■マーロン・ブランド、アル・パチーノらが主演した不朽の名作『ゴッドファーザー』を紹介
フランシス・F・コッポラ監督が壮大なイタリアン・マフィアの一族を描いた衝撃的作品!

 映画に興味がある人で、『ゴッドファーザー』('72)について聞いたことがない人はあまりいないのではないでしょうか? たとえ興味が無くとも、名前などは知っているはず。今回このコーナーでは、『ゴッドファーザー』について、知っている人にはより深く、知らない人にはこの映画がどんな作品なのか、物語やその背景などをわかりやすくお伝えしましょう!
 マリオ・プーヅォによる小説「ゴッドファーザー」が全米で発売されたのは1969年。この小説は出版当初から大変な反響を呼び、発売後6ヶ月もの間ベストセラーのトップにリストされ続けました。当時、マフィアの世界を描くことはタブーとされていましたが、1972年に映画化されるに至ります。製作会社のパラマウントはイタリア系アメリカ人の反発を非常に恐れ、イタリア系であるフランシス・F・コッポラ監督を指名しました。監督は最初この映画化の話にはあまり乗り気でなく、彼自身が抱える独立プロダクションの維持のためにやむなく引き受けたそうです。また、撮影当時は本物のマフィアからの圧力もあったと伝えられています。
 “ゴッドファーザー”とは、もともとキリスト教の洗礼式での名付け親を指します。血のつながった両親や家族、また世話になった父親的存在“ゴッドファーザー”に絶対服従するのがマフィアの世界の習わしです。秘密結社であるマフィアには、“オメルタ”(「沈黙」という意味)と呼ばれる掟があり、これを破った場合、本人は勿論、家族までもが全て抹殺されてしまいます。コッポラ監督は、イタリア系移民がアメリカで生き抜くために結成された非合法組織マフィアの世界を、映画『ゴッドファーザー』で力強く芸術的に描き出しました。この作品は、シシリー出身の“コルレオーネ・ファミリー”の姿を通して、陰惨で残酷な闇の世界と、固く結ばれた家族の血の絆といった要素を巧みに織りあわせた華麗で荘厳な叙事詩とも言えます。

 冒頭のシーンで、ある登場人物に不気味な贈り物が届けられるのですが、その時に呟くドン・ヴィトーの「彼が断れない提案をするつもりだ(I'll make him an offer he can't refuse.) 」とう台詞は大変有名です。ヴィトーは普段は控えめで理知的ですが、組織を守るために行なう殺人の前には必ずこの台詞を呟き、冷酷非情に徹するドンとしての立場や性格を際立たせています。
 『ゴッドファーザー』は、第45回アカデミー賞で13部門にノミネート、作品賞、主演男優賞、脚色賞を受賞しました。しかし、主演男優賞を授与される予定だったマーロン・ブランドはこれを拒否。理由は「映画界における、ネイティブ・アメリカンの扱いが不当である」というものでした。また、ブランド演じるドン・ヴィトー・コルレオーネの息子、マイケル・コルレオーネ役のアル・パチーノは実際にシシリー系イタリア移民の血を引いています。この作品で助演男優賞にノミネート、『ゴッドファーザー PART II』('74)でも主演男優賞にノミネートされました。

 本作は主演クラス以外の層が厚いことでも有名です。まず、マイケルの兄ソニーを演じたのは、『イレイザー』('96)、『誘拐犯』(00)などのジェイムズ・カーン。マイケルの妻ケイを演じているのは、ウディ・アレン監督作品でお馴染みのダイアン・キートン。 ヴィトー・コルレオーネの養子で、ファミリーの2代目コンシリオーリ(相談役)、トム・ハーゲンを演じたのは『地獄の黙示録』('79)、『ディープ・インパクト』('98)などのロバート・デュヴァル。 ヴィトー・コルレオーネの一人娘コニーを演じたのは、コッポラ監督の妹でもあるタリア・シャイア。また、2作目で若き日のヴィトー・コルレオーネを演じたロバート・デ・ニーロはアカデミー助演男優賞を獲得し、一気に注目度を上げました。

 この映画は3部作としても有名ですが、撮影は全てゴードン・ウィリスが手掛けました。光と闇の微妙な映像表現は彼なくしては生み出せなかったでしょう。ニーノ・ロータが作曲した甘く切ないテーマ曲にのせ、残酷な描写の中にも深みのある陰影の効いた映像が観るものをさらに圧倒させます。ロータは“ゴッドファーザー 愛のテーマ”で、第30回ゴールデン・グローブ音楽賞を受賞しています。


■ストーリー

 1940年代のニューヨーク。ドン・ヴィトー・コルレオーネ(マーロン・ブランド)の屋敷では、長女コニー(タリア・シャイア)の結婚式が行われている。華やかな式場とは裏腹に、書斎ではヴィトーが友人たちの頼みごとを静かに聞いていた。シシリー人の伝統で、花嫁の父親は出席者の頼みを聞かなければならないからだ。彼への恩返しは、ささやかな友情の証と、“ドン”あるいは“ゴッドファーザー”と呼ばれることだけ。

 そんなある日、麻薬を商売にしている男バージル・ソロッツォ(アル・レッティエリ)がヴィトーに仕事の話を持ちかけてきた。賭博や売春ならいいが、麻薬に手を出したとなると、今持っている政治家たちとのコネが損なわれてしまう。そう考えたヴィトーは、ソロッツォの話を丁重に断る。ソロッツォはヴィトーさえ殺せばこの取り引きは成功すると見て機会を狙いはじめた。そしてある冬の夕暮れ、ヴィトーは街頭でソロッツォの手下に襲われ、銃弾を浴びてしまう。一命をとりとめたヴィトーだったが、これは彼と彼の一族の絶大なる支配に対する挑戦だった。

 ヴィトーには3人の息子があった。長男ソニー(ジェイムズ・カーン)は血の気が多く荒っぽい性格。次男フレドー(ジョン・カザーレ)は臆病者でファミリーの要としては使い物にならない。三男マイケル(アル・パチーノ)は温和でヴィトーのお気に入りだが、堅気の世界に進もうとしていた。しかしヴィトーが銃撃に倒れてから、ニューヨークではファミリー同士が血なまぐさい抗争に巻き込まれ、やがてマイケルは父のいる世界に足を踏み出すことになる…。


■この作品、ココをチェック!
家族的なつながりに重きを置いたフランシス・F・コッポラ監督
 この作品に対し、始めはあまり乗り気でなかったといわれるフランシス・F・コッポラ監督ですが、上映された作品はいまや誰も超えることの出来ない一大傑作となりました。これほど重厚で大河ドラマ的要素を持ったギャング映画は今後誰にも作れないだろうとさえ言われています。

 この作品は“マフィア”という側面以外に“家族の絆”という要素も持ち合わせています。コッポラ監督自身、この作品を作るにあたって、彼の家族や家族同然の仕事仲間を数多く引き入れました。ドン・ヴィトーの長女コニーを演じたタリア・シャイアはコッポラ監督の実の妹。父親で作曲家のカーマイン・コッポラはシリーズの音楽を手掛けています。母のイリヤは電話交換手の役で出演していますし、息子ジャンカルロ(不慮の事故で亡くなりました)は助監督を務めました。また、難しく面倒なモンタージュ・シーンを引き受けたのは、『雨の中の女』('69)などでコッポラ作品の助監督をしていたジョージ・ルーカスでした。コッポラ監督はルーカスのデビュー作『THX-1138』('71)の手伝いもしています。のちにコッポラが不遇の時代を迎えた時に陰で支え助けていたのが、ほかならぬルーカスだったのです。

 家族的な支えに恵まれながら、どん底の時から何度も生還しているコッポラ監督。映画を生みつづけるという強い意思とその流れは絶えることがありません。娘ソフィアは『ゴッドファーザー PART III』('90)でマイケルの愛娘メアリーを演じ、『ヴァージン・スーサイズ』('99)などで監督に挑戦しています。息子ロマンも『ゴッドファーザー PART II』('74)で幼い頃のソニー・コルレオーネを演じ、ジェレミー・デイヴィス主演の『C.Q.』(01)では脚本・監督もつとめました。コッポラ・ファミリーは『ゴッドファーザー』シリーズのように永遠に不滅なのです。


■フランシス・F・コッポラ プロフィール

 1939年4月7日生まれ。ミシガン州デトロイト出身。本名フランシス・フォード・コッポラ。父はNBC管弦楽団の第一フルート奏者だった音楽家のカーマイン。妻はエレノア、甥にニコラス・ケイジがいる。8歳から8ミリ映画を撮り始め、UCLAの映画コース在学中に『グラマー西部を荒らす』('61)を発表。大学卒業後、ロジャー・コーマンの映画製作プロダクションに入り、モノクロ作品『ディメンシャ13』('63・未)を監督。フレッド・アステアのミュージカル『フィニアンの虹』('68)でメジャーデビュー。その後、『パットン大戦車軍団』('70)の脚本で注目され、『ゴッドファーザー』の世界的ヒットによりメジャー監督の仲間入りを果たす。『地獄の黙示録』('79)でカンヌ映画祭グランプリを獲得したが、膨大な製作費が彼自身のプロダクション“アメリカン・ゾーイトロープ”に打撃を与えた。さらに『ワン・フロム・ザ・ハート』('82)、『ランブルフィッシュ』('83)が興行的に失敗、苦しい立場に追い込まれる。しかし、92年に『ドラキュラ』を演出して以降、プロデューサーとしての手腕を発揮している。おもな監督作品に『コットンクラブ』('84)、『ペギー・スーの結婚』(86)、『ジャック』('96)、『レインメーカー』('97)、『スーパーノヴァ』』(00)などがある。新作はSF作品『Megalopolis』(02)。プロデュース作品にクリスティーナ・リッチ主演のドラマ『Pumpkin』(01)、ハル・ハートリー監督、サラ・ポーリー主演のファンタジー・ドラマ『No Such Thing』(01)、ブラッド・レンフロ、シャナン・ドーハティー出演のファミリー作品『Another Day』(02)、ロバート・デュヴァル監督・出演『Assassination Tango』(02)などがある。


■『ゴッドファーザー』('72)

タイトル:『ゴッドファーザー』
原題:THE GODFATHER


発売元:CIC・ビクタービデオ(株)
発売日:2001年11月22日(木)予定(セット販売のみ)
価格:¥14,200(税抜)


監督:フランシス・F・コッポラ Francis Ford Coppola
製作:アルバート・S・ラディ Albert S. Ruddy
   ロバート・エヴァンス Robert Evans
原作:マリオ・プーヅォ Mario Puzo
脚本:フランシス・F・コッポラ Francis Ford Coppola
   マリオ・プーヅォ Mario Puzo
撮影:ゴードン・ウィリス Gordon Willis
メイクアップ:ディック・スミス Dick Smith
音楽:ニーノ・ロータ Nino Rota
『ゴッドファーザー』DVDコレクション
全収録時間:12時間43分
シリーズ3部作に3時間38分の特典
ボーナスディスクを加えた全5枚組の
コレクション・セット
<キャスト>
ドン・ヴィトー・コルレオーネ:マーロン・ブランド Marlon Brando
マイケル・コルレオーネ:アル・パチーノ Al Pacino
ソニー・コルレオーネ:ジェームズ・カーン James Caan
フレドー・コルレオーネ:ジョン・カザーレ  John Cazale
コニー・コルレオーネ:タリア・シャイア Talia Shire
ケイ・アダムス:ダイアン・キートン Diane Keaton
トム・ヘイゲン:ロバート・デュヴァル Robert Duvall
ピート・クレメンザ:リチャード・カステラーノ Richard Castellano
バージル・ソロッツォ:アル・レッティエリ Al Lettieri
マクラスキー刑事:スターリング・ヘイドン Sterling Hayden


<アカデミー賞受賞>
■ 作品賞
■ 主演男優賞 マーロン・ブランド(※受賞拒否)
■ 脚色賞 フランシス・フォード・コッポラ
      マリオ・プーヅォ

<アカデミー賞ノミネート>
□ 監督賞 フランシス・フォード・コッポラ
□ 助演男優賞 ジェームズ・カーン
       アル・パチーノ
       ロバート・デュヴァル
□ 衣裳デザイン賞 アンナ・ヒル・ジョンストーン
□ 音響賞 バド・グレンズバック
      リチャード・ポートマン
     クリストファー・ニューマン
□ 編集賞 ウィリアム・H・レイノルズ
      ピーター・ズィナー
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