権利はめぐる

 最近、弊社が昔に劇場公開した作品のDVD化などに関するお問い合わせをいくつか頂いたので、以前の豆知識でもお話しました映画の権利というもの関して、あらためてお伝えしておこうと思います。
 まず一般の方の認識ですと、その映画を劇場配給した会社にとにかくその映画の権利があって、その会社がビデオ&DVDも発売をするというイメージが多いのではないかと思われます。確かにこのイメージは、メジャー系映画会社(WBやFOXなど)にとっては多くの場合、あてはまることも事実です。しかしながら、我々のようなインディペント系映画会社の場合には、ちょっと事情が変わってきます。むろん、ある映画のオールライツ(全権利)を永久権として獲得しているのであれば、その映画はまさにその会社にとっての財産だと言えますが、インディペント系会社に関して言えば、どの会社もこれまでに公開してきた数百に及ぶだろう作品の中で、オールライツを永久所有している作品はごくわずかなのではないか? と思われます。と言うのは、仮にオールライツを持っていたとしても期間が定められている場合が多く、その期間が過ぎてしまうと、再契約しない限り契約満了(解消)になってしまうからです。
 弊社の場合にも、20年以上前あたりから10数年前ぐらいまで(あるいはもっと大昔)に公開されたほとんどの作品(代表例:一連のジャッキー映画『プロジェクトA』シリーズ、『ポリス・ストーリー』シリーズなど)に関しては、すでに何の権利もないものがほとんどという状況です。そのため、過去の作品に関して弊社にお問い合わせを頂くことが多いのですが、もう過去に公開したという“記録”ぐらいしか残っていないので、せっかくお問い合わせ頂いても弊社では何も出来ないのです。
 なお、契約満了後の諸権利に関しては、一旦は権利元に戻ることになります。その後は権利を購入した他社へと移動することになりますので、例に挙げたジャッキー映画でいえば、弊社がビデオを発売しましたが、権利期間満了後はビデオ権を旧パイオニアLDC(現:ジェネオン・エンタテインメント)が獲得して初DVD化して発売、そしてその権利期間も切れた現在では、ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパンが獲得し、先ごろ新しい仕様で発売されましたね。また同じくジャッキーの『レッド・ブロンクス』『ファイナル・プロジェクト』などもパイオニアLDCの権利が切れた後は、ワーナーブラザースから発売されるといった具合に、見事に権利がめぐって行っている(しかもメジャーに!)のがお分かり頂けると思います。このように、商業的価値がある作品の権利はそれが永久権でない限りは1社不動のものではなく、長い目で見れば会社から会社へと移動していくものなのです。
 したがって、弊社であろうが他社であろうが過去に取り扱った作品(特に相当大昔のもの)でDVDが発売されていない作品があれば、それは日本におけるビデオ権が宙ぶらりんになっていて、どこも獲得していない状態が推測されます。つまり、それが商業的価値判断から獲得しないのか、それとも権利元が不明なため交渉不能なのかは分かりませんが、どこも獲得していないのであれば、発売の見込みはまったくないということになります。
 最後に、最近はリスクヘッジという意味合いもあり、複数のパートナーと共同で権利運営を行なうというケースが多くなってきています。新作の『香港国際警察/NEW POLICE STORY』なども、ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパンとの共同提供作品になっているので、劇場配給は弊社が担当しましたが、ビデオ&DVDに関しては同社が発売をするということになります。『海を飛ぶ夢』も同様にポニーキャニオンなどのパートナーと共同提供作品なので、劇場配給は弊社ですが、ビデオ&DVDに関してはポニーキャニオンが発売をするということになっています。
 こういうシステムは我々にとってはよくあるパターンなのですが、一般の方には、ますますどこがどの権利を取り扱うのか? ということが分かりづらくなってしまう原因になるでしょうね。
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