未公開シーン

 1本の映画が完成し、映画館で公開されるまでには、当然「編集」と呼ばれる重要な製作過程があることは、皆さんもご存知のことと思います。撮影した映像をただ繋ぎ合わせただけでは、なんのメリハリもないグダグダ&ダラダラしたものになってしまうでしょうし、それこそ数時間以上の長さになってしまいます。
 よって「編集」を担当するスタッフたちが、ただの記録映像の集まりから、ストーリー(脚本)やテンポ、並びにリズムなどを考慮しながら、うまく切り貼りして1本の映画へと繋ぎ合わせていきます(※その過程には、BGMの挿入やCG処理なども含まれる)。
 そうなると、撮影はしたが完成した映画本編には存在しなかった(カットされた)シーンというものが、必ず存在することになります。これらはその名の通り「未公開シーン」(Deleted Scene)と呼ばれ、通常は映画製作スタッフしか観ることが出来ないものです。しかし、昨今ではそれらの一部がDVDの特典映像として収録されることも多く、かなりの割合で観ることが出来るようになってきました(※大抵、出演者などの許可を得られたシーンのみ。映画全体の未公開シーンからすると、ごく一部のよう)。

 その多くは監督自らが音声解説などを行ない、なぜそのシーンを入れなかったのか?等を説明しているので、我々は未公開シーンとなった理由も知ることが出来ます。事実大抵の未公開シーンは、我々から見ても本編からカットして正解と思われるものが多いです。
 しかし、中には最後の最後まで監督が迷って結局収録を断念した、なんていうシーンもあったりするようで、そのシーンがもし本編にあったら……と考えると結構興味深いですね。個人的には『ターミネーター3』の未公開シーン<何故T-800はいつもシュワの顔をしているのかが分かるエピソード>は、遊び過ぎかもしれないですが結構気に入っています。

 また、例えば監督としては、このエンディングが良いと考えて撮影はしたが、映画会社や、一般の観客の反応から別エンディングに差し替えたという場合や(※映画公開前の試写の反応状況などから、エンディングを差し替える場合。アメリカでは頻繁にあるそう)、本来は2時間30分の映画としてまとめたいが、映画会社の意向で2時間以内にまとめさせられた等々、様々な外的事情によって結果として未公開シーンになってしまったという不幸なシーンも多いと思われます。
 これも最近ではDVDの普及のおかげで、未公開シーンの中で“別バージョンのエンディング”や、いわゆる“ディレクターズ・カット完全版”(※『ダンス・ウィズ・ウルブズ』、『アビス』、『ターミネーター2』等)として観れるものも結構出てきました。
 ちなみに“別バージョンのエンディング”だと、普通は1種類ぐらいですが、最近発売になった『28日後…』のDVDには、確か4種類も収録されており、さすがにそこまであると「よほど決断出来なかったのか?」と思えてしまうので、あまり入れ過ぎるのも逆効果かもしれないですね。

 尚、最後に前述した内容に関連しますが、暴力&残虐描写(※当然ホラー映画はその代表格)、そして性描写などが過激なシーンは、その描写がレイティングなどに直接影響を与えますので、興行を考えて低いレイティングを得るために、あえて該当シーンをカットするということが当然あります。よってこれらも十分に未公開シーンとなりえます。
 今度弊社が公開する新作『ドーン・オブ・ザ・デッド』(98分)もオリジナルの旧作が120分を超えていたということを考えると、時間が短いのでは? と思われるファンの方は、かなり多いのではないかと思います。これについては、今、噂を含めて入手している情報によると、アメリカで今後発売になるDVDには25分ぐらいの未公開シーンが追加されるらしいので(※本編に追加収録&編集されたいわゆる“ディレクターズ・カット完全版”になる予定)、劇場公開版はなるべくレイティングを引き下げる為に、かなり残虐な描写などがカットされたのだろうと推測されます。とはいえ、日本では十分にR-15指定作品なのですが……。

 従って、もしアメリカ版DVDが本当にそのような仕様になるのであれば、日本で同作品のDVDを発売する折には、個人的にも“ディレクターズ・カット完全版”といった形で可能な限り発売をしたいものです。きっとかなり受ける印象も違ったものになるでしょうからね。
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