■コメディならお手のもの!監督から俳優までこなす若き俊英、ベン・スティラーの魅力とは?
 両親がコメディ俳優という家庭に育ち、その影響を強く受けてショービズ界に入ったスティラー。その才能は、俳優だけでなく脚本家や監督としても発揮されており、今やハリウッドでは注目の若手映画作家の1人だ。そんな彼の魅力に迫る!

 65年11月30日、ニューヨーク州ニューヨーク生まれ。本名はベンジャミン・スティラー。父親は『サブウェイ・パニック』('74)や『ヘアスプレー』('87)などに出演の喜劇俳優ジェリー・スティラー。母親のアン・ミラーも喜劇女優。幼い頃から8ミリで映画製作に親しむ。UCLAで舞台芸術を学んだ後、85年に「House of Blue Leaves」でブロードウェイ・デビュー。舞台に立つかたわら、初めての監督作となる『ハスラー2(The Color of Money)』('86)のパロディ、『The Hustler of Money』を撮る。この短編コメディが人気TV「サタデー・ナイト・ライブ」で放映され好評を博し、番組の出演者兼アシスタント・ライターに抜擢。その後、「The Ben Stiller Show」を製作。優れたコメディの脚本が高く評価され、エミー賞を受賞した。
 俳優としても、87年のデビュー以来、『太陽の帝国』('87)、『ステラ』('90)、『ミステリー・メン』('99/日本未公開)などで活躍。さらに映画監督としても目覚しく、長編デビュー作となったウィノナ・ライダー主演『リアリティ・バイツ』('94)がジェネレーションXムービーの傑作と批評家に絶賛された。他の監督作品に、ジム・キャリー主演の『ケーブル・ガイ』('96)など。また自分の映画製作会社レッド・アワー・フィルムズを持ち、『ザ・サバーバンズ』('99/日本未公開)などを製作している。最新作は、ロバート・デ・ニーロ共演の『Meet the Parents』(2000)ほか。2001年には監督・主演作『Zoolander』が予定されている。

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■心染みるドラマからエキセントリック・コメディまで、スティラーの才能を作品で探る!
役者としても映画作家としても成功を収めてきたスティラー。ここでは彼の出演作のみならず、監督作までも徹底チェック!

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■恋と友情がおりなす、ちょっとファニーで小粋なラブ・ストーリーに出演のスティラー
 スティラーの最新作は、アカデミー賞受賞俳優エワード・ノートンの初監督作、『僕たちのアナ・バナナ』。NYを舞台に、ユーモラスなシチュエーションとシリアスなドラマが見事に合わさった小粋なロマンティック・コメディだ。内容を少しだけ紹介しよう。

 カトリックの神父、ブライアン(ノートン)とユダヤ教のラビ、ジェイク(スティラー)は宗教は違えど幼なじみで今も親友同士。そんなある日、二人にとってもう一人の幼なじみで離れ離れになっていた女性、アナ・バナナ(ジェナ・エルフマン)が16年ぶりに戻ってきた。眩しいほどに美しく成長した彼女の登場は、男たちの友情と宗教観を揺り動かすことになる…。スティラーは戒律を重んじるユダヤ教のラビ役で出演しているが、伝統と自分の想いとの間で揺れ動く心の様子をコミカルかつシリアスに演じている。
 このほか、両親と共演しているコメディ作品『The Independent』('00)や、ロバート・デ・ニーロと共演、全米初登場1位を取り現在も大ヒットを続けている『Meet the Parents』('00)などがある。『オースティン・パワーズ』シリーズのジェイ・ローチ監督による『Meet the Parents』は、スティラー扮する看護士が、週末をフィアンセとその両親と過ごすことになるのだが…というコメディ作品。デ・ニーロは元CIAのプロファイラー、顔を見ただけでスティラーが何を考えているか分かってしまう。その父親に気に入られようと孤軍奮闘するスティラーの姿が笑いを誘う。他にも、ドリュー・バリモアと共演予定の『The Duplex 』('01) が待機中。監督作として、ミラ・ジョボヴィッチ、オーウェン・ウィルソンらが出演する『Zoolander』('01)を準備中。

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■作品&コメントに見る、スティラーの映画に対する思いとは?
 マンハッタンのアッパー・ウェスト・サイドで、両親ともにコメディ俳優という恵まれた家庭に育ち、幼い頃から映像の世界に親しんできたスティラー。UCLAでは映画製作を学び、NYに戻ってから「The House of Blue Leaves」で舞台デビューする。この舞台はその年のトニー賞を独占受賞するなど、TV版も作られるほど絶賛された。スティラーももちろんTV版に出演。この舞台の演技を見たある有名監督が彼を映画にキャスティング。その監督とは、スティーブン・スピルバーグ。作品は『太陽の帝国』だった。スティラーはクリスチャン・ベール(『ベルベッド・ゴールドマイン』('97))を相手にチョコ・バーについて話す米国兵の役を演じている。「『ジョーズ』('75)を20兆回(!?)も見て育った」という映画狂のスティラーにとって、小さい役ながらもスピルバーグと一緒に仕事が出来て非常にエキサイティングだったという。
 その後も映画出演の合間をみては次々と短編の監督を始め、ケーブルテレビで30分もののコメディ番組の監督を任されるようになる。90年には映画のパロディなどで構成されたバラエティ・ショー、「The Ben Stiller Show」を制作して大評判となり、ついに92年にはFOXテレビに進出、エミー賞を獲得するに至る。そしていよいよ、ウィノナ・ライダー、イーサン・ホーク主演の『リアリティ・バイツ』で彼が熱望していた映画作品を手がけることになる。この作品、公開されるや否や多くの賞賛を得、映画監督としても俳優としても世界中に彼の才能が認められることになった。今や引く手あまたの映画作家として様々な作品に指名を受けるなど注目を集めている。

 コメディエンヌとして人気のジャニーン・ギャロファロは『リアリティ・バイツ』に出演した時のことをこう語る。「初めての映画がベンの作品だったんだけど、その時ベンに無理矢理、演技のクラスを取らされたことはまったく一生許せないわね(笑)。なぜって?アクティング・クラスなんて信用してないからよ。そんなところに行くと結局クラスメートの最悪の演技を見ることになるだけ」と言うが、これは彼女流のジョークだろう。現に彼女は『リアリティ・バイツ』で女優として監督スティラーの期待にきちんと答え、女優として新境地を切り開いた。なおかつ、彼は『ケーブルガイ』で再びジャニーンを起用、新作『The Independent』でも再び共演している。
 『僕たちのアナ・バナナ』で初監督をつとめたエドワード・ノートンは、脚本を練る際、初めからジェイク役はスティラーを想定して書き進めたという。スティラー以外に共演は考えていなかった彼はさっそくジェイク役を打診。脚本家としてエミー賞受賞経験があり、ジェネレーションXムービーの名作『リアリティ・バイツ』の監督としても知られるスティラーなら、この作品が持つシリアスな要素とコミカルな要素をうまくミックスしてくれると考えたからだ。それほどノートンはスティラーの持つセンスに惚れ込んでいた。

 スティラーは『僕たちのアナ・バナナ』の脚本を読み、出演を即決。その理由をこう語っている。「笑いだけでなく、ドラマだけでもない。軽やかに隙間を抜けていくようなノリの映画なんだ。リアルなのに可笑しいし、しゃれている。たぶん彼はちょっと目先を変えたかったんだろう。それに僕は惹かれたんだ。いったいこれをどう料理するんだろうってね」。こうして21世紀のハリウッドを担う若き2つの才能が初めて手を組むことになったのである。その結果できた本作で、ふたりは絶妙のコンビネーションを見せている。「この共演は最高だったよ。スティラーとの掛け合いシーンではほとんどを長回しで撮ったんだ。失敗できない分、難しいけれど臨場感がでるからね。監督としても俳優としても素晴らしい体験ができたよ」とノートン。結果はその言葉に集約されていると言っても過言ではない。スティラーはこれからも多くの監督、俳優達と素晴らしいコラボレーションを見せてくれるだろう。彼の今後の活躍に大いに期待したい。


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