面を見ながら声優さんたちが日本語を併せていく訳ですが、仮に2時間の映画だからといって、当然2時間で終わる訳はなく、実際はその約3~4倍の時間がかかるのです。これは一概には言えませんが、やはりセリフが多い映画などは必然的に時間が多くかかります。出演者の口の動きと日本語吹替がうまくシンクロしていなければイメージ以上の違和感がありますので、この部分には注意が一番払われるのです。やっぱり自然に映画を観ることができなければ、それはおかしいと思ってしまいますので…。

 また実際の映画には、主要キャスト以外にも通行人などエキストラ的な人々も多く出演しており、周囲の雰囲気を出す通称ガヤ(がやがや言うことに由来すると思われます)と呼ばれる音声(効果音)なども日本語吹替版が必要になってきます。これらについては、アフレコ参加の声優さんに協力して貰って「がやがや」言ってもらうことで多人数的な広がりを出したり、あまり有名ではないような俳優の声などは、声優さんがメインの吹替と掛け持ちしたりしてカバーしているようです。結構、吹替作業の現場は地味で大変なんですね。

 上記に述べたように、最近はDVDの普及で需要を増している日本語吹替版ですが、TVの映画オンエアでは古くから日本語吹替版が当たり前になっていますし、飛行機(国際線)を良く利用する方であれば、機内上映で最新映画を日本語吹替で観るなんていうシチュエーションも多いかもしれません。日本語吹替版にはまたオリジナル音声とは違った良さがあるので、普段は字幕でしか映画を観ないという方も、この機会にDVDなどで是非日本語吹替版で映画を観てみることをお勧め致します。
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