■アカデミー賞7部門受賞! 『アラビアのロレンス』
名匠デビッド・リーンが描き出す、アラブ人の英雄“ロレンス”の波乱の人生
 『アラビアのロレンス』という名前を聞いたことはあっても、なかなかな大作なため、見る機会を逸してしまっている人も多いのでは? このコーナーでは、そういった大作もわかりやすく解説していきます!
 砂漠をこよなく愛し、アラブ独立に燃えた実在の英国人ロレンスの波瀾に満ちた生涯を、巨匠デビット・リーン監督が類なきスケールと見事な映像で描いた伝説的傑作です。ロレンスの本名はトーマス・エドワード・ロレンス。いったい本人はどんな人物だったのでしょうか。
 ウェールズに生まれたロレンスはオックスフォード大学で考古学を学び、卒業後、アラビア半島での発掘作業に携ります。現地の人々とともに暮らすにつれ、トルコに虐げられているアラブ人に共鳴するようになり、第一次世界大戦に独立しようとついに反乱を起こしたアラブ民族を指導するように。実際彼はアラブ王子ファイサルの政治顧問及び軍連絡将校として活躍し、“アラビアのロレンス”と謳われました。しかし彼自身はその風潮をあまり好ましく思っていなかったようです。アラブの遊牧民にとっては英雄でしたが、逆に植民地支配を目論む英国政府に利用され、失意のうちにイギリスへと帰国。1935年にオートバイ事故により46歳で亡くなりました。

 本作はロレンスの苦悩と挫折の半生と砂漠での一大戦争をダイナミックに描き出した作品です。映画はロレンス自身による著作、「知恵の七柱」(Seven Pillars of Wisdom)をもとに作られています。
(c) 1962,1989 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. ALL RIGHTS RESERVED.
 ロレンス役は、当時シェイクスピア劇団で注目されていた舞台俳優ピーター・オトゥールが演じています。オトゥールは188cmの長身で、金髪、透き通るようなグリーンの瞳に加え、シェイクスピア劇で鍛えたエキセントリックに演技力で本作品に強烈な印象を与え、オスカー主演男優候補にもなりました。リーン監督は女優の出演しない本作でオトゥールを“主演女優”のように艶っぽく演出、独特な雰囲気をかもし出す作品となりました。アレック・ギネス、オマー・シャリフ、アンソニー・クインらが脇を固め、作品に奥行きを与えています。しかし、本作の見どころはなんと言っても広大なアラビアの砂漠。『アラビアのロレンス』ほど砂漠を美しく、また恐ろしく描いた作品は他には存在しないとも言われています。監督は砂漠の荒涼とした世界をかつてないほど雄大なスケールで描き、見事監督賞を受賞しました。

 本作は第35回アカデミー賞にて作品賞、監督賞、撮影賞、作曲賞、美術監督・装置賞、編集賞、録音賞と7部門を受賞しています。62年のロイヤル・プレミアの時には222分の上映時間でしたが、1ヶ月後には20分ほどカット、以後も上映効率などの理由で次々と短くなっていきます。ようやく88年にリーン監督、編集のアン・V・コーツが直接編集し直し、“完全版”として甦りました。モーリス・ジャールの音楽が壮大な画面に優雅さとスケール感を増し加えています。


■ストーリー
灼けつく大砂漠を越えて、今ロレンスが進撃する!
 1914年、第1次世界大戦が勃発し、アラビアはドイツと同盟を結んだトルコ帝国の圧政下にあった。英国はドイツ連合軍の勢力を分散させるため、稀代の天才戦略家ロレンス(ピーター・オトゥール)をアラビアに派遣した。アラブ王族の軍事顧問となったロレンスは、独自のゲリラ戦法を駆使して反乱軍を指揮し、アラブ国民から砂漠の英雄とうたわれるようになる。だが、次第に自分が軍上層部に利用されていることを知り、アラブ民族もまた、部族間の対立からロレンスを裏切っていることになる。砂漠をこよなく愛し、自らのアイデンティティをそこに求めたロレンスだったが、その白い肌は永遠に変わることはなかった…。


■この作品、ココをチェック!
雄大でエレガントな作品を生み出す巨匠デビッド・リーン監督
 「『アラビアのロレンス』を観た翌日、僕は映画監督になる決心をした」とは、スティーブン・スピルバーグ監督の弁。DVDではスピルバーグ監督が本作について熱く語る映像をみることができます。本作について熱弁をふるうスピルバーグは、もはや映画監督というよりひとりの映画ファンにしかみえません。復元版の試写を行なったとき、リーン監督の隣で各シーンの説明を受けたといいます。本作を復活させるにあたり、マーティン・スコセッシ監督も多大な貢献をしています。そうそうたる著名な映画監督も惹きつけてやまないリーン監督。その壮大なスケール感は誰にでも真似できるものではありません。若いときは俳優を勧められるほどの美男子だったそうですが、ひたすら映画監督をめざし、長い下積みを経てイギリス映画界を代表するような大映像作家となっていきました。作品数は決して多くはありませんが、オリバー・ディケンズの小説の映画化や、雄大でエレガントな格調高い作品を生み出しており、『アラビアのロレンス』もそのひとつです。
○デビッド・リーン プロフィール

 1908年3月25日、ロンドン郊外クロイドン生まれ。公認会計士だった父親の助手を務めていたが、20歳でカチンコ係として映画業界へ。以後、カメラ助手、劇映画の編集などして、42年に劇作家ノエル・カワードと共同監督で『In Which We Serve』('42・未)でデビュー。その後、『幸福の種族』('44)、『陽気な幽霊』('45)、『逢びき』('45)とカワードの作品を次々映画化。その後、『戦場にかける橋』('57)、『アラビアのロレンス』、『ドクトル・ジバゴ』('65)などでオスカー受賞の常連となる。84年に14年ぶりの作品となったE.M・フォースター原作『インドへの道』を発表。同年、サーの称号を授与。コンラッド原作の『ノストロモ』の映画化を企画していたが、91年4月16日、ロンドンにて死去。


■『アラビアのロレンス【完全版】デラックス・コレクターズ・エディション』('62)
原題:LAWRENCE OF ARABIA DELUXE COLLECTOR’S EDITION
発売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
価格:¥3,980(税抜)
仕様:SDD-12058(セル専用)
DISC TYPE:片面2層/2枚組
画面サイズ:シネマスコープ
◎チャプター付

STAFF
監督:デビッド・リーン David Lean
製作・サム・スピ-ゲル Sam Spiegel
脚本:ロバート・ボルト Robert Bolt
撮影:フレデリック・A・ヤング、B,S,C, Frederick A. Young
音楽:モーリス・ジャール Maurice Jarre
編集:アン・V・コーツ、A,C,E, Anne V. Coates
復元プロデューサー:ロバート・A・ハリス Robert A. Harris
(c) 1962,1989 COLUMBIA PICTURES
INDUSTRIES, INC.
ALL RIGHTS RESERVED.
<キャスト>
ロレンス :ピーター・オトゥール
アリ首長 :オマー・シャリフ
ファイサル王子 :アレック・ギネス
アウダ・アブ・タイ :アンソニー・クイン
ベイ司令官 :ホセ・フェラー
ドライデン :クロード・レインズ
記者ベントリー :アーサー・ケネディ


■962年第35回アカデミー賞

<アカデミー賞受賞>
作品賞
監督賞 デビッド・リーン
撮影賞 F・A・ヤング
作曲賞 モーリス・ジャール
美術監督・装置賞 ジョン・ボックス(美術)、ジョン・ストール(美術)、ダリオ・シモーニ(装置)
編集賞 アン・V・コーツ
録音賞 ジョン・コックス

<アカデミー賞ノミネート>
主演男優賞 ピーター・オトゥール
助演男優賞 オマー・シャリフ
脚色賞 ロバート・ボルト
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