ウインドウ(補足)

 前回、前々回と、各メディアにおけるウインドウに関しての話をしました。従来であれば、それだけで十分だったのですが、ここ最近急速に普及したブロードバンドを使用したメディアにおけるウインドウも考えなくてはいけなくなりました。そこで、今回は補足として「ブロードバンドメディアにおけるウインドウ」についてお話したいと思います。
 以前、「映画業界の豆知識」でもネットでの映画配信に関して触れたことがあります。日本では急速にブロードバンド化が進行しましたが、そのブロードバンドに見合う映像コンテンツがまだ足りないため、必然的に“映画”というアイテムが求められている状況になっています。

 アメリカではいち早く、メジャー系会社(MGM、パラマウント・ピクチャーズ、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント、ユニバーサル、ワーナー・ブラザースの大手メジャー5社)が共同出資して設立した“ムービーリンク”という会社が映画配信を開始しています。しかし日本ほどブロードバンドが普及していないこともあってか、それ程映画配信が普及しているようには思えません。

 日本はむしろ先にインフラの方が整ってしまったので、それに見合うコンテンツが間に合わなくなってしまったのです。なぜなら、まだまだネットで映画配信をする際の権利処理の問題、セキュリティの問題といった非常に高いハードルがあるからです。他の既存媒体とは違い、そう簡単には提供を許諾することはできないのです。
 しかしながら、最近になってセキュリティの強化&向上【注1】や、アメリカに本社を持ついわゆる大手メジャー系の映画会社が作品を供給したりと【注2】、徐々に他の映画会社にとっても進出までの敷居が低くなっているのを感じます。

 一般の方にとっても、例えばWOWOWやスカパー、ましてやケーブルテレビにも加入していない人にとってみれば、普段馴染みのあるネットで、それも自分が加入しているプロバイダーが映像配信を開始したとしたら余計に加入しやすいはずです。

 しかしながら、ここで問題になってくるのが、ブロードバンド配信媒体でのウインドウです。ブロードバンドでの配信はWOWOWやスカパーなどの放送とは微妙に異なり、むしろペイパービューという形式に近いのです。いわゆるビデオ・オン・デマンド(VOD【注3】)という方式で、店舗まで行く必要性がなく、好きな時に観ることのできるレンタルビデオやDVDをイメージしてください。
 つまり、本当に新しい形態での放送(?)媒体なので、ビデオ発売後のペイパービューでの放送開始と同タイミング(ビデオ&DVD発売後3ヶ月)や、あるいはWOWOWやスターチャンネル開始のタイミング(ビデオ&DVD発売後6ヶ月)で良いのではないかなど、各社のウインドウにはかなりの違いがある状況です。現在はまだネットにおける映画配信がスタートしたばかりなので、各社も様子を見ているといった感じのようです。

 しかし一度火がつけば、各社一斉に参入し、一気に活性化すると思われます。そうなると、現在決まっている従来のウインドウの概念自体が大きく変わることもあり得ます。そして、ビデオレンタル店を将来的に大きく脅かす存在になっていくかもしれません。いずれにしても、今後要注目の新媒体であることは間違いありません。

【注1】PC上で見せるという配信サイトもあるが、最近の主流はSTB<セットトップボックス>を電話回線に経由させ、分岐させることによってテレビで視聴させる方式。

【注2】Yahoo!BBが展開するBBケーブルへのユニバーサルの供給が代表例。メジャーのチェックは厳しいので、そこがOKを出したとなると他の会社が追従する可能性は大きい

【注3】リクエストした段階で課金&視聴開始
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