RIDLEY SCOTT
 映像と演出にすべての情熱を注ぐリドリー・スコット監督の魅力に迫る!
 『グラディエーター』(00)、『ハンニバル』(01)など大ヒット作を連発し、ハリウッドで大成功を収めているイギリス人監督、リドリー・スコット。数多くのアカデミー賞受賞経験を持つ彼の魅力に迫ります!
 
 1937年11月30日、イギリス・サウスシールズ生まれ。弟は『トップガン』('86)、『トゥルー・ロマンス』('93)など、サスペンス&アクション映画を得意とするトニー・スコット監督。ウエスト・ハートルプール・カレッジ・オブ・アートでグラフィック・デザインや絵画を学んだ後、ロンドンのロイヤル・アカデミー・オブ・アートへ進み、舞台美術を専攻する。卒業後、奨学金を得てアメリカに留学。タイム・ライフ社に勤務し、ドキュメンタリー関連の仕事に携わる。帰国後、BBC社へ入り、演出家として活躍する。3年後BBCを退社、CM制作に携わったのをきっかけに自らCM製作会社RSAを設立。2000本以上のCMを作りベネチア映画祭やカンヌ映画祭で数々の賞に輝いた。

 映画界への進出は77年。『デュエリスト/決闘者』で監督デビューし、いきなりカンヌ映画祭新人監督賞を受賞。続く『エイリアン』('79) でもアカデミー賞視覚効果賞を受賞した。興行的にも大成功を収め、一気に有名になる。そして82年、ハリソン・フォード主演の『ブレードランナー』('82)での卓越した映像センスはカルト的人気を呼び、世界中に多くのリドリー・ファンを生み出した。89年には、マイケル・ダグラス、高倉健、松田優作が共演した『ブラック・レイン』('89)が、日本でも大きな話題となり、続く91年の『テルマ&ルイーズ』では、英米のアカデミー賞候補、ロンドン批評家協会賞の監督賞を受賞した。その後も『1492 コロンブス』('92)『白い嵐』('96)『G.I.ジェーン』('97)と意欲作を発表。

 2000年には、『グラディエーター』で第73回アカデミー賞12部門ノミネートという快挙を成し遂げ、作品賞をはじめとする5部門を受賞。また、ゴールデン・グローブ作品賞ドラマ部門ほか2部門を受賞するなど、名監督としての確固たる地位を確立した。さらに、オスカー受賞作『羊たちの沈黙』('91)の続編にあたる『ハンニバル』(01)が大きな反響を呼ぶ問題作となったことは記憶に新しい。

 私生活では2度の離婚を経験。2人の妻との間に3児の子を設ける。現在は、1番目の息子ジェイクが、音楽ビデオ・ディレクターや監督として活躍中だ。



■VIDEO&DVDでチェック!リドリー・スコットの演出力
衝撃作を次々発表!映像の斬新さに定評があるリドリー・スコットの演出を作品でチェック!
 強烈なビジュアル・イメージで観るものをスクリーンに釘付けにするリドリー・スコット監督。彼の演出手法や映像テクニックをよりディープに知るべく、過去の作品を探ってみましょう!



■『ハンニバル DVD SPECIAL BOX』(01)
 『羊たちの沈黙』の続編にあたるトマス・ハリスの同名ベストセラーを映画化。若い女性を次々と襲い、その皮をはいで殺すという“バッファロー・ビル”事件から10年。FBI特別捜査官クラリス(ジュリアン・ムーア)のもとに1通の手紙が届く。それは護送中に逃亡をはかった元精神科医のハンニバル・レクター博士(アンソニー・ホプキンス)からだった。手紙には“クラリス、いまも羊たちの悲鳴が聞こえるか…?”と記されていた。一体、博士はどこにいるのか? 一方、博士の犠牲になったメイスン(ゲイリー・オールドマン)は復讐を企て、懸賞金をかけてレクター博士を探し出すが…。前作よりグロテスクかつショッキングな展開で、観るものをクギ付けにする手腕はリドリー・スコット監督ならでは。

発売元:東宝ビデオ
DVD価格:\9,800(税抜)orレンタル



■『グラディエーター デラックス・コレクターズ・エディション』(00)
 古代ローマ帝国を舞台に、ある一人の英雄騎士の姿を描いたSFXスペクタクル・アクション巨編。神聖ローマ帝国皇帝アウレリウス(リチャード・ハリス)は、知勇ある将軍マキシマス(ラッセル・クロウ)に王位を継がせようと思っていた。しかし、これを不服とする皇帝の息子コモドゥス(ホアキン・フェニックス)の陰謀でマキシマスは妻子を殺され、プロキシモ(オリヴァー・リード)という男に奴隷として売られてしまう。元グラディエーター(剣闘士)だったプロキシモは、マキシマスをグラディエーターとして育てる。そしてある日、マキシマスはコモドゥスへの復讐を誓い、ローマへ向かう…。SFXと実写を駆使し、壮大な古代ローマ帝国をスクリーン上に蘇らせた。細部まで見事に描かれた巨大コロシアムで行われる壮絶な死闘シーンは迫力満点。2000年度のアカデミー賞で5部門を受賞。

販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
DVD価格:\3,980(税抜)orレンタル


■『G.I.ジェーン』('97)
 デミ・ムーア主演のサバイバル・アクション超大作。上院議員デヘイヴン(アン・バンクロフト)から、海軍のエリート特殊部隊SEALの訓練プログラムへの参加依頼を受けたワシントンの海軍情報部のジョーダン・オニール大尉(デミ・ムーア)。以前から、男性と平等な実戦訓練を強く望んでいたオニールは、この誘いをチャンスと思い引き受ける。しかしその特訓プログラムは、常識を超えるハードなトレーニングだった…。髪を短く刈り上げたデミ・ムーアが、鍛え上げられた肉体で次々と過酷なトレーニングをこなしていく様は圧巻。屈強な男達に勝るとも劣らない強靭な肉体を持つ女性を主人公にし、新たなヒロイン像を作り上げた。

販売元:日本ビクター
DVD価格:\4,700 (税抜)orレンタル


■『ブラック・レイン』('89)
 マイケル・ダグラス&高倉健共演のポリス・アクション。ヤクザの殺人現場に偶然居合わせたNYの刑事ニック(マイケル・ダグラス)とチャーリー(アンディ・ガルシア)。犯人である佐藤(松田優作)を逮捕し、護送のため日本にやってくるが、大阪空港でまんまと逃げられてしまう。2人は、刑事の意地とプライドをかけ、佐藤の逮捕を決意。大阪府警の協力を得て、捜査を開始する。しかし、アメリカと日本では捜査の仕方やしきたりが大きく違い、何度も警部補の松本(高倉健)と衝突する。それでもなんとか協力しながら佐藤の行方を追うが、途中で罠にはまり…。日米の文化の違いと美点をアクションを交えて見事に表現。松田優作の遺作となった。

発売元:CIC・ビクター ビデオ
DVD価格:\4,700(税抜)orレンタル


■『ディレクターズカット/ブレードランナー 最終版』('82)
  ハリソン・フォード主演のSFサスペンス。P.K.ディックの小説「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」をもとに、近未来の人間VS人造人間=レプリカントの争いを描く。2019年のL.A。人間は人造人間=レプリカントを作り、宇宙植民地の危険な業務に当たらせていた。そんな中、感情も持っている最高級レプリカント、“ネクサス”は人間に反発し脱走を企てる。“ブレードランナー”のデッカード(ハリソン・フォード)は、地球に潜入したレプリカントたちを追う。“ブレードランナー”とは彼らの捕獲・殺害を専門に行うプロフェッショナルのこと。未来都市ロスで、敏腕のブレードランナーとネクサスの戦いが始まった…。細部まで作り込まれた近未来都市の描写は、当時世界中を驚かせる最新の映像として多くのファンを生んだSFサスペンスの金字塔。

発売元:ワーナー・ホーム・ビデオ
DVD価格:\2,000(税抜)orレンタル


■『エイリアン』('79)
  異星生物の恐怖を描いたSFホラー。巨大な宇宙貨物船ノストロモ号は、未知の惑星からのSOS信号を受けその惑星に調査に向かう。そこで乗組員が見つけたのは、無人の船と船内にある無数の奇怪な卵だった。再び航海につくノストロモ号だが、未知の惑星から連れ帰った航宙士ケイン(ジョン・ハート)の体内には異星生物の幼体が産みつけられていた。ケインの腹から飛び出した異星生物エイリアンは、乗組員を次々に殺していく。恐怖に震える隊員たち。そんななか、女性隊員リプリー(シガニー・ウィーバー)はこのエイリアンと勇敢に戦うが…。宇宙船という逃げ場のない密室を舞台に、迫り来る死への恐怖を見事に表現。水や炎、特殊メイクを巧みに使用した演出により、1979年アカデミー賞視覚効果賞を受賞。シガニー・ウィーバーは本作で一躍有名になった。

発売元:20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント
DVD価格:\2,500(税抜)orレンタル


■その他のVIDEO&DVD作品
『レジェンド/光と闇の伝説』('85・監督)『誰かに見られてる』 ('87・監督/製作)『テルマ&ルイーズ』 ('91・監督)『キング・オブ・アド』 ('92・監督)『ディレクターズカット/ブレードランナー 最終版』 ('92・監督)『1492・コロンブス』 ('92・監督/製作)『ゆかいな天使(ペット)/トラブるモンキー』 ('93・製作総指揮)『明日にむかって…』 ('94・製作)『白い嵐』 ('96・監督/製作総指揮)『ザ・ハンガー』('97・TV・製作総指揮) 『ハンガー/トリロジー』 ('97・TV・製作総指揮)『ムーンライト・ドライブ』 ('98・製作)『ゲット・ア・チャンス!』 (00・製作)


■リドリー・スコットの新作は米国のソマリアでの軍事行動を描いた『ブラックホーク・ダウン』

 リドリー・スコット監督最新作は、本年度アカデミー賞監督賞ほか4部門にノミネートされた『ブラックホーク・ダウン』。内戦が激化するソマリアにPKO(平和維持活動)として派遣されたアメリカ兵たちが実際に経験した戦闘を、リドリー・スコットが見事スクリーンに再現。
 1993年、内戦が激化するソマリアの首都モガディシオ。10月3日、レンジャー部隊とデルタ・フォースのアメリカ兵士たちは、国連軍に対抗する部族の長であるモハメド・ファラ・アイディード将軍の側近の逮捕を目的とした作戦を開始した。しかし、作戦実行中に米軍ヘリ“ブラックホーク”の2機が撃墜され、状況は一変、激しい銃撃戦に発展する。大混乱をきわめた地獄絵図のような戦場で、兵士たちは戦争と勇気の本当の意味を知るようになる…。
 マーク・ボウデンの原作を読んだとき、その視点の素晴らしさに感心したというリドリー・スコット監督。「これは観客に問いかける作品であって、答えを提供する映画ではない」と語る。映画の大半は戦闘シーンで占められ、そこで起こった事実を映像化することに徹底する。飛び交うロケット弾、友を失ったものの叫び、死んでいく兵士たち。それらを細部までリアルに捉えた映像は戦争というものの本質を浮き彫りにし、最後に強い衝撃と深い感慨を残す。

 ロケはモロッコで行われた。戦闘が行われた当時の資料をできる限り収集し、モロッコにモガディシオの街を再現。空中写真や大規模な模型を活用し、細部にまで入念に製作されたセットは、完成まで4ヵ月を費やしたという。ロケ現場では平均6~8台のカメラを使用。のもと、1ショットが30~45秒の断片を撮り、それを編集してひとつの長い複雑な戦闘シーンを作り上げた。あたかも戦場に迷い込んだかのような錯覚を引き起こす、こうした演出方法はリドリー・スコット監督ならでは。これが“映画”であるという事実を忘れてしまうようなリアリティ溢れる体感映像は本作の大きな見どころと言えるだろう。

 最新作は他に、『ハンニバル』の続編『Red Dragon』(02)で製作総指揮を担当。また、実際に起こった史上最大のホテル強盗をテーマにした『Six Bullets From Now』(02)の製作を行っている。


■ここもチェック!?リドリー・スコットのあれこれ
斬新な映像でハリウッドを占拠する英国出身監督、リドリー・スコットの才能とは?
 “映像の魔術師”、“ビジュアル派の巨匠”などの称号を持つリドリー・スコット監督。独特の映像世界で英国からハリウッドに殴り込みをかけた映画監督リドリー・スコットの映像の魅力を作品とコメントでチェックしてみよう。
 彼の卓越した映像技術は、ハリウッドでも1、2を争うほど。「私は映像と撮影美術という2点に、非常にこだわりをもって演出する。美術監督出身ということもあり、映像にはどうしても力が入るね」と監督自ら語るように、照明やシャッター・スピード、セットにいたるすべてに対し、徹底したこだわりを見せる。
 映画『グラディエーター』では、通常の映画の撮影速度が1秒24コマのところ、1秒6コマで撮影し現像段階で1秒24コマに焼き直したり、また、16コマで撮影したものを32コマで現像したりと、さまざまな方法で撮影を試みたという。なぜそれほど手の込んだ作業を行うのかという問いに対し、「多くの人が、熱心にカットや場面のつなぎ方の研究をしている。それに負けずに目立つことをやろうと思うと大変なんだよ」と語る。CM製作で培った細かい撮影テクニックを駆使し、実写とCGが見事に調和した繊細かつダイナミックな映像を完成させている。
 リドリー・スコット監督の作品は、弟トニーのような娯楽性の強いものとは異なる、映像のリアルさを追究した作品が目立つ。最新作『ブラックホーク・ダウン』のプローモーションで来日した際のインタビューでも「事実だけを見せることにこだわった。ハリウッド映画にありがちな、娯楽性を加味するようことはしていない」と力強く言う。事実の映像化に徹したという本作は、ドキュメンタリー製作の経験が色濃く反映された仕上がりになっている。

 主人公を演じたジョシュ・ハートネットは「毎日撮影の直前に、表情の指示まで書いてあるストーリー・ボードを見せるんだ。それがすごく芸術的で、監督は自分なりのビジョンを常に持ったアーティストなんだと思うよ」と撮影時を振り返る。3分足らずの撮影に半日かけて取り組むなど、よりリアルな映像を撮るため、入念な演出手法を構築する。「私はものすごく綿密にプランを立てる。すると今度は制作方法を途中で変更することができなくなる。だから、面白いことに今度は表現や描写方法を進化させてゆくことをはじめたんだ」とは監督の弁。

 いつでも“仕事(=映画)”のことしか考えていないという印象のリドリー・スコット監督。インタビュー時に葉巻をくゆらせながら作品についてじっくりと語ってくれた。気難しい監督かと思わせて、その姿は“永遠の映画青年”を彷彿とさせる。ファンタジー、SFもの、戦争ドラマ、ミステリーなど、バラエティに富んだ作品を手掛けてきたが、これからどのような作品を撮るのだろうか。今後の活躍に期待しよう!



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