海賊版(2)

 つい先日アメリカのニュースで、新作『デイ・アフター・トゥモロー』上映館内でこっそりビデオ録画撮影を行なっていた輩が逮捕されたというものがありました。彼らの行為は明らかに海賊版制作を目的としたものであり、最終的にはそれらがDVDに焼かれて販売されたり、あるいはファイル共有ソフトなどを通じてネットにも広められることになってしまいます。
 海賊版ソフトの流出によって、映画興行やビデオ&DVDの売り上げが、毎年年間で約3000億円もの損害を被っていると言われています。それを未然に防ぐという意味で、アメリカでは上映中の映画館内にも注意を払い、その結果、先程のニュースのような件が発覚したのでしょう。
 これは、最近の技術の発達が皮肉にも以前とは比べものにならないぐらいクオリティの高い海賊版を生み出してしまい、作ろうと思えば誰もがちょっとした知識と機器と行動力で実行可能になってしまったことも大きいと思われます。
 以前の豆知識でも、海賊版のことについて触れました(※第88回参照)。その際取り上げた“ヤフー!オークション”上での海賊版流通問題に関しては、我々が再三に渡り削除要請をしたことが功を奏したのか(?)、ヤフー!側も違法商品の出品に対して削除・排除を強化してくれ、最近ではほとんど海賊版を含む違法商品の出品を目にすることはなくなりました。

 また最近の報道で皆さんもご存知かと思いますが、ファイル共有ソフトWinnyの作者が逮捕されたことにより、同ソフト上での違法ファイルの交換が沈静化したことも大きいと思います(そうなっていることを願いますが……)。私はWinnyを試したことはありませんが、ネットの掲示板などを読む限りでは、字幕付き新作映画(※公開中のものを含む)が、相当数やり取りされていたようなので、これは十分に新たなタイプの海賊版と言うことが出来ると思います。それらの映画ファイルが、どのような経路で入手&作成されているのかは分かりませんが、冒頭のような手口によって、やはりアメリカから流れてくるのだろうと推測されます。
 Winnyに限らずファイル共有ソフトは、映画や音楽といった著作物の著作権侵害でアメリカでも日本でも大きな問題になっているものです。確かに無料で(あるいは安価で)それも、現在公開中の映画を自宅にいながらにして観ることが出来るということは、映画好きにはたまらないことかもしれません。しかし、映画などの著作物には必ず何らかの“対価”というものが存在すべきだと私は思います。

 対価があるからこそ、必然的にどんどんクオリティやレベルが上がっていくものですし、もしそれが対価がないような、いい加減なもの、意味のないものになってしまえば、結果的にクオリティの低下などといった形で、自分たちに跳ね返ってくることになってしまうからです。
 もちろん、ファイル共有ソフトも著作権侵害をすることなく正しく使用すれば、全く問題のない便利で良いソフトなのでしょう。しかし、それを正しく使用しないモラルの低い人たちが多かったため、問題視されてしまうのです。つまりはユーザー側のモラルや、自己責任による使用が求められているわけですね。

 だから本来は作者の逮捕というよりも、違法行為をしているユーザーを特定しての警告、あるいは逮捕ということをどんどんしていかない限り、根本的な解決には決してならないと思います。しかし、ファイル共有ソフトはユーザーの匿名性というものがあるため、ユーザー特定し、しらみ潰し的な検挙というのが非常に難しいと思われます。ゆえに、見せしめ的に大元である作者を逮捕という形に踏み切ったのでしょう。
 映画は“必ず映画館で”と強制は出来ませんが(本音は観て欲しいです)、少なくともその後のビデオ化の際、あるいは最終的な地上波でのOAでも良いので、正規ルートで映画を観賞して頂きたいと思います。おそらくほとんどの方は当然のこととして、正規な方法で見て頂いているでしょうが、ファイル共有ソフト上や秋葉原などでは、明らかに海賊版と思われるものが依然として出回っているようなので、きっとそれなりの需要もあるのでしょう。

 前回も申し上げましたが、著作権侵害という行為は立派な犯罪行為にあたります。そして、ファイル共有ソフトなどだと、あまり意識もせず、著作権侵害に加担してしまうことになるので、皆様もあらためて著作権と言うものを考えて頂ければ何よりです。またネット上や、あるいはその他でこれは海賊版ではないか?と思われますものを発見されるようなことがあれば、ご一報頂ければ幸いです。何卒宜しくお願い致します。
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