Morgan Freeman
 寡黙な名優モーガン・フリーマンの魅力

『N.Y.ストリート・スマート』('87・未)、『ドライビング・ミス・デイジー』('89)、『ショーシャンクの空に』('94)でトータル3度のアカデミー賞にノミネートされたモーガン・フリーマンの魅力に迫る。
 1937年6月1日テネシー州、メンフィス生まれ。カリフォルニアのコミュニティ・カレッジでパフォーミング・アーツを学び、実力派スターとしての基盤を築く。55年に入隊し、エアフォースで戦闘パイロットになることを考えたこともあったが、演技の道に踏みとどまり、サンフランシスコの劇団に所属し数々のステージで経験を積んだ。映画界の重鎮として押しも押される地位を築く以前は、PBSの子供番組『The Electric Company』のユーモラスなイージー・リーダー役でレギュラー出演。お茶の間の人気おじさんとして親しまれていた。
 1971年の『Who Says I Can't Ride a Rainbow? 』(未)が映画デビュー作となるが、その後しばらく注目に値する作品はなく、9年後、刑務所を舞台にしたドラマ『ブルベイカー』('80)が本格的な映画出演作品となった。続く81年には短編『Death of a Prophet』 (未) でマルコムXを演じている。出世作となったのは1987年『NYストリート・スマート』のピンプ役。この作品でアカデミー助演男優賞にノミネートされると共にニューヨーク批評家協会賞、ロサンゼルス批評家協会賞を受賞し、長い下積み時代から一転して映画界での成功を約束された。
 
 その後ブロードウェイの舞台ではオビー賞を3度受賞。その中のひとつ『ドライビング・ミス・デイジー』の当たり役をそのまま映画でも演じ、1989年2度目のアカデミー賞候補(主演男優)、ゴールデン・グローブ賞男優賞、ベルリン映画祭の銀熊賞を受賞。『ショーシャンクの空に』('94)でも再度ゴールデン・グローブとアカデミー主演男優賞にノミネートされた。
 モーガンは先ごろ行われた来日インタビューで「受賞することよりも何度もノミネートされることのほうが重要だ。この世界で長く続けているということのほうが、一時だけの受賞よりも意味がある」と語っている。とはいえ、ファンの間では彼のアカデミー賞受賞が強く待ち望まれていることだろう。

 私生活では2度の離婚後、1984年にコスチューム・デザイナーの現ワイフと再婚。息子二人と娘二人(一人は養女)がいる。


■DVDでチェック!モーガン・フリーマンの演技力
出演映画が次々と受賞作と賞候補作に。あたかも作品の質を高めているかのようだ


■『ベティ・サイズモア』(00)
昼メロに夢中のベティ(レニー・ゼルウィガー)は気の良いダイナーのウェイトレス。ある日ドラッグを横取りし夫が、売人チャーリー(モーガン・フリーマン)に殺される。現場に居合わせたベティは、ショックで昼メロと現実世界の区別がつかなくなり、妄想の中で彼女の婚約者だった昼メロの登場人物デビッド(グレッグ・キニア)を訪ねてカリフォルニアに向かう。そんなベティを追って売人チャーリーもまた彼女に理想の女を投影していく。ナンセンス・コメディながらもじんわりと感動が伝わってくるこの作品は、カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞。レニー・ゼルウェガーはゴールデン・グローブ賞(コメディ・ミュージカル部門)主演女優賞に輝いた
発売元ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン株式会社
販売元ソニー・ピクチャーズ エンタテイメント
DVD価格¥3,800(税抜き)


■『ディープ・インパクト』('98)
「海は立ち上がり、都市は沈む、残るは希望のみ…」地球滅亡のその日まで、人類はどう生きるのかを問い掛けるパニックSF映画の決定版。製作総指揮スティーブン・スピルバーグ、監督ミミ・レダー。1年後に未知の彗星が地球に衝突する可能性があることを公表され、これを阻止すべく彗星を核爆発させて軌道修正するプロジェクトが実行されたが、結果は失敗。衝突が刻一刻と迫る中、ついに大統領(モーガン・フリーマン)は地下シェルターに選ばれた100万人だけを移住させる計画を発表するのだった…。モーガンが映画の中で初のブラック系大統領を演じ話題となった。
発売元ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン株式会社
販売元ソニー・ピクチャーズ エンタテイメント
DVD価格¥3,800(税抜き)


■『コレクター』('97)
アレックス・クロス・シリーズの第1作目。ワシントンD.Cのクロス刑事(モーガン・フリーマン)は犯罪心理学の専門家としても知られるが、ある日彼の姪、ナオミ(ジーナ・ラベラ)が行方不明に。事件が起こったノースカロライナ州、ダーハムでは、8人もの女子大生が続けて姿を消していた。ともに知性と美貌を兼ね備えた8人の被害者たち。そのうちの2人はすでに殺害され、殺人現場には犯人の“カサノバ”というサインが残されていた。そんな中、奇跡的に犯人の魔の手を逃れて生還を成し遂げた一人の女性、ケイト(アシュレイ・ジャッド)。彼女とクロスはともに事件と犯人を解き明かしていく。いつものモーガンとは少し違ったクールで切れ者のアレックス・クロス刑事が魅力。推理サスペンスとしても上質な映画だ。モーガンはこの作品で1998年のブロックバスター・エンタテイメント賞のお気に入り俳優サスペンス部門にノミネートされた。
発売元CIC・ビクタービデオ株式会社
DVD価格¥4,700(税抜き)


■『ショーシャンクの空に』('94)
モーガン・フリーマンのアカデミー主演男優賞賞ノミネート作品第2弾。妻を殺した容疑で終身刑にされた若き銀行家アンディ(ティム・ロビンス)と刑務所内の調達屋レッドの交友を描いた感動作。原作はスティーブン・キングの「刑務所のリタ・ヘイワース」。演技もこのうえないが、モーガンの味わい深い声で語られるナレーションが、作品により力強い感動を与えている。'95年アカデミー賞主要7部門(作品賞、主演男優賞、脚色賞、撮影賞、編集賞、楽曲賞、音響賞)ノミネート。
発売元:松竹
販売元:松竹株式会社ビデオ事業部
DVD価格¥4,700(税抜き)


■『許されざる者』('92)
クリント・イーストウッド監督、主演の本格西部劇。かつて冷酷な強盗殺人者だったマニー(クリント・イーストウッド)は亡妻によってすっかり人が変わり、今では残された二人の子供とともに牧場で豚を追う生活をしている。そこへ賞金稼ぎの話が持ち込まれ、子供の将来の資金のために、昔の相棒ネッド(モーガン・フリーマン)ととも再び銃を取り、悪徳保安官(ジーン・ハックマン)がいる町へ悪人征伐に向かう。モーガンはひたすらクリント・イーストウッドのサポート役に徹し、名脇役の深味を発揮している。'92年アカデミー最優秀作品賞、監督賞、助演男優賞(ジーン・ハックマン)、編集賞受賞作品。
発売元ワーナー・ホーム・ビデオ
DVD価格¥2,000(税抜き)


■『グローリー 』('89)
南北戦争時代を舞台にした、実際に史実残されている黒人だけの部隊についてのストーリー。アメリカ合衆国初の黒人部隊の白人指揮官(マシュ―・ブロデリック)と、志願兵トリップ(デンゼル・ワシントン)、ローリンズ(モーガン・フリーマン)ら、自由を求めて戦うものたちの姿を壮大に描くエドワード・ズウィック監督の感動作。モーガン・フリーマン自身も、この作品がかつて出演した中で一番重要であると位置付けている。デンゼル・ワシントンはこの作品でアカデミー助演男優賞に輝いた。
発売・販売元ソニー・ピクチャーズ エンタテイメント
DVD価格¥3,800(税抜き)


■最新映画でチェック!
寡黙で風格ある犯罪心理捜査官アレックス・クロス
 全米ベストセラー“犯罪心理捜査官アレックス・クロス”の第2弾『スパイダー』がこの初夏に上映予定。全米では公開8週間連続トップ10入りし、7500万ドルの興行成績を上げた大ヒット作だ。モーガン・フリーマンは『コレクター』('97)に続いて4年ぶりにアレックス・クロスを演じている。

作家ジェイムズ・パターソンの“アレックス・クロス・シリーズ”6作の中でも、特に最高傑作の呼び声が高い第1作目を脚色したのが本作品『スパイダー』。<選ばれし子供たち>を誘し、完全犯罪ゲームを仕掛ける大胆不敵なサイコパスと、ワシントン市警最高の頭脳との壮絶な“知能戦”を描く本格サスペンス推理ドラマだ。
 監督のリー・タマホリは「モーガンはアレックス・クロスの行動パターンを誰よりも理解しているので、抑えた演技ができる。こちらからキャラクター作りの心配をしなくてもよかった」と語る。また「彼は、アメリカを代表する役者が持つ寡黙さと風格を兼ね備えている。物を言わなければ言わないほど観客は思い入れが出来る。スリラーでは特にそれが肝心だ」ともいう。 

 モーガンは来日インタビューの時、アレックス・クロスはとても魅力的なキャラクターだといっている。その言葉を裏付けるかのように、すでにアレックス・クロス・シリーズの第3弾の製作も決定しているという。今後のモーガン・フリーマンのライフワークとでもいうべきシリーズになっていくのか楽しみなところだ。
■モーガン来日速報やスペシャル・イベント情報満載の『スパイダー』公式サイトはこちら > http://spider.eigafan.com/
 その他『コレクター』('97)のアシュレイ・ジャッドと再共演した『ハイ・クライムズ』(02)、スティーブン・キング原作に再挑戦した『Dreamcatcher』(02)、ベン・アフレックと共演のアクション・アドベンチャー『恐怖の総和』(02)など、期待される公開予定作品が続々と控えている。 


■これもチェック。モーガンのあれこれ
舞台で磨かれたモーガンの魅力。また監督としての才能
 映画にはコンスタントに出演し続けているモーガンだが、生の舞台では1990年、NYシェークスピア・フェスティバルで、喜劇「じゃじゃ馬ならし」のぺトルーキオを演じたのが最後。しかし、あるインタビューで、いつかまた舞台に立つことがあるかもしれない語っている。映画と違って演劇は、最低6ヶ月間毎晩のステージをこなさなくてはいけない。それは役者にとってとてもハードな仕事となる。しかしながら、「リア王」はずっと演じたいと思っているし、その他にも何かエキサイティングな脚本があれば「ドライビング・ミス・デイジー」のときと同じく舞台に立ちたいと願っているとのこと。役者としての真骨頂を発揮出来る舞台の魅力は、映画とはまた違ったものなのだろう。

 また1993年には『ボッパ!』(劇場未・ビデオ)で監督デビュー。アパルトヘイト下の南アを舞台に、強制学習を拒否し英語での教育を望んで抗議行動を取る学生たちと、息子の検挙に愕然としながらも、心の中にくすぶり続けていた解放への思いを確固たるものにしていく老練巡査部長(ダニー・グローヴァー)の葛藤を描き出した。南アの言語問題を、事実に基づいて取り上げた意欲作となっている。タイトルの“ボッパ”とはズールー語で“逮捕・拘束”の意。エンタテイメントに留まらず、社会的問題をあえて取り上げて監督するモーガンの心意気が伝わってくるようだ。

 自分自身が監督した作品に主演しなかった理由は、ダニー・グローバーの方が役者として適役だったということや、監督と俳優を同時に進行するのはとても難しい作業なのでやりたくなかったとも語っている。今後、作品を監督する予定はないようだが、ぜひ新たな作品で監督としてのキャリアを築いてもらいたいものだ。


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