公開ラインナップ

 以前、買い付けの話をしましたので、今回はその買い付けの成果といえる「ラインナップ」に関して、お伝えしようと思います。
 “ラインナップ”とは、各映画会社が買い付け、契約したこれから公開する予定の映画をまとめて公表したもので、それを見るだけでその会社の今後1~2年の状況を占うことが出来るものでもあります。このラインナップの発表は、各社それぞれのタイミングで行なわれます(東宝東和の場合は概ね12月~2月ぐらいの時期)。一般に向けてではなく映画業界(同業他社や興行関係者など)に向けてアピールすることを重視しているので、主に業界紙などの通信に向けての発表になります。そこでとにかく重要視されることはインパクトのある、あるいは魅力あるタイトル(話題作)がどのぐらい含まれているのかどうか? ということ。当然大きな作品ばかりでなく、単館向けの作品も含めて様々なジャンルの映画でラインナップは組まれていきます。しかし、そこに話題作があるのと無いのとでは、大きな違いがありますからね。
 ここでいう話題作とは、基本的には有名な監督や俳優・女優が参加した映画で、ビッグバジェット(巨額な制作費)をかけたものになります。つまり、いかにも大ヒットしそうな映画ということですね。それらがラインナップの中心として、その他のものを牽引していく存在になるので、各会社は最低でも数本は話題作をラインナップには含めたいわけです。
 しかし常に買い付けすることが宿命付けられている我々のようなインディペント系の映画会社ですと、思うようにはいかずに話題作があまりないラインナップを発表するしかないということもありえます。実際、東宝東和も、ここ数年はラインナップがようやく充実してまいりましたが、ほとんど話題作がないという厳しい時期も過去経験してきています(まあ、このような状況はマズイので、もう味わいたくありませんね(笑))。
 東宝東和では昨年夏『ターミネーター3』を公開しました。あれこそは誰もが認めるところの<超>のついた話題作だったと思います(実際結果も残しました)。ですが、あのクラスの話題作をインディペント系会社が毎年のように揃えるのは、至難のワザです。故に特にインディペント系会社のラインナップは必然的に好調・不調の波が激しいかもしれませんね。
 ただ、メジャー系の映画会社でも波があるのは同じです。ある年は話題作ばかりのラインナップで勢いづいていた会社が、翌年にはガクンと何もなくなってしまったり、今までそれほど勢いがなかった会社が、急に大ヒットシリーズ数本を有するなど、印象的には、あるメジャー系会社がずっと強いという状況が続くことは、現在は少なくなっていると思います(昔はそのようなことがありました)。
 ちなみに、現在ラインナップが強いというか、安定していると思われるメジャー系会社はやはりWB(ワーナー・ブラザース)でしょうかね。しかしそれも数年後にはどうなっているのか分からないということです。が、メジャー系会社は、それぞれ数年おきに必ずといっていいほど、強力な<超>話題作を有していたりします(例:2005年FOXの『スターウォーズ・エピソードⅢ』など)。例え1本でも<超>話題作を有していればそれを基にした動き(交渉)が出来ますから、それにより状況を全体的に有利にしていくことが出来ます。
 つまり、言い方は悪いですがいわゆる“抱き合わせ”的な戦略を、そうした<超>話題作を筆頭にして様々な局面(興行ブッキング時やその後の2~3次利用時など)で他作品においてもとることが出来るという訳です。そのような作品が1本あるだけで業界的に優位に立てる、というと少し言い過ぎかもしれませんが、映画会社にとって大きなプラス材料であることは間違いありません。
 一般の方が、各映画会社のここ数年のラインナップの全体像を知ることはなかなか難しいと思います。が、映画会社によっては公式ホームページに全部でないにしても、その一部を載せているところなどもあるので、興味がある方はチェックされてみると良いかもしれません。

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