海賊版

 皆さんも一度は「海賊版」(パイラシー)という言葉を耳にしたことがあると思います。「海賊版」とは、正規ルートで発売される前に“何故か”世に出回る商品のことを指します。

 我々のように映画という商品を扱うものにとっては、古くからこの海賊版という問題が存在していました。ここにきて、この海賊版問題は新しい局面を迎えようとしているのです。というのも、昔はそれこそアメリカ公開時に劇場内で撮影されたものに字幕を入れたVHSなど、手法的にも画質的にも非常に粗悪なものが主流だったからです。

 ところが、DVDメディアが普及している現在においては、海賊版もDVDで出回るという事態になってきており、我々も対応に苦慮しています。今までも、特にアジア地域では海賊版DVDが多く出回り、それが日本に逆輸入されて限定的に秋葉原あたりで売られることがあったようです。しかしここ最近のネット普及によって、今までアンダーグラウンドのものだった海賊版が、かなり表面上に出てきているのを感じます。
 目下、特に我々が問題視しているのは「ヤフー!オークション」内における海賊版商品の掲載です。なんと我々が現在公開している『ターミネーター3』が字幕付きDVD(あるいはVCD)で、公然と出品されているのです(これは他社の新作でも同様のようです)。

 現在、アメリカでもまだDVDの発売がされていない訳ですし、ましてや日本での発売はその後の話なので、これは明らかに違法な“海賊版”以外の何ものでもありません。海賊版に使われている大元の素材の出所はアメリカ国内なのか、それともアジア地域、あるいはまったく別のところなのかわかりません。しかし“日本語字幕を付ける”という作業自体には、日本語の知識があって、ある程度の技術をもった人間が携わっている可能性が高いと思われます。

 また、もっとアンダーグラウンドで考えれば、いわゆる“ファイル交換(共有)ソフト”によって、“映画”がファイルとしてやりとりされるという新しい形の海賊版が出回っていることがあるようです。私もまだ観たことはありませんが、新作などを中心にかなり出回っているようです。大元をどうにかしない限りには、現在のインターネット社会における海賊版を根絶することは不可能に近いのかもしれません。
 どのような形であれ正規ルートで発売される商品以外の字幕付きDVDなどは、すべて著作権を完全に無視した海賊版になるので、それを入手することも違法行為であることをきちんと再認識して頂きたいと思います。ネットのおかげで入手までの敷居が非常に低くなり、著作権侵害の意識も薄くなってしまいがちです。海賊版を入手することは明らかな違法行為となりますので、皆様お気をつけ下さい。

 現在は正規商品の発売も以前と比べ物にならないくらい早くなっているので、リスクを犯してまでクオリティの低い海賊版を入手する価値はないと思います。なお、弊社では現在、日々サイトをチェックしながらヤフー!側にオークションに掲載されている該当商品の削除要請を送っています。まさにイタチごっこといった感じですが、現状では掲載からの削除をお願いするしか他に効果的な方法がないのです。ヤフー!側によれば、このような違法商品でも事前にチェックは行なっておらず、“あくまで出品者及び入札者の良識にまかせている”とのことです。だから何故か我々がチェックしなくてはいけないのですが、非常に変な話です……。

 今後は業界全体で、現在の海賊版の対応を考えていかなくてはいけないと思います。少なくとも、表面に出てくる海賊版に関しては、何とか流通を食い止めることが出来るようになるかもしれません。しかし基本的には、特にファイル共有(交換)などに関しては、映画ファンの皆様の良識におまかせするしかありません。もしそのような海賊版を今までに見たり、入手された経験のある方は、是非この機会に著作権侵害について考えていただければ何よりです。また、今までそのような海賊版が存在していることを知らなかった方々にも、著作権について考えていただく何かのきっかけになれば幸いです。
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